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Xが“X JAPAN”に改名せざるを得なかったワケ――紛らわしい同名アーティストたち

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<文/山野車輪 連載第14回>

◆有権者困惑!? 唐津市議選に立候補した二人の「青木茂」

今年(2017年)1月に行われた佐賀県唐津市議選に、漢字も読み方も同じ2人の「青木茂」という人物が出馬するという珍事があった。1人は56歳で3期目の現職、もう1人は43歳の新人で、ともに無所属で地盤の地区も重なる。また、現職は元建設会社員、新人は建設会社長と、経歴も似ている。双方の事務所に相手の支援者が誤って激励に来ることもあったという。

市選挙管理委員会は、投票用紙に「青木茂」と書かれても、どちらに投票したか分からないため、投票所の候補者名簿で、2人に限り年齢や現職と新人の別を明示し、「現職 青木 しげる 56才」「新人 あおき しげる 43才」とした。しかしこの件で注目が集まれば、他の候補者が不利になることもあり得るため、それ以外の特別な注意書きを付けなかったそうだ。

だが、「青木茂」と書かれた判別不明の票が826票あり、また、「ハゲの方」「かっこいい方」などと書かれた無効票もあった(「ハゲの方」は有効票にしても良かったのではないか)。判別不明の票は、得票数に応じた割合で配分された。幸い両者とも無事当選した。

◆アイドルの岡田奈々と言えば……

芸能界においても、同姓同名問題はある。たとえば、今の若い人たちにとって、岡田奈々という名のアイドルといえばAKB48の岡田奈々だろうが、40代後半以上の世代だと、伝説のTVドラマ「スクールウォーズ」で山下真司扮する滝沢先生の妻役の岡田奈々が思い浮かぶ。また、声優の渕上舞とHKT48のメンバーの渕上舞の2人が、同姓同名で勘違いされているというニュースが報じられたこともあるし、AKB48には横山由依横山結衣の2人が在籍しているが、どちらも読み方が「ヨコヤマユイ」のため、間違われることがあるという。

このように、世の中には同姓同名であることで、紛らわしい事態になることがままある。さて、この連載はジャパメタがテーマであるが、もちろんジャパメタにも、同じバンド名だったり、漢字は違えど読みが同じミュージシャンの例がある。今回は、いつもと少し趣向を変えて、同じ名前または似ている名前について述べたい。

◆あの超大物シンガーの黒歴史にも関わる同名バンド

バンド名には、X-RAYやサーベルタイガー、INSPIRE、SEVEN SEAS、GENOCIDEほか、同じもの、または綴りは違えど読みが同じものがかなり多い。

まずはX-RAY。湯浅晋と藤本朗が在籍していた関西のX-RAYと、RIOやBLIZARDの松川“RAN”敏也が在籍していた東京のX-RAYが存在していた。

前者は『魔天-Hard Section』(1983年)でデビューし、オリジナル・アルバムを4枚残しているが、後者の東京のX-RAYには、公式の音源がない。しかし、松川“RAN”敏也のソロアルバム『BURNING』や、早川めぐみのアルバムなどに、東京X-RAY時代の楽曲が使用されている。

余談だが、『BURNING』でヴォーカルを担当しているのは、「Mr.Crazy Tiger」名義の覆面シンガー。その正体は、B’z稲葉浩志である。超恥ずかしい芸名であり、芸能人の数ある黒歴史のなかでもかなり上位に位置付けられよう。だがそのジャパメタ臭い唱法でもって、圧倒的な歌唱力を聴かせてくれる。

◆紛らわしい同名バンドたち

次はサーベルタイガー。北海道のSABER TIGERと、横須賀SAVER TIGERの2バンドが存在する。前者は1981年に結成。オリジナル・メンバーは木下昭仁<g>のみで、在籍したことがあるメンバーは50人を超える。TVアニメ『はじめの一歩』のエンディングテーマを手がけたこともあり、現在も現役の重鎮バンドとして活躍している。

後者は、X(X JAPAN)のHIDE<g>が結成したバンドで、こちらも結成年は1981年だ。最初は「SABER TIGER」名義だったが、前述の同名バンドがいたことから、「SAVER TIGER」に改名し、また1998年に「横須賀SAVER TIGER」(HIDEが命名)として再結成した。だが同年5月にHIDEが他界し、それが遠因となって、数年後、活動休止を余儀なくされた。

次はSEVEN SEAS。筆者は00年代に活動した2バンドを確認している。そのうち片方は、「時空海賊SEVEN SEAS」に改名し、海賊に扮したコスプレによりイメージチェンジを行なった。オタク臭いメロスピ系の楽曲が多く、00年代の重要なバンドのひとつと言えよう。

◆Xが“X JAPAN”になったワケ

最後にGENOCIDE。福井と千葉の2バンドが存在する。福井のGENOCIDEは、70年代末に結成。彼らは80年代、SABBRABELLSとCROWLEYと共に「日本三大サタニック・メタル・バンド」とされていた。1988年、1stアルバムをアメリカとヨーロッパでリリースする際に「GENOCIDE nippon」名義とした。

千葉のGENOCIDEについては、正直よくわからない。2007年に、千葉GENOCIDEのベーシストが、福井のGENOCIDEに加入している。

ところで福井のGENOCIDE(GENOCIDE nippon)が、バンド名の後ろに国名をつけたのは、X JAPANよりも先だった。Xが「X JAPAN」と改名したのは、アメリカに同名のパンクバンドがあったからだ。アメリカのXは、1989年のアメリカ映画『メジャーリーグ』や、プロレスラーの大仁田厚の入場テーマ曲に使用された「恋はワイルド・シング」(The Troggsの楽曲を、彼らがカヴァー)が知られている。

ほかには、80年代のインスパイア1号~4号と、戦隊ヒーローのようなメンバー名で有名な大阪のINSPIREと、00年代に結成された女性ヴォーカルを擁した東京のINSPIRE、70年代に活躍したBLAZEと00年代のBLAZE、連載第7回で紹介した沖縄のMEDUSAと80年代に活躍し2010年に復活したMEDUSA、ROSEとROSES、同人メタルのAsriel(アズリエル)とAkira<vo>の超絶ハイトーンが売りのAZRAEL(アズリエル)、80年代のガールズ・メタル・バンドのVALKYLIE(ヴァルキリー)と00年代に活躍した富山のVALKILY(ヴァルキリー)など、探せばまだまだあるだろう。

あえて似せている例としては、BABYMETALのコピーバンド&振りコピユニットのBBAMETALが存在している。YouTubeの動画によれば平均年齢49歳(当時)とのことだが、もう50歳の大台に乗ったのではないか。四捨五入すれば100歳である。

◆HIDEとhydeはどっちがどっち?

L’Arc~en~Cielのイケメン・ヴォーカリストのhydeはかつて、本名が秀人であることからhideと名乗っていた。だが、X JAPANのHIDE(こちらも本名は秀人)がいて紛らわしいため、hydeと改名した。また、前回の同人メタルの記事で紹介した元GalneryusのYAMA-B<vo>という芸名は、彼の高校時代のニックネームで、同学年に「山口」が3人いたことから(YAMA-Bの本名は山口)、呼び名にA~Cを用いて、YAMA-Bとなったようだ。また女性ヴォーカリストのトップに立つFukiにも、クラブ・R&B系に同名の女性歌手がいたためか、ソロではFuki Commune名義になっている。これらのように、芸名には、紛らわしさを回避することが目的のものも存在する。

というわけで、ここから人名編。バンド名の場合は、ヘヴィメタルに使用されるバンド名には、厨二病的なカッコいい英単語を用いるという方向性があることから、バンド名がカブってしまうことも無理からぬことと言える。しかし人名でカブってしまうことは、珍しいと言えよう。だがジャパメタのミュージシャンには、漢字違いの同姓同名のケースがいくつか見られる。これについていくつかあげてみたい。

ジャパメタ界には、「ナカジマユウキ」名が2人いる。漢字では中島優貴と中島裕記であるが、両者ともキーボード奏者であることから、ジャパメタ界における紛らわしい名前として真っ先にあげられる。

前者の中島優貴は、ジャパメタ黎明期のバンドHeavy Metal Armyのリーダーで、後にアニメ音楽を中心とした活動を展開している。ヒーリング音楽も制作しており、その際の名義はYUHKIである。

後者の中島裕記は、90年代後半にCastle In The Airというバンドで頭角を現し、現在は、00年代以降の日本の若手ヘヴィメタル・バンドとしてトップに君臨するGalneryusのYUHKIとして活動中。この2人は、芸名もYUHKIでカブっている。

ところで、クラシック界にも、ピアニストの中島裕紀とヴァイオリニストの中島優紀(女性)がいる。後者の中島優紀は、アニメ『金色のコルダ』主人公の日野香穂子のバイオリン演奏を担当している。何なんだ、この多さは!?

◆Toshl + YOSHIKI = ?

次は「ハシモトミユキ」。『ONE NIGHT ANGEL』(1984年)でデビューしたイニシャルが「HM(へヴィメタル)」系譜の橋本ミユキと、TVアニメ『GIRLSブラボー』(2004年)のエンディングテーマでメジャー・デビューしたアニソン歌手の橋本みゆきがいる。こちらは両者とも歌手だ。

“メタル・クィーン”浜田麻里も、『イカ天』に出演しデビューしたモダンチョキチョキズの濱田マリと混合されやすい。こちらも、両者とも歌手である。濱田マリは、女優として成功を収めており、知名度が高い。浜田麻里は、他の追随を許さない最強のシンガーだが、彼女にとっての唯一のライバルは、実は濱田マリなのかもしれない(知名度的に)。

同姓同名ではないが、ソックリな名前のミュージシャンについてもあげたい。X JAPANのYOSHIKIこと林佳樹(ハヤシヨシキ)と、『イカ天』出演を契機にメジャー・デビューしたRABBITの林利樹(ハヤシトシキ)は、一字違いだ。しかも、両者ともドラマーで、メジャー・デビューも1989年で同じだ。

後者は、ToshlとYOSHIKIを合わせたような名前だ。雨宮処凛著による90年代のV系を題材にした『バンギャル ア ゴーゴー』という小説があるが、同作には、Toshl、YOSHIKI、HIDEが融合したカリスマ的存在キャラクターのTOSHIKI(トシキ)が登場する。「ZEX」(おそらくXがモデル)というバンドのドラマーという設定だ。

◆Xに宇多田ヒカルが?

Xネタでもうひとつ。1998年、宇多田ヒカルが華々しくデビューした。メジャー・デビュー前のXには、HIKARUこと宇高光(ウタカヒカル)という名前のベーシストが在籍していた。Extasy Records最初のレコード『オルガスム』のジャケットに写っている4人のうちの1人である。HIKARUは、インディーズ・メタル“無冠の帝王”と称されたMephistophelesにも在籍。同バンドには、沢井比可流と宇高光、同名が2人いたため、それぞれ”HIKARU1号””HIKARU2号”と呼ばれていた。

余談だが、かつて、ジャーマンメタルを大プッシュした和田誠というヘヴィメタル評論家がいる。一般には、イラストレーターの和田誠のほうが、圧倒的に知名度があるだろう。しかし、メロスピの源流となるムーヴメントを育て、今は嬢メタルを一押ししている和田“キャプテン”誠のほうが、筆者にとっては偉大な存在だ。

【山野車輪(やまの・しゃりん)】

昭和46(1971)年生まれ。平成17(2005)年『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)を出版し日韓関係のゆがみを鋭く指摘。『ニューヨーク・タイムス』、『タイムズ』など海外の新聞メディアでも紹介される。同シリーズは累計100万部突破。ヘビメタマニアとしても2ちゃんねるや一部メタラーの間で有名。


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