等身大女性からクセのあるキャラまで…演技派・戸田恵梨香が明かす理想の女優像

ザテレビジョン

2017/11/22 19:12

週刊ザテレビジョン創刊35周年のメモリアルとして、本誌を彩ってきたテレビスターたちがテレビとの思い出を語るSPインタビュー企画を連載中。第11回目に登場するのは、クセのある役から、どこにでもいる普通の役までひょうひょうとこなす女優・戸田恵梨香。彼女が女優として“芝居”を意識し始めたきっかけや、10代そして20代とキャリアを重ねていくうちに培われた演技論などを、転機となった作品と共に振り返る。

■ 役作りの大切さを知った20歳

そんな彼女が女優を目指すようになるきっかけは意外なことに、ドラマのNGシーンを放送するバラエティー番組だったそう。

「子供のころはテレビっ子ではなかったんですよ。寝るのも早かったので、見る番組といえばアニメくらい。中学校になってドラマを見るようになり、堤幸彦監督の『Stand Up!!』('03年TBS系)は夢中になりました。この作品は高校生の青春が描かれていたのですが、彼らがすごく楽しそうで…。“テレビは楽しいモノ”というイメージが強かったです。それを決定づけたのが、ドラマのNGシーンを扱うバラエティー番組“NG大賞”。失敗しても楽しそうに笑っている役者さんを見て引かれました。そのころの私は、学校に行って友達と遊ぶ、という日々の繰り返しで…。何か違う楽しいことをしてみたかった。演技をしたい!というわけではなく、楽しいことをしたい!という気持ちが大きかったです」

中学卒業後、本格的に芸能活動をスタートし、「ギャルサー」('06年日本テレビ系)などの作品に出演。コツコツとキャリアを重ねる中、注目を集めたのが、映画「デスノート」('06年)と初主演作の「ライアーゲーム シーズン1」('07年フジ系)。

「このころは、無我夢中で役にしがみついていました。役とは何かとか“主演だからどうする?”ということを考える余裕は全くなく、ただひたすらでした。特に『ライアーゲーム』は、私に主演なんてできない、とすごく怖がっていたのを覚えています。今考えても、監督はよく私にやらせてくれたなと思います(笑)。まぁ、あの初々しい感じが役と合っていたのかもしれませんが…。この時期は、そのときの持っている全てを出して、何も考えず全身でぶつかって芝居をしていました」

女優として、気持ちに変化が生まれたのが、20歳のときに出合った「コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命ー」('08年フジ系)。

「西浦正記監督と出会い、“役作り”というものを教わりました。当時の私は、セリフを覚えて、その意味を理解して具現化する、ということに苦労していて、役作りをするというレベルまでたどり着けていませんでした。現場で、監督とこのシーンをこう変えようか、なんて話していても、監督の言葉の本質を自分の中に落とし込むことができないことが多々あって…。分かっているけど、どうしてそう変えた方がいいのか、その“理由”のようなものまでたどり着けていなかった。そんな表面しか見ていない私に対し、西浦監督は『この役はこう考えているからこのような行動になるんだよ』と根気強く伝えてくれて。私が演じていた緋山はこういう人だ!と分かったときは目からうろこでした。役のバックボーンまでを考えて理解して演じるということが大事だと。この経験から、自分のやり方というものがうっすらですが見えるようになってきて、自分という役者を俯瞰することができるようになったと思います」

20歳にして“役作り”の大切さを知り、女優としての一歩を踏み出した戸田。この年、彼女が「とっても印象深い作品」というドラマ「流星の絆」('08年TBS系)にも出演を果たした。

「東野圭吾さんの原作を宮藤官九郎さんが脚本するという夢のタッグは、本当に楽しかったですね。原作を読んで現場に入ったんですが、あまりにもキャラクターが違い過ぎて、読まなきゃ良かったと思ったほど(笑)。もう、全然違う話なんですよ。コメディーとかシリアスとかそういう既定のジャンルにとらわれない不思議なドラマで…。時間がたってから見直したんですが、今見ても面白い。スゴイですよ。いつかまた、この2人の作品に出たいです」

演じることに一生懸命だった「ライアーゲーム」の翌年に「コード・ブルー」や「流星の絆」に出演。この1年の成長は、思っている以上に大きかったよう。

「私の中で『ライアーゲーム』はかなり前の印象です。自分の演技のアプローチもガラリと変わったというのもあるんだと思いますが、遠い過去っていうか…。体感と年表ってこんなに違うんですね。不思議。今、あらためて見てみると、20歳という年は、私にとってすごく大きな転機の年だったんだな、と感じます」

■ 出合おうとしても出合えない作品への出演

等身大の女性を自分の持っているロジックで演じてきた彼女にとって、「SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~」('10年TBS系)で演じた当麻紗綾はこれまでとは違う役だったという。

「『コード・ブルー』の緋山も『流星の絆』の静奈も、知識や育ってきた環境は異なるけれど等身大で演じることができる役でした。対して当麻はこれまでとは違い、自分の全く知らない女性がそこにいて。私は芯の強い女性を表現することはどちらかといえば得意なんですが、その強さを解放した芝居をしたことがなかったんです。それは私生活でも全くなく初めての感覚で…。そういう自分の知らない感情や表現方法を勉強しなきゃいけない、とあらためて考えさせられました。ちなみに初めてこの話を聞いたときは、堤さんとずっと仕事をしたいと思っていたので、それがかなううれしさと、自分がやったことのない芝居をすることで今までの自分を覆すことができるんじゃないかと、大喜びしていました」

感情を表に出し、チャーミングだけど強さを兼ね備えた当麻は、戸田のハマり役に。ドラマは、後にスペシャルや映画化されるなど、熱狂的なマニアを生み出す作品になった。

「私たち役者以上にファンの方がドラマに詳しくって…。圧倒されちゃったこともありますね(笑)。そういう作品って、出合おうと思っても出合えない。感謝です。現場では、堤さんの演出方法が刺激的で…。連ドラの第10回のニノマエ(神木隆之介)と対決するシーンは、途中で雨が降ってきたんです。普通中断して別日に撮影するのですが、そのまま続行し『雪はやんだが雨は降る』というセリフを追加して。あたかもそれが意図的だったように演出する。その力強さと柔軟さには驚きました」

「SPEC―」以降、戸田恵梨香といえば、クセの強い役をやらせればナンバーワンと言われるほどに…。

「西浦監督に“役作り”というものを教わって以降、どこか一カ所、その役柄らしいクセをつけてキャラクターを肉付けしていく作業をやってきました。何が必要で何が足りないのか?と考えて自分を役に近づけていくのですが、そういうクセや肉付けみたいなものを全て取っ払いたい、と思って演じたのが、『書店員ミチルの身の上話』('13年NHK総合)のミチル。話し方から表情のつくり方など、すごくフラットに演じて、改めて芝居って難しいなと思いました。不安はなかったですが、全てを取っ払った芝居はどこまで成立していたのか、映像を見るまでドキドキで。ただ、これまで吸収したことが少なからず力になり、何とか乗り切れたんだと思います」

■ 30歳目前の29歳・戸田が目指す女優像とは

10代から第一線で走ってきた戸田も、来年で30歳。芝居に対する臨み方は変わっていくのだろうか?

「臨み方は年を取ったからといって変わらないです。作品ごとにアプローチを変えていくのは、今まで通りですから。あとよく、『どういう役をやりたいですか?』と聞かれるのですが、実はそういうことを考えたことはないんです。そのとき興味があるものに出演することができれば。こういう役をやりたい、こういう作品を見たい、と思うようになったら、もしかしたら自分で撮るのかもしれない。今は見えませんが(笑)」

常に前を見ている戸田が憧れるのは“引力がある女優”。

「『ドラマW この街の命に』('16年WOWOWプライム)で田中裕子さんと共演させていただいたのですが、裕子さんの演技が本当にすごくって…。違う質の芝居をしている人がたくさんいても巻き込まれず、静かに根深く立っている強さがあるんです。そして作品を拝見すると、なぜか裕子さんの作品に見えちゃうというか、どこか絶対的なモノがある。そんな引力があって人を引きつける女優に私もなれたらいいなと思います」

キャリアを重ねるたびに演技の幅を広げている戸田恵梨香。来年には、女優人生に影響を与えた「コード・ブルー―」の映画化も決まっている。

「9年前の自分と比べると、監督と一緒に演技を考えられて提案できるようになり、作品というものがきちんと見えるようになったと思います。これは4人(山下智久新垣結衣、比嘉愛未、浅利陽介)も同じで…。彼らは、きょうだいっぽいところもあるんですが、現場に立つと“戦友”や“同士”っていう感じもする、不思議な関係。一緒にいると本当に幸せで安心感があるんですよ。他の現場にはない幸福感を味わえます。こういう成長を確かめられる作品があるのはうれしいです」

Profile=とだ・えりか='88年8月17日生まれ、兵庫県出身。AB型。'05年ごろから本格的に活動。幅広い役を演じ、テレビや映画などジャンルを問わず活躍。近年は映画にも積極的に出演している。'18年は「コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-」の映画が控える

取材・文=玉置晴子(ザテレビジョン)

https://news.walkerplus.com/article/128456/

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