「彼氏氏においしいご飯を作るぞ」SNSでノロケる大人と、“いいね”できない大人の心理


 SNSで恋人や配偶者の自慢、惚気(ノロケ)を投稿する人にモヤモヤしたことはないだろうか。10代の間で、動画共有サイト「ミックスチャンネル」にキス動画を投稿することや、ひとつのTwitterアカウントを恋人同士で共有し、交際の様子をツイートする、「カップル共同アカウント」がはやっているが、たいていの場合はそうしたノロケは大人になれば収まる、一時の「風邪」のようなものだ。しかし、いい年をした大人になっても、自慢やノロケをやめない人たちがいる。

なぜ、彼、彼女たちは臆面もなく、プライベートをさらけ出すのだろうか。3カ月予約が取れない人気心理カウンセラーで、『敏感すぎるあなたが7日間で自己肯定感をあげる方法』(あさ出版)の著者、根本裕幸先生に話を聞いた。

◎根本裕幸(ねもと ひろゆき)
1972年9月6日生まれ。静岡県浜松市出身。97年より神戸メンタルサービス代表・平準司氏に師事。2000年、プロカウンセラーとしてデビュー。以来、延べ1万5,000本以上のカウンセリングをこなす。近著に『人間関係がスーッと楽になる心の地雷を踏まないコツ・踏んでしまったときのコツ』(日本実業出版社)『敏感すぎるあなたが7日間で自己肯定感をあげる方法』他、多数。『頑張らなくても愛されて幸せな女性になる方法』(初版、リベラル社)は韓国語版が発売されている。

 大人になっても恋愛濃度が薄まらないワケ


「今日は彼氏氏と一緒にお買い物デート。重たい荷物を持ってくれる彼氏氏は、やっぱり頼りになる。家に帰ったら、美味しいご飯をいっぱい作ってあげるぞ」

こんなツイートにモヤモヤしたことはないだろうか。「モテない女に彼氏ができて舞い上がっているだけ」と思う人がいたとしたら、それは大きな間違いだ。なぜなら、モテる人や既婚者の中にも、こうしたノロケをする人がいるからである。いい年をした大人が恋人や配偶者の自慢をしていることに対して、違和感を抱いている人もきっと多いはずだ。

根本先生によると、思春期の若者が恋愛至上主義的な価値観を持ち、SNSで恋人を自慢するのは、ある意味当たり前の行為だという。大人になると、仕事や将来、親の介護、趣味など、さまざまな事柄に興味・関心が分散される。しかし、思春期から20歳くらいまでは興味の幅が限定的で、その分、恋愛に大きな比重がかかってしまう。

「思春期の恋愛の濃度は、大人の3倍だと思っていいでしょう」と根本先生は話す。さらに、「承認欲求」の問題も大きく関係しているそうだ。

「思春期前の子どもは、親に承認してもらえさえすれば心が満たされるのですが、思春期以降は目の前の世界が広がるにつれて、承認欲求の対象が広がっていきます。周りの人に認めてもらいたい、自慢したいという欲求が出てくるのです。それが、SNSにキス動画やノロケを投稿し、幸せをアピールしてしまう一因だと考えられます」

しかし、大人になっても恋愛濃度が薄まらず、承認欲求がダダ漏れな人たちがいる。

「現在、社会は閉塞感で満ちています。将来に明るい希望が持てず、仕事も充実していない。そうした理由から、本来ならばほかに気が向いて薄まるはずの恋愛濃度が大人になっても薄まらず、比重を大きく置いてしまう人がいるのです。さらに、自己肯定感が育たず、思春期のような承認欲求を抱き続けている大人も増えています」

恋愛濃度が3倍のまま薄まらない、“恋愛モンスター”が跋扈(ばっこ)する背景には、社会の閉塞感や自己肯定感の問題がある。きちんと段階を踏んで大人になった人たちにとっては、恋愛モンスターの言動が痛々しいものに感じられることだろう。

根本先生の言う自己肯定感とは、「ありのままの自分を、ありのままに認める」こと。人がどう思うかといった「他人軸」で考えるのではなく、「自分軸」で考えるようになれる状態を指す。つまり、たとえ他者から承認されたとしても、それだけでは自己肯定感は育たない。そもそも、その発想自体が「他人軸」の考え方だからだ。

だからこそ、承認欲求を求める人間の業には、歯止めが利かない恐ろしさがある。

「インターネットの普及により、常に衆目にさらされるようになった現在において、他人の目に敏感になる人は増えています。ずっと承認を集めることに執着して、『いいね!』を集めようとしたりとか、自分と恋人が見栄え良く写っている写真を投稿し続けたりといった、承認欲求の泥沼にはまり込む人が増えているように見受けられます」

 「みっともない」という価値観の変化


 しかし、それだけではなく、日本で「個人化」が進んだことも一因だと根本先生は指摘する。欧米では、人前でキスやハグすることが日本ほど違和感なく受け入れられる風潮があるが、日本でもそうした価値観が徐々に浸透してきているというのだ。

「欧米のSNSでは、臆面なくノロケやリア充アピールをする人が多いと聞きます。『自分が幸せなのを発信して何が悪いの?』という考え方です。日本では、恋人のことや家庭のことを、外で話すのは恥ずかしいこと、みっともないことという暗黙の了解がありました。かつては、外で夫婦が手をつないで歩くこともタブーだった時代もあります。しかし、若い人たちの間でそうした価値観に変化の兆しが見えているのです」

「個人化」の流れが強まるのだとしたら、恋人自慢やノロケがこれからさらに増えていくのだろうか。彼、彼女たちに違和感を抱く人にとってはうっとうしい限りである。

 モヤモヤする人は、本当はノロケを投稿したい?


 では、どのようにすれば、恋人自慢やノロケを受け入れられる、もしくはスルーできるようになるのか。

根本先生によると、「本当はやりたいけど、我慢していること」を他人にされたときに、人はモヤモヤ、イライラする習性があるのだという。そういう人は、まずは「本当は自分もやりたいんだ」と自覚することが大切になる。

さらに、価値観が多様化し、それが可視化されるようになったことも押さえておかなければならない。価値観が多様化しているということは、自分の価値観と合わないものと出会う可能性が高まるということだ。しかも、SNSが普及して以降は、それがすぐに目に入ってしまう。これを解決するためには、自分の価値観を広げるしかない。

「どこかで、『みんな同じでなければいけない』という価値観が日本人の中にはあります。しかし、今それが立ち行かなくなってきている。ただし、価値観を広げることは、自分が他人と一緒の価値観を持たなければならないということではありません。自分と他人とは違うんだ、ということを受け入れることが必要だと思います」

要は、“人は人”、“自分は自分”ということなのだろう。根本先生の言う「自分軸」で生きられるようになることが、SNS時代には、なおさら求められてくるのだろう。

恋愛モンスターが暴れるSNSに嫌気がさしている人も多いが、彼、彼女たちの心理を知ることで、少しは受け入れる気持ちになれるかもしれない。さもなくば、そっとフォローを外すことをお勧めする。

宮崎智之(みやざき・ともゆき)
1982年3月生まれ、東京都出身。地域紙記者、編集プロダクションなどを経て、フリーライターに。カルチャーや男女問題などについてのコラムを執筆している。幻冬舎plus+から電子書籍『あの人は、なぜあなたをモヤモヤさせるのか 完全版』が発売中。Twitter:@miyazakid

当記事はサイゾーウーマンの提供記事です。

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