実は18番まである「大阪で生まれた女」に隠された物語とは?

UtaTen

2016/5/6 12:01



春から、進学や就職で生まれた土地を離れた人も多いのではないでしょうか。昔、大阪に住んでいたことのある私は、上京というと思い出すのはBOROの「大阪で生まれた女」です。

大阪に引っ越した当初は、カラオケに行く人行く人みんながこれを歌うので、びっくりしたおぼえがあります。でもいつの間にか自分も覚えてしまい、以来すっかり大切な歌に。カラオケでも十八番です。

ところで「大阪で生まれた女」って、「踊り疲れたディスコの帰り~」で始まると思っていませんか?間違い…ではないけれど、それは4番の歌い出し。本当の冒頭は、こう始まります。

まだ、ディスコなんかに足を踏み入れたことのない高校生の頃の、交際している男女の様子からスタートするんです。この曲は、一組のカップルが学生時代に付き合い始めて、ある結末を迎えるまでの愛のメモリー。今回は、なんと18番まで続く、その壮大な物語の顛末をご紹介しましょう。

卒業しても、二人の愛は変わることはありませんでした。でもこのあたりで、男性の側に「大阪を出たい」「東京へ行きたい」という気持ちが芽生え始めます。

そして、これに続くのが、おなじみのこの歌詞。

カラオケでよく聞くのは、ここのフレーズですね!
でも、1番からの歌詞を知ると「やせたなと思ったら泣けてきた」という部分で、高校生からだいぶ年を経ているな、と感じられるはず。二人は大人になってきているんです。

おそらく、だいたいの人の記憶はここで終わっているのでは?「大阪の街を出よう」と決意した彼女。この後、二人にどんな未来が待ち受けているんだろう…と想像をふくらませつつ、歌のことは記憶の隅に置いて日常を過ごしてきたという人も多いはず。
でも、続き、あるんです。物語はまだまだ終わっていないんです。

ついに、大阪の街を後にした二人。夢を追おうと意気込む男性に対して、女性は大阪に未練たっぷり。でもついていくと決めたのだから、と決意を新たにします。ちなみに「ひかり32号」というのは、当時は上京するための最終電車だったのだそう。薄闇の中を東京へ向かう新幹線。闇が深まると、列車の窓には彼女の涙にぬれた顔が、切なく映っていたことでしょう。

そして、物語は東京編へ。
この二人は何と、上京してから、立教大近くの部屋に住んでいたこともあったんです。「西口ロータリー」とは、池袋駅西口のこと。

でも、静かな住宅街でなく、学生の街に部屋を借りてしまったことで、二人は「自分たちはもう若くない」ということを思い知らされます。きっと、彼らはもうアラサー以上。「生きることに必死」という歌詞から、上京したものの思うようにはうまくいかず、気持ちのすれ違いも起こっていることがうかがえますね…。

そんなある日に届いた、彼女の親からの手紙。娘が東京でままならない暮らしをしていることを想像したら、特に父親はたまったものではないでしょう。
「とにかく帰ってこい」と、彼女を説得にかかります。

そして…

なんと…!ついに…!彼女は単身、大阪へ帰ってしまうのです。懸命に夢を追うあまり、彼女にさんざん苦労をかけてきたであろう男性。「待ってくれ」「行かないでくれ」とは、彼女を引き留められなかったんでしょうね。四面楚歌の状況で、訪れた別れ。でも、高校生からの二人の付き合いを思い返すと、仕方ないとはわかっていても切ないものがあります。

そして、この曲の結末はこう。

別の男性と結婚して、子どもをもうけた女性。彼のほうは、東京に残り、ささやかながら成功を手に入れました。もしかしたら、あの時彼女と別れたことが、男性にとって着火剤になったのかも…。でも、あのまま付き合っていたら、二人にはまた別の未来があった可能性もありますね。彼らにとって、いったいどちらが幸せだったのでしょうか?

18番にわたる物語は、ここまで。フルで歌うと30分以上にも及ぶ大曲です。…いや、正確に言うと、ここまで、と思われていました。でも、2015年にBORO本人により続編が作られ、物語は実はまだ続くこととなりました。なんと、19~21番までが新たに加わったのです!

19番では、女性は60代になっています。18番のラストでは、子どもができているところを見ると、女性はおそらく20後半~30代。あれから、30年以上の時が流れたんですね。19番では、女性は「上六」(=大阪府天王寺区の上本町六丁目)に住んでいて、もう孫もいるくらいの年齢。

「構想」とは、橋下徹元大阪府知事が2010年~掲げていた「大阪都構想」のことを指すため、本当に最近の様子が描かれていることがわかります。女性は、今も、大阪のどこかで生きているのです。

「あの人が逝かはってから」という歌詞から、旦那さんを亡くしてしまったことがうかがえます。「うちらは」というのは、旦那さんともあるでしょうし、昔付き合っていた彼にもかかっている言葉でしょう。つらいことも多かったけれど、たくさんの笑顔が、彼女の人生を作ってきたんですね。だって、大阪で生まれた女ですから。

でも自分は「大阪で生まれた女」だと誇りをもって、生き抜いていく覚悟のようです。…壮大な人生賛歌に拍手を贈りたいですね。「それが!」の「!」に、女性の底力を感じます!

とてつもない熱が込められた名曲「大阪で生まれた女」
萩原健一をはじめ鳥羽一郎、五木ひろし、吉幾三、坂本冬美…など歌謡界のそうそうたる面々がカバーしていますが、近年一段と進化したな、と思ったパターンはこれ。

BAKIとRSPのAiによるHIPHOPバージョン(2010年)です。

BAKIは、大阪出身のHIPHOPアーティスト。RSPのAiは京都出身。関西出身者同士がタッグを組んで、相当に気持ちがこもっていることが想像されます。また、BAKIの歌う部分は、メロディではなくラップ。歌詞も現代風にアレンジされていて、古い歌とは思えないようなキュートな感じがあります。ちなみに、現代版の二人が通うのは「ディスコ」ではなく「クラブ」です。

「足りないものは補って」「進むべき同じ道」。なんだか、BOROのバージョンより前向きに感じられます。黙ってついてこい、というよりは「一緒に生きていこう」という感じ。この二人なら、別れずにずっと一緒に暮らしていけそうかも?

MVを見ると、気が強そうなAiに比べ、BAKIはアーガイル柄のニットを着ていて草食系の男子。語り口も優しいことから、昔とは男女の関係が逆転しているように見えるのも、ちょっとおもしろいところです。

名曲は、時代を越えて進化し続けるんですね。

そう来たら、さらに空想してしまうのは、今後、2016年以降のバージョンの「大阪で生まれた女」ができるのだったら、どうなるのかということ。
サブカル寄りか、はたまた青春ロック?もしくはアイドルの歌う「大阪で生まれた女」?

新世代にも期待してしまいます。
「大阪で生まれた女」は、これからも元気に生き続ける、そう信じて。

TEXT:佐藤マタリ

当記事はUtaTenの提供記事です。

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