「やすらぎの郷」最終回 老人たちドッタンバッタン大騒ぎ 壮大なドッキリで心を折られた菊村のTV論炸裂

エキレビ!

2017/9/30 10:00

最終回直前回で、「やれそう」感をビンビンに放つ若い娘の前で泥酔し、愚痴る、踊る、ゲロを吐くと、散々な醜態をさらした菊村栄(石坂浩二)だったが、ハッと目を覚ました最終回、とんでもない事実が発覚する。

なんと昨晩、菊村はお漏らしをして、アザミ(清野菜名)に下の世話までしてもらったのだという。……おじいちゃん! やれるとかやれないとかじゃなくて、もはや介護だよ。

衝撃的過ぎるはじまり方をした『やすらぎの郷』(テレビ朝日・月~金曜12:30~)最終回。


心の折れた菊村、精一杯のテレビ論をぶつ
「夕べはすまなかった……醜態をさらした」

と、精一杯取り繕う菊村だったが、お漏らしまで見られたんじゃあ、男として、そして脚本家の先生としての尊厳をたもつのは不可能だ。

それでも、昨夜の惨状などなかったかのように、菊村が手直しした脚本を絶賛するアザミ。なんといういい娘なんだ! ……と思いきや、菊村の心をさらにぺっしゃんこにする告白が。

菊村が丁寧に読み込んでアドバイスをしてあげた上に、おそらく下心全開で手直しまでしてあげた脚本は、実はアザミが書いたものではなく、大学のシナリオを専攻している彼氏が書いたものなのだという。

ええーっ! 彼氏ッ!

尊敬する菊村に、何とか自分の脚本を読んで欲しかった彼氏(神木隆之介)にアザミが、菊村がかつて自分の祖母と知り合いだったということも知った上で、「いきなり行ったって話すのもムリだから、多少コネのある女の私が」と提案したらしい。

「女の私が」という、完全に「女」を意識した発言がエグイ。

これまで、唐突に抱きついてきたり、混浴風呂に一緒に入りましょう的な、いかにも「やれそう」なアプローチをしてきたのって、全部、脚本を読んでもらうためのウソだったの!?

「やれない」までも、ザ・理想の娘、ザ・理想の孫的な行動を繰り返すアザミに対してホッコリとした感情を抱いていた視聴者に、最後の最後で思いっきり水をぶっかけてきましたね。

「ボキッとどこかで音がした気がした。たぶん頸椎か脊椎か腰椎か、心の中で折れた音だと思う」

そうだろう、そうだろう。こんなことならウソでもいいから、最後まで騙して欲しかった!

アザミのことを完全にエロ目線で見ていた菊村がすっかり目を覚まし、スッと賢者モードに突入。若い脚本家志望のふたりに、テレビ論、脚本論を語り出した。

「あの樹が見事だからって根本から伐って自分の庭に移そうとする、でも樹は育たないさ、根がないからね」

「樹は根があってはじめて立つのさ、でも根は見えない。だから根のことを忘れてしまう。忘れて枝ぶりや、葉っぱや花や実や、そういうものばかりを大事にしてしまう。今のドラマの悪いところはそこだよ」

菊村からアザミへのアドバイス。脚本を書く前に各登場人物の詳細な履歴書を作る、だとか「子宮で笑わせ睾丸で笑わせろ」も、倉本聰自身が何かにつけ語っていた脚本論だ。

『やすらぎの郷』は当初から、昨今のテレビ業界に対するきついメッセージがちょいちょいぶっ込まれていたが、すべて倉本聰から若いテレビマンたちへの贈るメッセージだったのだろう。

思えば『やすらぎの郷』において、老人たちは必要以上に生々しく描かれているのに対し、20代くらいの若者は、ちょっと人間味を感じないというか、老人には理解しがたい宇宙人のような描かれ方をしてきた。

老人に対して物わかりがよすぎて、自分のレイプの話題で盛り上がられた時すら笑顔で受け流していたハッピーちゃん(松岡茉優)、52歳のおっさんと不倫した挙げ句、1500万円くれとのたまう菊村の孫・梢(山本舞香)、そして、「尊敬している」という菊村を壮大なドッキリにかけてきたアザミたちカップルだ。

もうアンタら若者の考えてることは分からん、でも今後のテレビのことは頼んだぞ。……ということだろう。

最後の最後に気づいてしまった老人の孤独
さて、アザミに対して「あわよくば……」的な下心を抱いていたのに、それがすべてドッキリだと知って、すっかり心を折られてしまった菊村は、ふたりを東京に帰し、ひとり宿に残ってマッサージ師を呼ぶ。マッサージ師を演じるのは笑福亭鶴瓶!

そういえば『やすらぎの郷』序盤のオープニングのナレーションは、特にクレジットはされていなかったけど、明らかに鶴瓶の声だった。最終回で一周回って最初に戻ってきた形だ。

鶴瓶にマッサージされながら菊村は今回の騒動を振り返り、マヌケ極まりないアザミとのいきさつを妻の律子(風吹ジュン)に話してやりたいと思うのだが、律子は既に死んでおり、誰も話す相手はいないのだということに改めて気づいてしまう。

律子を亡くし、すぐに「やすらぎの郷」に入居して、古い仲間である入居者たちとドッタンバッタン大騒ぎをしてきたため、これまで孤独を感じるヒマもなかったのだろう。

ひととき、若い娘にうつつを抜かして、ある意味うっとうしい老人たち……「やすらぎの郷」から逃れて福島まで来てはみたものの、それはすべて幻だった。

……で、賢者モードに入って改めて冷静になって、ものすごく孤独な自分の境遇に気づいてしまい、自分と同じように孤独を抱えている老人たちが待つ「やすらぎの郷」に早く帰りたいと思うのだった。

ラスト10分は中島みゆきの「慕情」に乗せて「これで菊村が死んじゃうんじゃないか!?」と思うような、走馬燈的ダイジェスト映像が続いていたが、濃厚すぎる老人たちとのくだらない騒動の数々が、たまらなく愛おしく感じられた。

『やすらぎの郷2018』もやって欲しい!
正直、シニア向けドラマ枠と聞いて、最初はゆるーい年寄り向けドラマがはじまるんじゃないかと思っていたのだが、フタを開けてみれば倉本聰がやりたい放題で、他のどんなドラマよりもとがりまくっている上に、重厚なドラマが描かれており、最終回ではすっかり圧倒されてしまった。

シニア向けの帯ドラマという『やすらぎの郷』の存在自体が、若者向けになりすぎている昨今のテレビ業界への、倉本聰からの提言だったわけだが、最終回でガッツリぶっ込んできたのもテレビ業界への憂いだった。

確かに、これだけのドラマを見せられると、最近のドラマのスタンダードとなってしまっている全10話というは短すぎるなと思わざるを得ない。

各登場人物を丁寧に描いて、本筋以外の余談的エピソードを盛り込みつつ、重厚なドラマを描こうとすると、半年間の帯ドラマとまではいかなくても、せめて1時間ドラマ×24回くらい欲しいところだ。

そんなことも含めて、月~金で半年間続く「帯ドラマ劇場」という枠を成立させた『やすらぎの郷』は、倉本聰のもくろみ大当たりといえるだろう。

……いや、これで終わりじゃなくて、第2シーズン……というのは色々な意味で難しそうだけど、せめて『北の国から』のように『やすらぎの郷2018』みたいな感じで、年1回くらいスペシャルドラマをやってもらいたいところ。あの愛おしい老人たちとまた会いたい! 関係者が全員死ぬまで続けて欲しい!

そして、倉本聰の作りあげた「帯ドラマ劇場」枠の第2作目となるのが『トットちゃん!』だ。

『やすらぎの郷』で、菊村の心を翻弄し、視聴者のハートもガッチリつかんでしまった清野菜名ちゃんが松下奈緒とダブル主演ということだけでも成功は約束されたようなもの。

NHKの朝ドラとも、かつてフジテレビやTBSで放送されていた昼ドラとも違う、「シニア向けの昼ドラマ」というジャンルを成立させたこの枠で、どんなドラマを見せてくれるのか!?

黒柳徹子母子の人生を描く、ある意味NHKの朝ドラっぽいテーマではあるので、そこからどう差別化してくるのかも気になる。

倉本聰の後を継ぐ脚本家はかなりのプレッシャーだとは思うが、朝ドラの『ふたりっ子』『オードリー』、フジテレビの昼ドラ『鈴子の恋 ミヤコ蝶々女の一代記』など、数々の帯ドラマを手がけてきた大石静なので、安心して見られることだろう。

……『オードリー』かぁ……ちょっと心配だ!?
(イラストと文/北村ヂン)

『やすらぎの郷』動画は下記サイトで配信中
・テレ朝動画
・Amazonビデオ
・やすらぎの郷 DVD-BOX I

『やすらぎの郷』キャスト、スタッフ、主題歌
<キャスト>
石坂浩二
浅丘ルリ子 有馬稲子 加賀まりこ 草刈民代 五月みどり 常盤貴子
名高達男 野際陽子 藤 竜也 風吹ジュン 松岡茉優 ミッキー・カーチス 八千草薫 山本 圭(五十音順)

<スタッフ>
作:倉本 聰 音楽:島 健
主題歌:『慕情』中島みゆき(株式会社ヤマハミュージックコミュニケーションズ)
演出:藤田明二 阿部雄一 池添 博 唐木希浩
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日) 服部宣之(テレビ朝日) 河角直樹(国際放映)
制作協力:国際放映 制作著作:テレビ朝日

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