正社員への道を絶たれ、家でも妻の聖子(緒川たまき)と娘のななみ(鈴木梨央)から見下される武は、法律上死亡したとみなされ「失踪宣告」を受けられる7年間の行方不明(=“完全失踪”)を目指して逃亡することに。そして武は、日本各地の人々との出会いと別れを繰り返していく。
そんな本作でNHKドラマ初主演を果たした原田泰造にインタビューし、撮影秘話や今後の見どころを聞いた。
■ 第5話には“怪しい”ゲストが…
──あらためて、オファーを受けた時の感想を教えてください。
「主人公が逃げ続ける話です」っていうのを聞いて、素直に「面白そう!」と思いましたね。すごく楽しそうだなと。
──“完全失踪”のことは、元々ご存じでしたか?
この作品で初めて知りました。そんなものがあるのかと、驚きましたね。でも、残された方のことを考えると、確かに(制度として)必要だなと思います。いなくなってしまった人を、ずっとそのままにしておくわけにいかないですから。その期限が、7年なんですね。
──10月1日(日)に放送される第5話では、大阪へたどり着いた武が、図らずも詐欺行為に関わってしまいます。このエピソードについて、どのような印象を持ちましたか?
まず、犯罪の手口がリアルだなと思いましたね。武はギリギリの生活の中で、犯罪と隣り合わせになるんです。その時に、「ここを越えたらいけない」っていう、デッドラインを見てしまうというか…面白いですよ!(笑)
それから、(詐欺集団のメンバー役で)ゲスト出演された役者さんたちが、かなり“怪しい”んです(笑)。岩松了さんに、村上淳さん。撮影現場にいる佇まいから異様なオーラが出ていて、一緒にいたくなかったですね!(笑) それも役作りなんだと思うと、すごいですよね。
■ 共演者の方と距離を詰められないんです
──本作は逃亡劇である一方で、武が日本各地を回る「さすらいの旅」でもあります。毎回登場するゲストの方とは、どのように接していたのですか?
ゲストの方たちとは、ほとんど距離を詰められませんでした。今回が特別というわけではなくて、人見知りだからいつものことなんですけど(笑)。
──それは夫婦役の方であってもですか?
そうですね。恥ずかしいんですよね(笑)。
今回も、(鈴木)梨央ちゃんが緒川(たまき)さんに「(原田は)あんまり喋らないね」って言ってました(笑)。申し訳ないなって、思うんですけどね。
──そんな梨央ちゃんは、原田さんとまた共演したいと仰っていましたよ!
そうなんですか? そう言えば、梨央ちゃんは本当に演技がうまいんです。特に、「無視」の演技。お父さん役として、芝居中に傷ついちゃうんだよね。超リアルで、勉強になりました!
──緒川さんとの共演は、いかがでしたか?
緒川さんはチャーミングな方なので、旦那につらく当たる聖子を演じるのは、相当切り替えが必要だったと思います。だから大変だったんだろうなと思いますね。
■ 過去には失踪したいと思ったことも…
──原田さんご自身は武と似ていますか?
似ていますね。今回、武はあまり役を作り込まずに演じていました。
──では、失踪したいなと思うこともありますか?
全くありません!(笑) 昔、借金を作って奥さんにバレた時には、そのたびに失踪したいと思っていましたけど。
借金しているのを黙っている状態で、家族でハワイに行ったことがあって。いい雰囲気の時に「今だ!」と思って奥さんに打ち明けたら、すごい怒られました(笑)。それで本気で土下座したんですけど、子どもが僕の上に乗ってきて(笑)。
当時“お馬さんごっこ”がブームだったから、子どもが勘違いしたんだよね。それでちょっと和んで、「よかったぁ」って思いました! 今はもう、借金なんてしないですけどね。
■ 自身も引っ越しが多かった
──ご自身も日本各地を転々としてこられたのですよね?
そうです。引っ越し続きでしたね。
──では、新しい土地に慣れなければいけないという面では、武の境遇とも重なるのでしょうか?
そうかもしれないですね。でも僕の場合は、そのたびにどんどん人見知りになっていったけどね。殻に閉じこもっていったのかな(笑)。
■ クランクアップを迎えて
──ところで、無事クランクアップを迎えたそうですが、“逃げ切った感”はありますか?
そうですね! クランクアップして、“逃げ切った感”そのままにサウナに行って、汗を流してきました。
──全編の撮影を通して、一番印象に残っていることは何ですか?
第2話のゲストだった、前田吟さんとの共演です。「寅さん」のことを聞くと、いろんな話をしてくれました。このドラマも「さすらいの旅」なので、自分でも気付かないうちに、どこかで意識していたのかもしれないです。
──では、逆に“意識していた”作品はありますか?
岡本健一さん主演のドラマ「サーティーン・ボーイ 僕は札束中学生」(1985年、TBS系)です。主人公の中学生が大金を持って逃走するドラマなんですけど、「全力失踪」を撮影している時に、ずっと頭の片隅にありました。懐かしいな。
──最後に、今後の見どころと、視聴者・読者へのメッセージをお願いします。
第5話は特に、武が家族と“逃げながら向き合う”回なんです。これまでのストーリーのテイストとちょっと違うので、見応えあると思いますね。それから、“怪しい”ゲストにもぜひ注目を!(笑)
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