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日本の不動産バブル崩壊は、中国からやってくる

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 不動産の資産価値を評価する鑑定法は、主に3つある。

(1)収益還元法
(2)取引事例比較法
(3)原価法

(1)の収益還元法は、その不動産を運用(賃貸に出す)した場合に、どのくらいの収益が上がるか、ということから逆算して価値を決める方法。(2)は、周辺の同じような不動産がいくらで取引されているか、という取引事例から資産価値を推計する方法。(3)は、その不動産を新たにつくるとすればいくらかかるか、という原価から今の価値を判定する手法。

今の日本では、ほぼ(1)の収益還元法が主流になりつつある。これはかなり健全な状態である、と私は考える。なぜなら、その不動産を運用した現金の収支であるNOI(営業純利回り)は、長期金利プラス2%あたりが限界となる。つまり現在の史上最低水準の低金利状態にあっても、NOIが3%以下に陥るほど不動産価格は高騰しない。逆に8%や10%の格安物件もめったにお目にかかれない状態にある。市場が価格形成機能を働かせている証拠だ。

日本のなかでも東京の都心部やその周縁はもっとも金利に敏感なエリアだ。ここでは不動産の資産価値評価は見事に収益還元法に適応してしまっている。この価格形成機能は現在、地方の主要都市の都心にまで広がっている。

逆に言えば、日本の主要都市の不動産は金融商品化してしまった、ということだ。つまり、金利が史上最低水準にあるので不動産価格は高止まり状態。ところが金利が上がれば暴落する可能性が高くなる、ということになる。金利がたった1%上がっただけでも、不動産価格は軽く10%程度は下落すると考えていい。

こういう不動産の金融商品化は、先進国の主要都市では定着した観がある。この現象は金融のボーダレス化が進んだここ20年ほどで急速に進んだと思われる。

ロンドンやニューヨークの不動産価格は東京よりも高いので、この先日本の不動産価格はまだまだ上がる、という幼稚な議論がある。しかし、それは不動産の金融商品化という側面現象をまったく理解していない。先進国の不動産価格は、その国の置かれた金利の実情と見事に符合しているのだ。

●局地バブル

ただし、この収益還元法という理にかなった不動産の資産価値評価がまったく適用できない国もある。それは新興国だ。

中国では北京や上海の不動産価格は変動を繰り返しながらも上がり続けている。もはや収益還元法では説明できない。中国が実質的に支配している香港でも、住宅の価格が中堅所得者の50年から100年分の年収になっている。だったら住宅を買う意味がない。ずっと賃貸暮らしを続けたほうが、はるかに一生分の住居費が安く上がる。これはとても不健全な状態だ。

日本でも、あの平成バブルの時代は取引事例比較法でしか説明できないほど住宅の価格が高騰した。賃貸に出した場合の実質的な利回りが2%程度といった価格で新築マンションが販売され、それが売れていた。

現状、日本は一部の地域で新築マンションの価格が取引事例比較法でしか説明できないレベルにまで高騰している。だから、これはバブルだ。地域限定なので私はかねがね「局地バブル」と呼んできた。この呼称は定着しつつあるように思う。

●中国バブル崩壊のリスク

今、世界の不動産市場で起こっている現象を眺めていると、気づくことがある。それは、市場環境が成熟していないところほど、バブルは理解不能なまでに膨らんでしまう。平成バブルの時代、金融のボーダレス化は今よりもはるかに遅れていた。プラザ合意による金融緩和で余ったお金は不動産や株式への投資に流れ、合理的に説明できないレベルにまで騰貴をもたらした。

今の日本経済は、世界経済にしっかり組み込まれている。資本の移動は30年前とは比較できないほど自由だ。したがって、日本の不動産も金融商品として説明できる範囲内で資産価値を変動させている。

しかし、中国や台湾、香港といった地域は金融ボーダレスが浸透していない。シンガポールの不動産騰貴はある程度納得できるが、香港の築半世紀のアパートが平均年収の100年分という価格形成は経済的な合理性を著しく欠いている。

中国が完全に共産主義経済の国であれば、「勝手にやってください」の世界になる。しかし、今の中国大陸の本土や香港は世界経済の一部である。そこにおける経済の仕組みは基本的に資本主義に基づく自由経済がベースにある。ということは、いずれ合理的な価格形成、つまりは今の水準からの暴落が発生するはずだ。

中国大陸や香港でバブルが崩壊しても、そのこと自体が日本の不動産市場に直接影響することはない。しかし、不動産価格の急激な下落や、それがもたらす経済的混乱は世界経済を少なからず停滞させるはずだ。また、不動産という共通項において、日本の不動産市場にも心理的に暗い影を投げかけるに違いない。

日本も、あの平成バブルの時代まで不動産の資産価値評価は取引事例比較法だった。しかし、今は収益還元法が暗黙のルールになりつつある。日本の不動産市場も成熟したということだろう。

しかし、完全なバブルになっている中国と香港、台湾は取引事例比例法でNOIが1%やそれ以下の取引事例がゴロゴロしている。これが3%という健全なレベルに戻るには単純計算で価格が3分の1に暴落する必要がある。

あの平成バブルの崩壊後、日本の不動産は資産価値が3分の1以下になった物件がゴロゴロあった。今後、あの地域でそういう現象があってもなんの不思議もない。むしろ必然だろう。

その時、日本の不動産市場はどのような影響を受けるのかを我々は心配しなければいけない。
(文=榊淳司/榊マンション市場研究所主宰、住宅ジャーナリスト)

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