斉藤由貴は、なぜ“魔性のオンナ”なのか? 結婚・仕事・父との関係に見る“条件”


羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の芸能人>
「父の一言がきっかけでした」斉藤由貴
「週刊SPA!」(扶桑社)5月2・9日合併号

そういえば、最近“魔性のオンナ”といわれる有名人がいない。“魔性のオンナ”とは、ただ単に、恋多き人のことではない。女性側は、世間を騒がせても、仕事を前向きに、旺盛にこなすが、男性側は没落したり、場合によっては命を落とす。それでも寄って来る男性が後を絶たない女性を指す。

婚活で知り合った男性から金銭の援助を受けた後、彼らの殺害に及んだとされる木嶋佳苗死刑囚。彼女は、美人でもスリムでもないのに、たくさんの男性から金を集めたことから、“魔性”呼ばわりされたが、私に言わせると少し違う。木嶋がしていたことは、婚活ではなく、出資者を探すという“ビジネス”である。その証拠に木嶋は、相手を選ばない。被害者の中には70~80代の男性もいたが、木嶋は援助が約束されれば受け入れていた。

ついでに言うと、70~80代の男性から見れば、当時30代の木嶋は十分若い。芸能人になるというなら話は別だが、一般人の場合、若さや美しさは隣にいる人との比較なので、競争率の低い場所に行きさえすればいい。それを木嶋はよく知っていただけの話だ。このからくりに気付かない女性論客たちをあざ笑うかのように、木嶋は「週刊新潮」(新潮社)に手記を寄せ、「今の夫(筆者注:木嶋は獄中で二回結婚している)は、私の体型を殊の外愛している」と「太っていても愛されるワタシ」アピールをかかさない。

話を“魔性のオンナ”に戻そう。斉藤由貴は、今の若い人にとっては「50代なのに、きれい」な女優の1人だろうが、実は90年代、“魔性のオンナ”として鳴らしていた。斉藤は、「少年マガジン」(講談社)主催「第3回ミス・マガジンでグランプリ」を獲得し、正統派アイドルとしてデビュー。NHK連続テレビ小説のヒロインを演じ、『NHK紅白歌合戦』ではキャプテンも務めた。敬虔なモルモン教徒といわれており、酒もタバコも禁止されているため、映画の撮影で苦労したなどと語るなど、典型的な清純売りをしていた。

しかし、「月刊KADOKAWA」(角川書店)で対談した歌手・尾崎豊との小樽不倫旅行を写真週刊誌に撮られ、尾崎に妻子があったことから、斉藤は窮地に立たされる。斉藤は尾崎との関係を“同志”と左翼的な言葉で説明、尾崎が家庭に戻ったことからうやむやになったが、今度は川崎麻世との不倫がリークされた。この頃には完全に“魔性”枠に入れられるようになっていたように思う。

斉藤はその2カ月後に、信仰を同じくする一般人男性と知り合い、10日後にはその男性を実家に招いて、結婚の挨拶をしていたという。不倫が続いてイメージダウンを恐れた教団と斉藤の父が、彼女にふさわしい男性を教団の中から探したという報道もされていた。前の恋愛から時間がたっておらず、教団が介した出会いというと、“強引にくっつけられた”とイメージしてしまうが、記者会見で「彼は(私より)父と仲が良い」「彼が私を好きな気持ちよりも、私が彼を好きな気持ちの方が大きい」と発言していたところから察するに、本当に恋したのだろう。過去をぐだぐだ引きずらないのも、前向きな“魔性のオンナ”らしいと感じる。

斉藤の面白い点は、彼女が「母親を語らないアイドル」なことである。例えば、松田聖子の母親は「最初は芸能界入りに大反対だったけれど、最終的にはお父さんを説得してくれた」、中森明菜の場合は「歌手志望の母親がかなえられなかった夢を、子どもたちに託した」というように、母親がどんな人物であったかをエピソードとして語るが、斉藤は母親を語らない。その代わり、頻出するのが“父親”なのである。斉藤は3人の子どもを出産後、一時太ったことがあるものの、一念発起してダイエットをし、現在の第二次ブレークを迎える。斉藤はダイエットについて「父の一言がきっかけでした」と説明していたが、家庭を持っている女性で、一緒に住んでいる夫や子どもではなく、父親の意見を尊ぶのは非常に珍しいと言えるのではないだろうか。斉藤にとって、父親はそれだけ大きな存在なのだろう。

近年、家族関係が子どもの人間関係に影響があることを書いた本が多数出版されている。たいていは母親からの影響であり、父親は蚊帳の外においやられているのだ。学術的な裏付けはなく、私見でしかないが、娘の恋愛に影響を与えるのは、実は父親との関係ではないかと私は考えている。父親に心の底から愛されてきたと疑いなく言える娘は、外見や年齢にかかわらず、オンナとしての自分に価値や、男性という生き物を肯定して見つめることができるように思えるのだ。だからこそ、男が寄って来るのである。

“魔性のオンナ”と言えば、女優・大竹しのぶもそう呼ばれていた時期があったが、大竹も「お父さんが大好き」と、『徹子の部屋』(テレビ朝日系)で話していた。大竹は斉藤にとって、NHKの朝ドラ主演を務めた先輩女優で、父親好き以外にも、もう1つ共通点がある。NHKのディレクターによると、朝ドラは撮影スケジュールが過酷で、たいていの主演女優は過労で入院するらしい。しかし、たった2人だけ入院しなかった女優がいて、それが大竹と斉藤だったそうだ。

体力があり、父親好きなことが“魔性のオンナ”の条件だとしたら、“魔性のオンナ”が必ずしも美人とは限らないことにも納得がいくのではないだろうか。女性が気づかないだけで、“魔性のオンナ”はそこかしこに潜み、静かに人生を楽しんでいる気がしてならない。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、最新刊は『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
ブログ「もさ子の女たるもの

あなたにおすすめ