「わろてんか」23話。鈴木京香と鈴木保奈美対決と言えば91年「君の名は」と「東京ラブストーリー」

エキレビ!

2017/10/28 08:30

連続テレビ小説「わろてんか」(NHK 総合 月~土 朝8時~、BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~)
第4週「始末屋のごりょんさん」第23回 10月27日(金)放送より。 
脚本:吉田智子 演出: 東山充裕


23話はこんな話
大阪にやってきたしず(鈴木保奈美)が、てん(葵わかな)に白い喪服を授ける。

婚礼衣裳は喪服
23話は、チェックすべき点が盛り沢山な内容だった。表題のW 鈴木対決はあとでゆっくり書くことにして、まずは、物語としてとても重要そうな喪服をチェック。

「黒羽二重に紋付き、高いわ~」と啄子(鈴木京香)が、婚礼の準備にいそしみ、楓(岡本玲)は、結納のためにきれいな反物を選んでいる。
劇中“質素倹約”のごりょんさん(啄子)と“豪華絢爛”の奥様(しず)と言われているが、外観の印象とは逆に、しずのほうは、てんに祖母の手作りの白い喪服を託すところに、皮肉が効いている。

「貞女は二夫に見えず」
嫁にいくときには、夫と墓場まで添い遂げるという覚悟が必要という、古式ゆかしいエピソードの登場だ。
少女漫画好きな人なら、大和和紀の「はいからさんが通る」を思い出すであろう。
吉本せいをモデルに山崎豊子の書いた小説「花のれん」でも白い喪服はキーワードになっている。
婚礼衣装が喪服というのは、いい話でもあるが、結婚とは地獄の道行きだと思わせる、ここにも皮肉が効いている。

「わろてんか」のくすりと笑えるところは、こういうちょっとスパイスが効いたところだが、どこでも買える胡椒ではなくて、高級スーパーでしか売ってないスパイスな感じが良し悪しである。

これは死亡フラグか
22話で藤吉は、「男の約束いうもんは命を賭けてするもんと思ってる。もし違えたときは好きにせえ」
「命に代えても幸せにする」と鼻息荒くしていた。
てんの物語のモチーフとなっている、吉本興業創業者・吉本せいの歴史では、夫を先に亡くす。2016年11月にNHKから発表された「(わろてんかの)制作のお知らせ」にも“「笑いの都」完成を目前に亡くなった夫に代わり、”と書いてあるため、熱心な朝ドラ及びドラマ視聴者は、藤吉がドラマの途中で死ぬのであろうと想像(覚悟)している。
だからこそ藤吉が「命」「命」とゴルゴ松本のギャグのようなポップさで口にするのを見ていると、ああ、てんを幸せにできなくて死ぬんだなと苦笑いしてしまう。そして、てんは、夫の死後、栞さま(最近出てこない高橋一生)の存在に揺れながらも「二夫に見えず」という言葉に縛られていくのだなと容易に先が見えてしまうのだった。
本来、こんなことを先まわりするように書くのは野暮だが、あえて書くのは、ぜひ、裏切ってほしいからだ。

なお、先日後藤プロデューサーにインタビューした際は、藤吉の今後に関して「いろいろな展開を想像して頂ければと思います」とはぐらかされた。

W鈴木対決、因縁の91年
覚悟の喪服(婚礼衣装)を携えて“京都から討ち入り”してきたしず。
質素倹約のごりょんさんVS豪華絢爛の奥様 と言われるが、ごりょんさんは、お庭のきれいなお花と逆光で、対抗。交渉事は、光を背負ったほうが勝ちと言われる(表情が読まれにくいのと、後光のちからで)。

鈴木京香VS鈴木保奈美 
ただ座って、睨み合っているだけなのに、迫力がある。
お互いの思いを語った後、しずはてんをもっと鍛えてほしいと言い出す。
「それでも使いものにならんかったら煮るなり焼くなり河原に捨ててもらってもかましまへん」(しず)。
これで啄子にも火がついて、いままでは手加減してたが、「望みどおりボロ雑巾にして河原に捨ててやる」と言い出すことに。ああ大変。

鈴木京香は91年朝ドラ「君の名は」に主演していて、その年、鈴木保奈美は、フジテレビの月9「東京ラブストーリー」に主演している。
この2作、まったく違う運命を歩んだ。まさに朝ドラが好む光と影のように。

91年の1月にはじまった、こじれる男女の四角関係を描いた「東京ラブストーリー」は社会現象にもなるほどの人気を得た。盛りに盛り上がった最終回のあと、4月からはじまったのが、すれ違いながらも一途にひとりのひとを想う愛の形を描いた「君の名は」。朝ドラ30周年、過去の名作のリメイク、久々の1年ものと、鳴り物入りではじまった「君の名は」だったが、思ったように人気が得られずテコ入れが続いた。

拙著『みんなの朝ドラ』に書いたが、91年というと、85年に男女雇用機会均等法が施行されてから6年、女性の社会進出が進んだ頃である。専業主婦が朝ドラを朝の支度をしながら見るという形に変化が起こっていたし、夫に尽くす貞淑な妻の理想形よりも、「東京ラブストーリー」のヒロインのように、恋も仕事もとことん能動的で、選ばれるのを待たずに、すべて自分が選ぶ、奔放なくらいな生き方が注目された。


「ハンサムウーマン」なんて言葉もあるが、鈴木保奈美はまさにそういう感じで、三白眼で鷲鼻のきりっとした顔立ちで、それこそ朝ドラヒロインに好まれるタヌキ顔とは真逆である。「東京ラブストーリー」の前身・トレンディドラマでいえば、浅野ゆう子などはそっち系であろう。W浅野として人気だった浅野温子もタヌキ顔ではないが、色っぽさという女性性はふんだんに出していた。そんななか台頭してきた鈴木保奈美の三白眼と鷲鼻は異彩を放つ(90年代はふっくらしていたので男前な雰囲気はやや軽減されていたが、年齢を経るごとにきりっと締まってかっこよさがあがっていく)。
それが、男に媚びない自立した女の理想像として燦然と輝いていた。
こうして月9の時代がはじまり、朝ドラは新たな価値観を取り入れようとしてうまくいかず、じょじょに低迷をはじめていくのである。

今回、鈴木保奈美が、朝ドラのヒロインの母で登場しているのは、ほんとうに面白い。
しかも、いま、試行錯誤ののち、朝ドラが世の中のスタンダードに返り咲き、月9は低迷している。
「禍福は糾える縄の如し」ではないが、流行りは入れ代わり立ち代わりしていくのだなと思う。

ちょっと不利な姑
月9レジェンド鈴木保奈美さまが、かっこいい母を演じている一方で、やや損な役回りを引き受けてしまった感のある鈴木京香さま。
男の視線を意識するキャンペーンガールとして世に出てきた彼女。いろんな秀作にも出ているが、『セカンドバージン』(10年)にしても『真田丸』や『清須会議』などの戦国武将の妻にしても、強いし賢いのだが、男の存在に人生を左右されてしまう役わりから逃げ切れない印象がある。
今回のお姑も、なぜ、てんにいけずするかと藤吉に問われて、てんを愛するがゆえにがんばってる息子の姿に苛立つことを告白。
惚れた腫れたが嫌いで、そのわけは、夫が芸妓に貢いでいたから。

はい、皆さんご一緒に
「そんなアホな・・・」

「お父さんのようにはさせん」って、好きなてんと別れさせるほうが、同じパターンに陥ることになぜ気づかないのか。
単に、自分が得られなかった相思相愛への嫉妬なんですね。
目下、いいところがない鈴木京香さんの役割ですが、今後いいところが出てくることを期待します。
(木俣冬)

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