ミスターパーフェクト俳優・沢村一樹の心に刻まれているデビュー当時の言葉とは!?

ザテレビジョン

2017/10/25 15:29

週刊ザテレビジョン創刊35周年のメモリアルとして、本誌を彩ってきたテレビスターたちがテレビとの思い出を語るSPインタビュー企画を連載中。

第6回目には、時にルポライターとして殺人事件を、時に医者として病院の問題を解決し、さらには近年役柄の幅を広げている沢村一樹が登場。連続テレビ小説「ひよっこ」('17年NHK総合ほか)ではヒロインの父親で記憶喪失になるという難しい役を熱演し、放送中の金曜8時のドラマ「ユニバーサル広告社~あなたの人生、売り込みます!~」(テレビ東京系ほか)では、肩の力を抜いて“地元密着型の広告マン”を演じている。スマートなキャラのイケメンなのに、エロトークもこなす明るい人、というイメージが定着している沢村だが、現在の確固たる地位を築くまでには、人知れぬ苦悩があったという。

■ 同級生とは違うスイッチがあると感じた学生時代

「僕は小さいころからテレビっ子で、ドリフ(ドリフターズの「8時だョ!全員集合」'69 ~'85 年TBS系)や欽ちゃん(萩本欽一)、当時鹿児島で放送していた松竹新喜劇の藤山寛美さんの作品などをよく見ていましたね。チャップリンなどの、古い映画も夢中で見ていましたが、それに関しては同級生の誰とも話が合わなくて(笑)。それで、自分には同級生と違うスイッチがあるんだろうなっていうのは、テレビを見ながら感じていました。当時の憧れのスターはブルース・リーやショーン・コネリー…日本人だと、石立鉄男さんや西田敏行さんも大好きでした。ちょっとコミカルなお芝居をするところがね。笑いのセンスで影響を受けたのは、明らかにダウンタウンさん。僕らの世代にはありがちでしょう? 20歳で東京に出てきてからですが、映画も食事も、気に入ったものは何回でも!っていう性分なので、ダウンタウンさんの番組は必ず録画して、週に40~50回は見ていたと思います。朝出かける前にあのコントだけ見ていこう、とか。20代は、そんな“ダウンタウン漬け”のテレビ生活を送っていましたね」

俳優を目指して上京後は、雑誌モデルとしてキャリアをスタート。20代の終わりに役者に転身、大ヒットドラマの続編「続・星の金貨」('96年日本テレビ系)でキーマンとなる大役をつかむ。

「完全な悪役でしたけどね。本当にひどい…まぁ、このころの演技、ホントにひどいんですよね。できれば抹消したいくらいです(笑)。たまに再放送を見てくれた友人から、ツッコミが入ったりすることも。僕も今見ると、よく20年以上もこの世界で生きてこられたな、逆にすごいな!って思います(笑)。自分では当時、芝居に関してはむしろできてると思っていたんですよ。ちょっとバカで良かったってことですね(笑)。小さいころからずっと役者になりたいと思っていたので、やりたい仕事をできている自分がすごくうれしかったんです」

■ 本当の自分じゃない“自分”が売れても楽しくない

当時の世間からのイメージは、モデル出身の爽やか&真面目な好青年。パーフェクトなルックスが逆に個性のある役を遠ざけたのか、ヒロインの恋路を途中でかき回す役が続き、決して最終的に結ばれる、という役ではなかった。

「そう、結ばれないんですよね! 俳優業を最初は意気込んでやっていたんですけれど、ずっとそういう役が続いたので、それは僕自身に問題があったんでしょうけれど、だんだん飽きてきて…そこで生まれたのが“エロ男爵”ですよ」

'00 年代に入りしばらくすると、それまで出していなかったキャラが登場してくるのだ。

「当時のマネジャーからは、そういう話をテレビでするなって、よく言われていたんですよ。でも“沢村一樹”という人を演じている自分が7割くらいで、本音で話しているのが3割くらいだったのが息苦しくて。本当の自分じゃない自分が売れても楽しくないし、いいや、向いていないんだったら辞めようって、そのときは本当に思っていました」

だがこの登場は大成功を収め、バラエティーに引っ張りダコになった沢村は、本業の方でも役の幅をぐんと広げる。その端境期に、のべ9年にわたり演じていた「浅見光彦シリーズ」('98 ~'12年TBS系)では、番組開始当初と後半で、世間から抱かれるイメージが全く異なるという事態に。

「正直、浅見光彦役が決まってからは、大切にしなきゃいけないなってうのは思っていましたよ。素の僕とは真逆の人間なので(笑)。でも、それまで自分を演じていた経験があったから、“アナ雪”のお姉ちゃん(エルサ)が、♪レリゴーレリゴーって歌うじゃないですか。ああいう気分でしたね! ただあまりにもいろんな扉を開き過ぎて、何だかもう、閉められない状態にまでなってしまいましたが(笑)」

■ コントでの当たり役が役者業での幅を広げていく

開いた扉は沢村に、伝説のコント番組「サラリーマンNEO」('06 ~'11年NHK総合)でのセクスィー部長・色香恋次郎という前代未聞の“当たり役”まで授ける。

「浅見光彦シリーズとセクスィー部長が同時でしたからね。全然違う、対照的な役だったので、僕の中ではむしろそのスイッチの切り替えをすごく楽しめる時期でしたね」

セクスィー部長は沢村の代名詞になり、ファン層も拡大。それからの彼はいわば、向かうところ敵なし。主演作も増え、病院の改革に静かに燃える男・相良浩介を演じた「DOCTORS―」シリーズ('11年ほかテレビ朝日系)は現在3シーズンを数える人気シリーズに成長した。

「これは、記者会見で『エロトークを完全に封印します』と宣言した初めての作品じゃないかな。ま、結局現場で少ししてましたけどね(笑)。このシリーズは僕の中ではまだ終わっていなくて、またやりたいんですよねぇ。『白衣が似合う男ランキング』の1位を取りたい! 『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)で2位だったのが悔しくて(笑)。それに、これは脚本の福田靖さんの腕なんですが、病院を良くするという目的のために手段を選ばず、意地悪なことも平気でできる相良という男がカッコ良くてね。全然成長しない敵役の卓ちゃん(高嶋政伸)とのコンビも楽しいんですよね」

また'15 年には「偽装の夫婦」(日本テレビ系)で母親を安心させるために天海祐希演じるヒロインと偽装結婚をする同性愛者の男性を演じ、各方面で話題になった。

「コメディーなんで、コミカルに演じようとはしていたんですが、同性愛者の方々を応援する役回りだというのも意識して、心して演じていました。後にゲイの方々とお話する機会があったのですが『全然できてなかった』ってツッコまれちゃいましたよ(苦笑)。でもまぁ、このドラマを楽しく見ていてはくれたみたいだったので、役者としてはそれが一番良かったかなと、今では思っています」

■ 名脚本家・岡田惠和との栄誉あるご縁が生まれる

そして記憶に新しい、朝ドラ「ひよっこ」(NHK総合ほか)での実(みのる)父ちゃん役。放送中から周囲の反響の大きさに、彼自身も驚かされたという。

「実が失踪したら日本全国どこへ行っても『あ、こんな所にいた! 早く帰ってあげて』って(笑)。もちろん、他の役の方々も『見てるわよ』って声は掛けられたとは思うのですが、実は『こんな所で何やってるの!』って、気持ち良くツッコミやすい役だったんでしょうね。記憶もはっきり戻らないまま放送が終わっちゃったから、今でも『記憶戻った?』と聞かれますしね。そんなに出番は多くないんですけどね。でも貴重な体験ができて。そういう意味ではすごくありがたい役を脚本家の岡田(惠和)さんにいただいたなと思っています」

家族のために出稼ぎに出るも、仕送り金をひったくられたショックで記憶喪失になってしまった実。

「記憶をなくしても人格は変わらないと思っていたので、そこだけは大事にしようと思って演じていました。周囲にいる人のことを誰も知らないって、すごく不安なことだと思うんですよね。足が一歩、前に出ないというか、怖くて何もできなくなるんじゃないかと考えていました」

家族思いの父ちゃんの受けたショックを体現する繊細な演技が、大きな反響を呼んだのだ。そして岡田がまた脚本を手掛ける「ユニバーサル広告社-」への連続出演が決まる。「沢村さんの演技が大好き」と語る岡田が手掛ける作品には、和久井映見と共に常連的存在になってきた。

「岡田さんは、僕がデビューした年に菅野美穂さんが主演されていた『イグアナの娘』('96年テレビ朝日系)も書いていらして。当時僕は視聴者として大ハマりして毎回欠かさず見ていた身なので、今の状況は本当にありがたいし、こんな栄誉はないな、と感謝です。この作品は、ドキドキハラハラ、というより、金曜の夜8時にボーッとおつまみ食べて晩酌でもしながら、ゆったりと見てもらいたいような番組ですね。キャストも明るいメンバーばかりで楽しいです。和久井さんに下ネタは…たま~に、恐る恐る、嫌われない程度の軽い球を投げてみるんですよ。先方は絶対受け取りはしませんよ、でも無視もしません。一応、ポンポーンと転がっていくボールを見守ってくださっている感じでしょうか(笑)。そこに(共演の)片瀬(那奈)さんが走ってきてそのボールをぱって拾って投げ返してくる(笑)」

そう、今となっては、作品ごとに「今回の現場ではエロトークをするのか? しないのか?」も議題に上る、希有な俳優となった。

「でもまぁ、今はだいぶ減りましたよ。50歳にもなって下ネタトークばかりするのって、さすがに大人げないかなと。だから、今撮影中の『ユニバーサルー』の撮影現場では、特にしていないですよ(笑)」

ちゃめっ気たっぷりに語るあたり、まだまだソッチも期待ができそうだ。最後に、ここまで俳優として成長した彼を支えた先輩の言葉を尋ねた。

「『続・星の金貨』の監督の一人、五木田亮一さん――もう亡くなられたのですが――から言われたんです。弁護士とか医者とか賢い役をやるときに『君はぁー(ハァ)、今ここでぇ~(ハァ)』っていう、息を抜く芝居。『あれだけは絶対にするな!』って。ちょっとそうなりかけているからって。それがすごく役に立っていますね(笑)。デビューの年に言われたその言葉を、ずっと頭に刻んできました。逆に言うと、その1個だけかもしれないですね。それは大事にしています。それをあのときに聞いておくことができて、本当に良かったと思うんです」

https://news.walkerplus.com/article/125605/

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