相手から誤解されないために、「ノンバーバル・スキル」を磨こう


「一生懸命やっているのに、やる気がないと思われてしまう」とか、「人一倍気を遣っているはずなのに、誤解されてしまう」など、自分の想いや感情が誤解されてしまうことはあるものです。

ビジネスに効く 表情のつくり方』(清水建二著、イースト・プレス)の著者によれば、それは「ノンバーバル・シグナル(表情やしぐさ、声質などの言葉以外のコミュニケーション・シグナル)が相手に正しく届いていないから。とはいえ、そんなノンバーバル・シグナルについて正しく学ぶ機会は決して多くありません。

そこで本書では、ノンバーバル・シグナルの機能とコミュニケーションのプロセスを明確にし、何が正しく伝わらない原因なのかを掘り下げ、同時に自分の想いと感情を正しく伝えられるようになるにはどうすればよいかということを科学的知見と経験則から解説していきます。(「はじめに」より)

著者は、表情分析を専門とする人物。「ファクス(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)」という、顔の動きを客観的にコード化する体系手法を用いて表情を分析し、ヒトの感情の流れや意思決定のプロセスを解き明かしているのだそうです。

そのような経験に基づいて書かれた本書のChapter 1「感情を伝えられる人、伝えられない人」のなかから、1.「ノンバーバル・スキル」の向上があなたを変える!」に注目してみたいと思います。

コミュニケーションの基本プロセス


他者に「困った」と言いたげな悲しい表情を向けたとしたら、相手は助けてくれるかもしれません。逆に悲しい表情をしている人を見たとき、私たちは自然と手を差し伸べたくなったりもします。

著者によれば、私たちが日常的に自然と行なっているそのようなコミュニケーションの内部には、「シグナル伝達」「感情誘発」「行動誘発」という3つのステップがあるのだそうです。それぞれを確認してみましょう。

シグナル伝達

「シグナル伝達」とは、自分の感情を相手に明確に伝えようとすること。たとえば眉の内側だけを引き上げてハの字眉をつくれば、「私は悲しいです」というシグナルを相手に伝えることが可能です。また口角を引き上げることで、「私は楽しいです」というシグナルを伝えることもできるでしょう。

私たちはこうして、「この動きをすれば、相手に自分の感情が伝わるはずだ」という仮定のもとでシグナル伝達を行なっているということ。この仮定がうまくいくのは、表情や身体動作が万国共通であったり、コミュニケーションをする双方の間で暗黙の了解事項(動きに意味のあるジェスチャーや、表情や動きのタイミングなど)があらかじめ定められているからだというのです。

感情誘発

「感情誘発」は、感情を伝えた相手の心に感情が呼び起こされること。たとえば悲しい表情を向けられた相手は、同じように悲しい気持ちになるものです。笑顔を向けられた相手は、同じくうれしい気持ちになるでしょう。一方、怒りの表情を向けられた相手は、同じように怒りを覚えるか、怖くなるもの。なお、ある感情がどんな感情を呼び起こすかは、状況やお互いの関係性によって変わってくるそうです。

行動誘発

「行動誘発」とは、呼び起こされた感情に沿った行動が引き起こされること。他人の悲しみの表情から悲しみの気持ちを察したなら、その人を助けてあげたくなり、うれしくなれば、その感情を呼び起こしてくれた人と一緒にいたくなるもの。怒りの気持ちが起これば、その気持ちを引き起こした原因を攻撃したくなり、恐れの気持ちを抱けば、逃げたくなるということ。

つまり私たちが感情や想いを相手に伝え、それが相手に届き、相手となんらかのコミュニケーションがとれたとき、「シグナル伝達」「感情誘発」「行動誘発」という3つのステップをたどることになるというのです。逆にいえば、自分の感情や思いが相手に伝わらない場合は、このいずれかのステップの内部で問題が生じているということになるでしょう。

「シグナル伝達」に問題が生じる場合、その原因は自分の表現力不足。そして「感情誘発」に問題が生じる場合は、「シグナル伝達」「感情誘発」それぞれに問題が生じたことが原因。あるいは相手が何らかの行動をすべきだと思っていたとしても行動に移せなかったことが原因なのだといいます。(16ページより)

マネは本物を得る事始め


相手に「感情誘発」や「行動誘発」を起こさせるためには、自らの「シグナル伝達」がわかりやすく表現され、相手に伝わる必要があるそうです。つまり、「美しい」と思っているならば、ニッコリと笑ってもいいですし、悲しいと思えば泣けばいいということ。

シグナル伝達ができなければ、その先のステップは続きません。とはいっても当然のことながら、誰しも感情表現が豊かなわけでもありません。生育環境や、仕事のストレスなども影響するわけです。しかしそんなときは、表現したい表情のマネをしてみるといいのだといいます。「楽しいから笑う」というのは普通ですが、それだけでなく、「笑うから楽しくなる」というメカニズムが私たちの内部には宿っているということ。

ある感情に関わる表情の動きをマネすると、その感情が沸き起こり、その感情に特徴的な生理反応が生じるという考え方。それは「表情フィードバック仮説」と呼ばれているもので、各種の実験によっても明らかになっているのだと著者は解説しています。

たとえば実験参加者に漫画を読んでもらい、その漫画を評価してもらうときがその好例。そのとき、歯でペンを加えながら読んでもらった人は、唇にペンをはさんで読んでもらった人にくらべ、漫画をよりおもしろいと評価する傾向にあったというのです。

理由はいたってシンプルです。つまり歯でペンをくわえると口角が引き上がるため、自然に笑っている表情になるというわけです。しかし、唇にペンを挟んでも笑顔にはなりません。そこが、大きな差につながるというのです。

私たちの身体の不思議に驚かされます。表情・体のフィードバック機能が働いてくれることによって、私たちは伝えたい感情や想いを自分の中に呼び起こすことができるのです。ゼロから感情を生み出すこともできれば、自分の中にある小さな感情の芽生えを増幅することもできます。表情筋は感情の呼び水になるのです。(25ページより)

些細なことのようですが、そこには重要な秘密が隠されているようです。(21ページより)

相手は鏡——自分が笑えば、相手も笑う


表情や体の動きで適切にシグナル伝達をすると、伝達された相手のなかにはなんらかの感情が引き起こされる、すなわち感情誘発が起きるのだそうです。そして、この感情誘発が起きる背後で起きていることを考える際に、重要なキーワードとなるのが「感情伝染」というキーワード。

感情伝染とは、感情が人から人へと広がる現象のこと。感情伝染は、「感情模倣・同調」と「表情・声・身体フィードバック」という2つのステップを経ながら、私たちが意識しないうちに自動的に起きるというのです。

「感情模倣・同調」のステップ

「感情模倣・同調」とは、他者の感情のマネをする、同期するということ。たとえば他者と同じ表情をする、他者の表情に合うような表情をすることを指すのだそうです。

他者の表情に合うような表情をするというのは少しわかりにくいかもしれません。たとえば、カンカンに怒った表情でクレームを言いに来たお客さんを見ていて、恐怖で顔が引きつってしまう。乱気流で凄く揺れる飛行機内で恐怖の表情をしている人に笑顔を向ける。悲しみで涙を流している人に笑顔でそっと手を差し伸べる。こうした例があります。感情の受け皿、ある表情に対する適切な表情の返し方といったようなものです。(26ページより)

特に表情の模倣に関しては、幸福表情、悲しみ表情、怒り表情、嫌悪表情で起きる傾向にあり、つくられた表情よりも本当の感情から生まれた表情に対して起こりやすいのだといいます。

「表情・声・身体フィードバック」のステップ

「表情・声・身体フィードバック」とは、先の「マネは本物を得る事始め」で触れたものと同じフィードバックだそうです。しかしフィードバックは、表情以外にも声や体を通じても生じることがわかっているのだといいます。小声で話されると無意識に小声で応答する、腕組みをしている人を見て、気づけば自分も腕組みをしているなどがいい例。

つまり私たちは、他者の感情や表情の変化をマネしたり同調したりしながら感情を生み出すということ。裏を返せば、私たち自身の感情や表情が相手の感情を作り上げるとも言えるわけです。(25ページより)


こうした考え方を軸としながら、以後の章では、表情のつくり方がより具体的に解説されています。写真やイラストも豊富なので、さまざまなメソッドを試してみやすいはず。人に伝えることの難しさを感じている方は、手に取ってみてはいかがでしょうか。

Photo: 印南敦史

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