自称「半端な勘違い野郎」が雌伏2年──“元アウトローのカリスマ”瓜田純士、新作小説『熱帯夜』への思いを激白!

日刊サイゾー

2017/11/24 23:00



2年間の沈黙を破り、入魂の新作をリリース!――“元アウトローのカリスマ”こと作家の瓜田純士(37)がこのほど、2015年以来となる新刊『熱帯夜』(Kindle版)を発表した。新宿署の刑事が、国際指名手配犯の潜伏先と目されるマニラへ飛び、魑魅魍魎をかき分けながら驚愕の真相を知るクライム・フィクションだ。未来に怯え、酒に溺れ、「俺は半端な勘違い野郎」と自覚した瓜田が、再起をかけて臨んだ一作。創作の苦労や、作品の見どころを著者に聞いた。

――『熱帯夜』を拝読しましたが、「“本気の瓜田”はこんなにもすごいのか!」と舌を巻きました。これは、新宿で生まれ育った元極道の瓜田さんだからこそ書けた生々しいフィクションと言えるでしょう。歌舞伎町、フィリピン、酒、タバコ、刑事、ヤクザ、犯罪組織……そういった言葉が好きな人であれば、必ずや引き込まれ、最後までワクワクドキドキが止まらない内容だと思います。

瓜田 ありがとうございます。これ、絶対の自信作なんですよ。警察が主人公ではあるけども、警察小説じゃない。「新宿発のエンターテインメント」だと思っています。

――事件や登場人物に、モチーフはありますよね?

瓜田 あったにせよ、明らかに変えています。一個一個、好きなようにアレンジして、別人格として描いている。北野武監督の『アウトレイジ』に対して、「花菱会のモデルは山口組だろ!」と突っ込むのは野暮ってもんでしょ。それと同じです。あくまでもフィクションのエンタメとして楽しんでほしいですね。

――刑事モノにした理由は?

瓜田 ストーリーの設定上、対立構図が必要だっただけで、特に刑事にこだわりがあったわけじゃない。それよりもむしろ、犯罪者にとっての「旬」をなるべく入れることにこだわりました。そのほうが読んでいる人がわかりやすいでしょう。でもそれは物語に引き込むための手法に過ぎない。結局どこが肝なのかというと、東南アジアと日本を股にかけた、追う側と逃げる側の執念のぶつかり合い。そして、ぶつかり合った末のドラマチックなケリの付け方ですね。

――謎解き要素や、掛け合いの妙も素晴らしかった。スタイリッシュなだけじゃなく、実はサービス精神旺盛で、ユーモラスな部分もある瓜田さんの持ち味が、いいバランスで出ていたと思います。

瓜田 ユーモアってことでいうと、俺ね、西村京太郎の十津川警部シリーズが好きなんですよ。十津川警部と亀さんみたいな、どこか息抜きになる会話っていうのかな。切れ者の刑事と、おっちょこちょいな奴のコンビものを書いてみたかったんです。同職同士だとそのままになっちゃうので、本作では刑事とフリーライターを組ませることにしました。

――一昨年の秋に『國殺』が刊行されてからしばらく経った頃、「今は書きたいことが何もない。書きたいことが現れるまで待つしかない」と語っていた瓜田さん。しかし、昨年の秋頃から執筆のために自宅へ篭り始めましたよね。それが今回の『熱帯夜』だったんですか?

瓜田 そうです。江戸川乱歩賞にもともと興味あって、前回(2017年1月末日締め切り)の賞に応募してみよう、ここで一旗上げようと思い立って、去年の10月ぐらいから急ピッチで書き始めました。制作期間は、3カ月程度。物語の構想は以前からうっすらあったのですが、クライマックスを含め、書きながらどんどん軌道修正していった。慣れないパソコンを使って、締め切りから逆算した「1日何枚」というペースを死守しながら、早寝早起きで執筆しました。ちなみにこの作品には酒とタバコがよく出てくるんですが、自分は禁酒禁煙で制作に取り組んだ。俺は根が真面目なので、そういうストイックな生活にも順応できましたが、可哀想なのは急にそんな生活に巻き込まれることになった嫁ですね。去年のクリスマスは彼女のことを、近所のイトーヨーカドーにしか連れて行けなかったですから。

――執筆に取り掛かった直後、「ワープロソフトってなんだ?」とか「バックアップの取り方がわからないから、原稿を少し書き終える度にお袋のパソコンにメールで送っている」とかおっしゃっていたので、大丈夫かなぁ……と心配していたのですが、パソコンには慣れましたか?

瓜田 いや、最後までおっかなびっくりでした。実は「コピーペースト」という機能も最近知った(笑)。もっと早くに知っていれば、あんなに苦労することはなかったのに……。

――結局、江戸川乱歩賞の応募には間に合ったんですか?

瓜田 間に合いましたが、今年の受賞作は1作もありませんでした。自信作だったけど、何かが足りないんだろうと思い、そのあと何度も読み直してテコ入れをしてから、今回の出版にこぎつけました。

――Kindleからの発売となりましたが、電子書籍を選択した理由は?

瓜田 俺の作家活動を振り返ると、自叙伝的な『遺書』(太田出版)が売れて注目を集めて、世相を斬る『國殺』(竹書房)も出すことができた。でも本心を言えば、「30代のうちに作家としての名刺がわりになるようなちゃんとした小説を書きたい」という思いがかねてからあったんです。江戸川乱歩賞への応募は、そのいいきっかけになりましたね。受賞は逃したけど、せっかくなのでこれを友人の作家らの意見も聞きつつブラッシュアップしてから世に出したいと思った。でも、出版社との付き合いもないし、どこかに持って行ってどうこうするエネルギーもなくて。そんな折、Kindleを使えば、自分で書いたものを自分で売り出すことができると知ったんです。

――自力で書籍を出すことに不安はなかったですか?

瓜田 友人の作家に『熱帯夜』を見せたところ、出版社を紹介してくれるという話や、漫画の原作としてどうかとか、あるいは違う公募に出してみたらどうか、などの話が広がりかけたこともあった。だけど、俺の中で決めていたんです。よくわからない奴から「ここをこう直せ」と言われないで済む、登場人物のキャラクターを殺さないで済む方法で出したい、と。あのストーリー、あのキャラのままでいきたいという絶対的な自信がありましたから。

――編集者不在で書籍を出したかったんですか?

瓜田 格好よく聞こえちゃうかもしれないけど、そういうことです。だって、自分が間違いなく面白いと信じている作品を、頭をペコペコ下げながら売り込んだり、トンチンカンな奴に「ここをこう直せ」と言われて、泣く泣く言うことを聞いたり、さんざん文句を言われた末に「やっぱ出せない」と言われたりする悔しさを味わいながら何年も過ごすのなんて、俺には耐えられませんよ(笑)。

――瓜田さんは人一倍せっかちで、人一倍負けず嫌いですからね。

瓜田 それに、コンプライアンスにうるさい昨今、黙って待っていても、自分のような人間に出版の話なんか舞い込んでこない。一応、自分の身分をわかっているつもりなんで。さて、どうしたものかと悩みましたが、「自分が絶対に面白いと思うのなら、出版社を通す必要はなく、全部自分の責任でやればいいじゃないか。だったらKindleだな」という簡単なことに気付いて、気持ちがラクになりました。

――前作を出した直後の瓜田さんは、気性が荒くて危なっかしい印象でした。でも2年経った今は、お酒をやめたせいもあるでしょうが、だいぶ落ち着きましたね。内面の変化や成長が、『熱帯夜』の文体にも表れていたように感じます。

瓜田 あの頃は人間として落ちていた時期で、酒に溺れていましたね。自分が将来どうしていきたいのか、地に足を着けて考えることにビビっていたんですよ。理想ばかりが高くて、現実の自分を直視したくなくて、ずっと酒でごまかしていたんです。起きるトラブルはすべて自分のせいなのに、それを直視できずにヤケクソになっていた。たとえば酒の勢いでケンカになって死んだら、それはそれで構わないと思っていました。それぐらい当時は、生きることに必死じゃなかったんですよ。でも今はちゃんと生きていきたいと思う。ちゃんと生きていくためには、何事にも中途半端だった過去の自分を捨て去るしかない。そう気付かされたんです。

――何によって気付かされたんですか?

瓜田 嫁がじっくり時間をかけて教えてくれました。それまでの自分は、人生のすべてが半端だったし、そしてラッキーだった。ラッキーだったせいで、半端な気持ちのまま半端な少年が半端な青年になり、不良時代の威光で持ち上げられたりして、ある程度のことが通用しちゃっていたんです。だから、そのまま肩で風切って生きていけるんじゃないか、って勘違いしちゃった。人のことをしょっちゅう「この勘違い野郎!」と罵っていたけど、自分が一番の勘違い野郎だったという(笑)。

――(笑)。

瓜田 そうじゃないんだ。誰も彼もが石橋を叩いて一生懸命生きている。それってすごく格好いいな、自分はめちゃくちゃ格好悪いな、ってことに気付いてからは、自分を変えるために生活環境も生き方も改めました。酒とタバコをやめたのも、そういう理由からです。今は誰ともケンカなんかしたくないし、もし何かあっても嫁を守れるように数カ月前から格闘技の道場にも通い始めました。地下格闘技に出ていた時代に通っとけよ、って話ですが(笑)。

――再生の裏には、内助の功があったんですね。

瓜田 ドン底の状態で振り回したのに、振り回されながらついてきてくれた。その恩を返すためにも、半端なことはもうできないです。今回の執筆も、これをやり遂げなかったら、今後の人生、何もかもが中途半端に終わるという覚悟で臨みました。受かる受からない、売れる売れないはさておいて、絶対に最後までやり切ってやるという思いで書いた。正直、途中で何度も心が折れかかりましたよ。だって、掲載が約束されていない長文を書くのって、面倒っちゃ面倒ですもん(笑)。でもこの山を越えないと、今後も面倒から逃げるだろうし、そんな自分がどうしても許せなかったんですよ。

――ひと山越えた感想は?

瓜田 こういうことを死ぬまで続けたいですね。作家活動に限らず、練習中の格闘技や、今やっている石膏ボード運びのバイトも一緒です。誰かに何かを教わったら「ありがとうございます」と感謝しながら、ちゃんと覚えてやり遂げる。今までいろんなことを疎かにした分、何事も近道せずにコツコツと続けていきたい。今回の『熱帯夜』は生まれ変わるための挑戦の一つでしたから、すごくうれしいですよ。発売までたどり着けたのは。

――おめでとうございます。

瓜田 今回の作業を通じて、編集者を介さないメリットもデメリットもよくわかったので、今後の糧にしていきたいです。あと今回、改めて気付きましたが、やっぱ俺、書くのが好きみたいですね。何時間もかけて文章を考えたり直したりする作業が全然苦じゃない。寝るのがもったいないとすら感じちゃう。早く次の作品を書きたいですもん。

――すでに次回作の構想が?

瓜田 シリーズ化も視野に入れつつ、いろいろと構想を練っています。まぁ、楽しみにしていてください。
(取材・文=岡林敬太/撮影=おひよ)

※日刊サイゾーでは瓜田純士の最新情報をほぼ月イチペースでお届けしています。
http://www.cyzo.com/cat8/outlaw_charisma/

※瓜田純士公式ブログ
http://junshiurita.com

※瓜田純士&麗子Instagram
https://www.instagram.com/junshi.reiko/

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