急増する高齢ストーカー……その心理を精神科医が解説

近年、高齢者が起こすストーカー事件が目立つようになった。警察庁の発表によると、2015年のストーカー事案で、加害者のおよそ1割が60歳以上の高齢者。ストーカーというと若者の犯罪というイメージがあるが、なぜ高齢者によるストーカーが増加しているのだろうか。専門家に聞いてみた。

■高齢者をストーカー行為へと駆り立てるものとは

お話を伺ったのは、精神科医の福井裕輝さん。性犯罪加害者専門の治療機関である「性障害専門医療センターSOMEC」の代表を務める福井さんによると、高齢者によるストーカーが増加した背景には、昨今の社会不安があるのだという。

「高齢者のストーカーが増加したのは、人口に対して単純に高齢者の割合が増えたからとも考えられますので、はっきりとした原因は分かりません。しかし、貧困問題や人間関係の希薄化により、強い孤立感を抱えている高齢者が多いのは事実だと思います。こうした不安感も伴い、女性から少し親切にされただけで、相手も自分に好意があると勘違いしてストーカー行為に走ってしまうのです」(福井さん)

核家族化が進む現代、妻に先立たれて一人ぼっちになったり、退職後にやりがいと呼べるものが全く無くなってしまうなど、高齢者は孤独や不安に陥りがちだ。全く知らない相手に付きまとうというケースは少なく、同じサークル内や取引相手など、ある程度近しい関係にいる女性がターゲットとなるという。また、少し意外かもしれないが、若い女性だけでなく加害者と同世代の女性による被害相談件数も多い。

■高齢ストーカーになりやすいタイプを分析

それでは、どのような性格の人がストーカーになりやすいタイプといえるのだろうか。

「加害者のカウンセリングを行っていて感じるのは、価値観が偏っていて柔軟性がない人が多いということです。今の若者は現実的というか、仕事のほかに、趣味など別の自分の世界を持っています。しかし、いわゆる団塊世代は受験戦争を経て企業戦士となり、居心地が悪くても定年まで我慢して働くことが当たり前という考えが一般的です。家庭も顧みず、退職した後に趣味も何もないという人は多いです。また、プライドが高く、社会的な序列で他人を判断するという傾向も見受けられます」(福井さん)

ストーカー加害者は、圧倒的に男性が多い。男性は女性に比べて仕事以外のコミュニケーションを取ることが苦手だといわれるが、退職後も社会との関わり合いを持ち続けることが重要だ。

「若いうちから仕事だけではなく、趣味を持ったり、サークルやボランティアなどの社会的な活動に積極的に参加することは大切です。社会と関わったり、やりがいを持つことにより、ストーカー行為を行っていた相手に対する気持ちが違う方向に向かっていきますからね。よってカウンセリングの際にも勧めることが多いです」(福井さん)

高齢社会の日本が昨今抱えている問題は実にさまざまだが、根底にあるものは同じであると福井さんは指摘する。人間関係の希薄化による強い孤立感と貧困による不安感。これらが近隣トラブルやうつ、犯罪など形を変えて表面化するのだという。

孤立と貧困は、いまやどの世代にも通じる深刻な問題だ。いつ自分や自分の周囲に降りかかってきてもおかしくないということを肝に銘じる必要があるだろう。

「教えて!goo」では「日本が抱える高齢者の問題にはどんなことがあると思いますか?」ということで皆さんの回答を募集中だ。

(酒井理恵)

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)

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