宇宙からみた 北海道上陸の3つの台風

日直予報士

2017/2/28 10:36

宇宙からみた気象現象シリーズ第5弾 1週間のうちに北海道に続けて3つの台風が上陸し、大きな被害をもたらした2016年8月の台風。最新技術で得られた気象衛星画像を基に、台風第7号、第11号、第9号の気象現象を振り返ります。大雨・暴風といった記録的な災害になった2016年の夏でしたが、これらの台風データが解析・蓄積されて、未来の台風予測の精度向上に生かされていきます。

●北海道へ3つの台風が上陸 統計開始以来初

2016年8月に相次いで発生した台風は、北海道や東日本を中心に大きな被害をもたらしました。住宅への被害、ライフライン・交通の長期的な障害、農作物への被害など、復旧に甚大な労力が必要な事態となりました。

「北海道に台風が上陸する」ということ自体も、比較的珍しいことですが、2016年8月は3つの台風「7号チャンスー」「11号コンパス」「9号ミンドゥル」が次々と北海道に上陸しました。1951年の統計開始以来、ひと夏に3つの台風が北海道に上陸したのは、はじめてのことです。

図1を見ると、3つの台風は発生場所が違うものの、日本に近づくと似たようなルートを辿って北海道に上陸していることが分かります。これは、8月中旬から下旬にかけて、日本付近は東西の2つの大きな高気圧の谷にあったため、東日本~北海道が連続して台風の通り道になったと考えられます。

●台風第7号が前線の活動を活発化 北海道・東北・関東が大荒れ

台風第7号は8月16日未明に関東地方に最接近したものの、上陸せずに東日本の太平洋側の海上を北上し、17日17時半ごろ北海道の襟裳岬付近に上陸しました。16日夜から17日にかけて、北海道や東北地、関東地方では太平洋側を中心に大荒れの天気となり、16日、17日の2日間の総雨量は、胆振地方の白老町森野で233.5ミリ、日高地方の浦河町中杵臼で207.5ミリでした。また、釧路地方の釧路市幸町で最大風速31.8メートル(1910年の統計開始以来第一位)の猛烈な風を観測しました。特に北海道では、浸水被害、暴風被害や土砂災害による道路の通行止めなど、大きな傷跡が残りました。

このような荒れた天気となった理由をひもといていきます。

図2の天気図を見ると、台風より北側(北海道付近)に前線が停滞していることが分かります。台風は、暖かく湿った空気の塊ですから、前線に近づくと、前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込み、前線付近は大気の状態が非常に不安定になります。そのため、図3の地上レーダ画像のとおり、台風付近の雨雲だけでなく、台風が前線に近づくほど、前線付近の雨雲も活発になっていきます。

ちなみに、この地上レーダ画像とほぼ同時刻の降水の鉛直構造(3D)を表したものが図4です。この画像は、JAXAの全球降水観測計画(GPM)主衛星により観測したもので、降水を高精度・高感度・3次元(3D)で観測することが可能です。実はGPM主衛星の観測データは、2014年8月から気象庁の台風解析に、2016年3月からは同じく気象庁の数値予報システムにも利用されており、台風の進路・盛衰の予測精度の向上に貢献しています。

●復旧の間もなく立て続けに北海道へ 台風第11号と台風第9号

台風7号が残した傷跡が回復する間もなく、8月21日23時過ぎ、台風第11号が北海道釧路市付近に上陸。さらに8月22日12時半ごろ、台風第9号が千葉県館山市付近に上陸し、23日6時前に北海道日高地方中部に再上陸しました。

荒れた天気になったのは、台風第7号の理由と同様です。この時も、北海道付近には前線が停滞し(図5,6参照)、台風の接近・上陸に伴って、前線の活動が活発になりました(図7参照:衛星全球降水マップGSMaP)。

このため、8月22日には東京都青梅市で1時間に107.5ミリ、23日には栃木県真岡市で1時間に90.5ミリの猛烈な雨を観測したほか、前線付近で断続的に雨が降った北海道では、常呂川や石狩川下流が氾濫し、氾濫発生情報が発表されました。

この3つの台風により、東日本から北日本にかけて大雨・暴風の荒れた天気となり、北海道には一週間のうちに3個の台風が上陸するという、記録的な災害になったのです。

災害は防ぐことが出来ないものもありますが、事前に情報を把握できれば、被害を減らすことは出来ます。こういった台風の情報は解析し蓄積され、未来の台風予測に活かされていきます。

当記事は日直予報士の提供記事です。

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