スポーツ熱の高まりと、スポーツ熱のある人々と──「2017年スポーツメディア考」

日刊サイゾー

2017/12/31 14:00


 2020年の東京オリンピック・パラリンピックが着々と迫る中、2017年のスポーツメディアはどんな盛り上がりを見せたのか? 印象深かった番組や特集企画などをおさらいしたい。

■スポーツ系番組で求められ始めた「熱量のあるプレゼン能力」

今年、スポーツ系番組で最も秀逸だったと思うのが、Amazonプライム限定コンテンツ『有田と週刊プロレスと』だ。Amazonレビュー評価では、星5つが88%。各種マスコミレビューでも、いい評判を見かけることが多い。

くりぃむしちゅー有田哲平が毎回1冊の「週刊プロレス」をテーマに、語って、語って、語りまくり、プロレスから学ぶべき人生の教訓を伝授する……というプロレストークバラエティ。始まったのは昨年末のことだが、そこから今年5月までがシーズン1。2カ月半のブレークを挟んで、すぐにシーズン2がスタート。民放の各種番組がどこかぬるい企画を続けるなか、有田とこの番組スタッフの熱量の高さは実に痛快だった。

『有田と週刊プロレスと』が革新的なのは、スポーツ系番組の“核”ともいうべき、試合映像が使えない(使わない)点にある。その代わり、肝となるのが有田の話芸であり、モノマネ力であり、プレゼン能力だ。

もちろん、過去にもトーク力を生かしたスポーツ系番組はあったが、ここまで徹底して試合映像を使わないものはなかったはず。その無謀な企画を可能にしているのは、有田の異常なまでのプロレス知識であり、プロレス愛であり、そして何よりも歴史を知っていることにある。

スポーツファンにもいろいろな層があって、中には歴史には興味がない、という人も意外といる。それどころか、過去の名選手・名試合について興味がない、という現役アスリートも実に多い。だが、その競技のことを真剣に考え、認知度を高めていく上では、歴史を知ることも重要のはず。有田もまた「歴史を学んでください」と番組内で何度も口にする。とことんマニアックでありながら、どこかアカデミックな印象もあるからこそ、プロレスファン以外からも支持を集めるのではないだろうか。

同様に、マニアックな知識で競技愛を発露したのが、ボクシング中継における俳優、香川照之の存在だ。実は10年以上前から、香川の熱狂的ボクシング愛は変わっていない。だが、村田諒太が22年ぶりにミドル級世界王者になる、という快挙も手伝って、フジテレビの中継でゲスト解説を務めた香川のボクシングトークにも日の目が当たった格好だ。

SNS上での香川照之ボクシングトークへの評判は、正直なところ否定的な声も多い。だが、香川の圧倒的なボクシング知識は、今後、ボクシングファンの裾野を広げるのに大きな役目を担ってくるのではないか、と勝手に期待している。世間的には『昆虫すごいぜ!』(NHK)での怪演ぶりの方が話題だが、「2017年の香川照之」という意味では、ひとくくりに覚えておきたい。

マニアックな競技愛をこじらせた結果、その競技の伝道師となった有田哲平と香川照之。来年以降、同様の存在が、他の競技でもどんどん出てくるのではないだろうか(というか、出てきてほしい)。

■好感が持てた、テレビ東京のスポーツ熱

「熱量」という点でもうひとつ、今年のトピックスとして押さえておきたいのが、テレビ東京におけるスポーツ熱の高まりだ。

テレビ東京といえば、日本にサッカー文化を根づかせた往年の名番組『三菱ダイヤモンドサッカー』や、箱根駅伝を日本テレビよりも前に中継していた──などなど、かつてはスポーツをキラーコンテンツとしていた時代もあった放送局。あの「ドーハの悲劇」も中継したのはテレビ東京だ。

だが、サッカーや駅伝の人気が高まった結果、皮肉にもそれらの中継権は他のキー局へ。ここ最近、特に若い世代において、テレ東=スポーツ、というイメージはなかったはず。

そんなテレビ東京が今年5月末、「テレ東スポーツ祭」と題して『世界卓球2017ドイツ』と『全仏オープンテニス2017』を連日連夜放送。特に卓球は日本人選手の活躍もあって大きな盛り上がりを見せた。05年から「世界卓球」を地上波独占放送してきたテレビ東京の執念が実ったといえる。

このほかにも、夜帯のスポーツ番組『SPORTSウォッチャー』では、ビビる大木を又吉直樹と並ぶMCに据えてテコ入れを図ったり、さまぁ~ずがさまざまなスポーツに体当たりで挑戦するスポーツバラエティ『さまスポ』が今春から始まったりと、今年のテレビ東京がスポーツに対して、例年以上に予算と時間と人をかけていたのは明白。『SPORTSウォッチャー』では、日本テレビ顔負けの巨人・阿部慎之助への密着取材など、気になる企画も多かった。

もともと、バラエティでは他局以上に実験的な企画を仕掛けてくるテレビ東京。今後、スポーツものでも、他の局が思いつかないような企画が飛び出してくるかもしれない。

■DAZN・楽天の本格参入元年。スポーツメディアは、どう変わる!?

スポーツメディア史、という意味で、17年のトピックスとして外せないことがもうひとつ。ライブストリーミングサービス「DAZN(ダ・ゾーン)」の本格参入だ。

17年から10年間、2,100億円という巨額の契約でJリーグ全試合の放映権を獲得したDAZN。これまでJリーグの有料放送を担ってきたスカパー!の会員数が落ち込んだ、というニュース以上に、Jリーグ自体が1シーズン制に戻り、賞金額が大幅に増えるなど、競技のあり方そのものにも大きな影響を及ぼしている。

DAZNはJリーグ以外にも、どんどん中継コンテンツを増やしているが、ほかにも、楽天がNBA視聴サービス『Rakuten NBA Special』を、この秋からスタート。これまでNHKでのNBA中継を楽しみにしていたファンからは困惑の声も聞こえている。

考えてみれば、上述した『有田と週刊プロレスと』もAmazonプライム限定コンテンツ。17年は、「スポーツの視聴方法や楽しみ方」そのものが大きく変わった年、として後年、大きな意味を持つことになりそうだ。

その一方で、これまた上述したテレビ東京をはじめ、既存のテレビ局にとっても、“2020年”を控えている以上、スポーツはますますキラーコンテンツだ。だからこそ、従来的な、ひな壇芸人を並べてのアスリートいじり、といった手垢のついた企画よりも、熱量あふれた企画や番組作りが今後はますます求められるはず。18年、新規サービスと既存メディアの競争がより顕著になることで、純粋に面白いスポーツ系番組が増えることを期待したい。
(文=オグマナオト)

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