日本経済の停滞が“危険なJKビジネス”を横行させた!? 衝撃の一冊『女子高生ビジネスの内幕』

日刊サイゾー

2016/3/23 21:00


 たびたびニュースに取り上げられる「JKビジネス」。相次ぐ摘発にもかかわらず、東京の繁華街では客を引く制服姿の女たちの姿が絶えることはない。とりわけ、秋葉原はそうしたビジネスの中心地として、幾たびもメディアに取り上げられている。

メディアを通じて取り上げられる「JKビジネス」は、いわば売春の温床。昨年10月には来日した国連人権理事会の特別報告者・ブーア=ブキッキオ氏が「日本の女子学生の13%が援助交際をしている」と発言し、大きな論争を巻き起こした。

しかし、何度メディアに取り上げられようとも、どういう人々が働き、利用しているのかという疑問は消えない。報道の大半は、最初からなんらかの結論ありきによって成り立っていて、余計に人々が実態を知ることを困難ならしめているのだ。

井川楊枝『女子高生ビジネスの内幕』(宝島社)は、そうした「JKビジネス」に対する素朴な疑問にことごとく応えてくれる本格的なルポルタージュだ。

当初、出版社の書誌情報に記された「知られざるJKビジネスの内幕をルポ」という言葉から感じたのは、覗き見趣味的にただれた世界を描いているのではないかというものだった。けれども井川氏はそこで働く女性たち、経営者、客にまで徹底的な取材を行った果てに「JK」に価値が見いだされる現代日本の赤裸々な姿をあぶり出していくのだ。

この一冊を上梓するまでに至る取材は、2012年から4年あまりにも及ぶという。取材当日は、かつて井川氏とさまざまな映像作品で現場を共にした仕事仲間であり、拙著『コミックばかり読まないで』(イースト・プレス)の解説にて、私と井川氏の見えざる絆を鋭く考察した増田俊樹氏。また、私のアシスタントとして取材先に同行したマスコミ業界就職活動中の女子大生・内藤さんも女性の視点からインタビューに参戦。それぞれの視点から寡黙な著者の問題提起をえぐり出してみた。(文=ルポライター・昼間たかし/取材=増田俊樹)

■JKビジネスとAKB48の関係性

──丹念に取材されていますね。取材費はかなり使われたのでは?

井川楊枝(以下、井川) 2012年にたまたま秋葉原でビラ配りをする女子高生と出会って、それから興味を持ち、実話誌やらお宝系の雑誌、エロ系の雑誌とかに企画を出したら、軒並み企画が通ったんですよね。たぶん今まで20万円近くは払ってきたと思うんですけど、ほとんど編集部に経費を出してもらっているから、自分の懐はあんまり痛んでいません(笑)。それだけ「JK」というキーワードを入れると、雑誌の反響があったということなんでしょう。

──井川さんと私(増田)が、たびたび仕事で組んだグラビア系の雑誌や映像は、セクシー系がメインでした。JKなんか当時は全然注目されていなかったですよね。

井川 ええ。05年から09年ぐらいでしたっけ。ちょうど着エロブームの頃で、私たちはどちらかというと、そういうセクシー系の子たちと仕事で関わる機会が多かったんですよね。でもいつの間にかAKB旋風が巻き起こって、セクシー系グラドルが下火になった。今は、さまざまな地域でAKB48を模倣したご当地アイドル、萌え絵を使った町興しをやってて、エロより萌えになっちゃっていますよね。

──つまり、AKBのデビュー以降、時代がJKに変わったんですかね?

井川 そうですね。詳しい流れをいうと、まず02年くらいからメイド喫茶が誕生し始めたんですね。05年に「萌え」が流行語大賞を受賞。そんな萌えブームの上に、AKB48が誕生してメディアを席巻、そこにJKビジネスが生まれたわけで、全部つながっているんですよ。10年ぐらいからアイドル戦国時代っていわれるぐらい有象無象のアイドルが生まれましたけど、JKビジネスはそんなアイドルの成長曲線と一致しています。表の世界がアイドルなら、裏の世界がJKビジネスなわけです。メディアはJKビジネスばかり批判してるけど、両方の根っこにあるのは同じものですよ。

──そう言えば、井川さん、AKBみたいなアイドルをプロデュースしてませんでした?

井川 はい。これもJKビジネスを取材していくうちに、どうやら「今の世の中はJKだ!」ということがわかってきて、15年に、若い子らを集め、そのまんま学生服みたいな衣装を着たユニットを作ってみたんです。でも、私自身が全然、地下アイドルも好きじゃないし、若すぎる女の子と話すのは苦手だしっていうので、うまくいかなかったですね。両者は似通ってるけど、アイドルビジネスはJKビジネスよりも大変だし、儲からないこともわかりました(笑)。

──でもなんで、セクシーよりもAKBになっちゃったんでしょう?

井川 それだけ、今の男たちが草食化していて、リアルで重たいものを受け入れられなくなってるんじゃないでしょうか。90年代半ば以降も、JKの援交ブームがあったけど、そのときのJKってリアルな女の子だったと思うんですよ。当時はアムラーとかコギャルが流行ってましたよね。でも、今のJKビジネスの女の子たちって、「萌え」っていうパッケージに包まれてて、メイドさんのような2.5次元的な存在で、ある種の男の理想を具現化したようなものとして売られているんです。大人の女を相手にするのは疲れるけど、アニメのヒロインみたいな無垢な感じの子を相手にするのは癒される。別にこれはオタクだけに限った話じゃなくて、全国の刑務所でもAKB総選挙の話題で盛り上がっているらしいから、日本全国、総「萌え」化ですよ。

──そうリアルにおっしゃる井川さんはロリコンなんでしょうか?

井川 いえいえ(笑)。ただ、ここはよく勘違いされている方が多いんで言っておきますと、医学的に言えば、小児愛好家は13歳以下の少女に性欲を覚える人たちのことなんです。日本では女性の婚姻年齢が16歳からとなっていますし、JK店に通う客が医学的に問題のある人たちかというと、必ずしもそうではない。性的にノーマルな人だって、ひょっとしたらJKに惚れることだってあるかもしれない。でも、日本の法律は18歳未満が児童と定められていることもあり、社会的・法的な観点からいえば、JKとは一線を越えた関係を結んじゃいけないんです。取材していて驚いたのは、そういう法的なリスクを考えず、JKと一線越えようという客が多かったことですよね。それだけ日本が病んでいるという証拠だと思いますよ。

■JKビジネスで働く女の子、そして集まる客たち

──まず、JKビジネスで働いている女性の大半は本当にJKなんですか?

井川 13年のリフレ摘発やお散歩補導まではリアルなJKでしたね。でもそれ以降は規制が進んで、今は18歳未満は、JKリフレやお散歩などの仕事に就いてはいけないと定められています。それに、たとえ18歳以上であっても、高校に通っていたらダメ。だから、JKリフレやJKお散歩で働く女の子たちは、18歳以上の高校に通っていない女の子たちです。秋葉原には今もたくさんJKリフレ店がありますけど、そこで働く女の子たちはリアルJKではありません。言ってみれば、メイドみたいなJKコスプレですよ。

──じゃあ、もうJKはいない?

井川 いえ。今はその法を潜り抜けるように、都内ですと、JKカフェやJK占い、JKコミュ(=コミュニケーションの略)のような店が流行っていて、そこでは18歳未満のリアルなJKがたくさん働いています。これらの店はリフレのような肉体的接触がなくて、お話だけという体ですね。その形態の店だったら、まだ法には触れないので。ただ、池袋や新宿辺りにある悪質なJKコミュなどの場合、トークスペースをカーテンで仕切って外から見えないようにしており、その中で裏オプ(裏オプション)が蔓延しています。女の子に取材したら「手コキ1万、フェラ2万、本番3万で、一日20万稼ぐ。店の大半の子が手を染めている」って言ってましたね。

──そこで働いている女の子はどういう子たちなんですか?

井川 見た目は黒髪で清楚で、さらに言えばセミロングの前髪パッツンみたいな、今のアイドルと同じような感じが主流なんですけど、だいたい社会的にはドロップアウトしていますね。高校を中退していたり、高校に通っていても通信高校だったり。あとは、親がシングルだったり、家庭が崩壊している子が多い印象は受けました。今、日本は一人親家庭の貧困率が50%を越えていて、世界最悪の水準になっています。JKビジネスに女の子が絶えず集まってくるのは、そういう社会的背景が大いに関係していると思われます。

──貧困がJKビジネスへの引き金になっていると。

井川 ただ結局、ジャニーズのライブに月何十万も使ったり、バンドの追っかけなんかやっていたり、ホストクラブも18歳未満では行けないはずなんですけど、知り合いの保険証を借りて入店して、お気に入りのホストにつぎ込んでしまったりとか、散財している子が多かった。やっぱり、学校にもろくに行っていないから、将来の職業選択の幅も狭まっちゃうでしょ? それで教師になるとか商社に勤めるとかいうごく普通の将来の夢が見つけられず、せっかく稼いだ金を無意味に使うんですよ。ごくまれに目的意識の高い子もいて、専門学校に行きたいからとのことで、その学費とかを貯めている子もいましたけど。

──ちなみに、オタク女子率は高いんですか?

井川 多いですね。JKビジネスの大半は萌え系のサイトで募集をかけているから、萌えとか二次元の世界にハマっている子が、そういうところにたどり着いて、よく応募するようですね。客の男とはオタク話で盛り上がったりするみたいです。

──客層の傾向は?

井川 年齢は30代から40代ですね。夜になると賑わいが増すので、会社帰りのサラリーマンの利用が多いんですけど、歌舞伎町や六本木のキャバクラとかで遊んでいる客層よりは、おおむねお金を持っていないです。仕事はプログラマーとかSEとかのIT系が多い印象です。そこそこ稼いでいても寂しさを抱えていて、一般社会では満たされていない男性が多いと思いますね。

──お客さんには、どうやって取材したんですか?

井川 店の前を張って、初めての客を装い、「ここの店入ろうと思うんですけど、どんな感じでした? お勧めの子は?」とか聞いて、一緒に喫茶店に入ったりして話を聞いたりしました。取材って伝えるとものすごく嫌がられたので、身分を隠しつつ(苦笑)。

──取材後に情報を得るなり、継続した本人取材なんかは続けているんですか?

井川 女の子に対しても客に対しても、ほとんど身分を明かさない潜入取材を試みているんです。なので、そこで知り合った取材対象者とは連絡先を交換することは、ほとんどありません。ですが、今回の書籍を書く上で何人かには身分を明かして取材していて、その人たちとは連絡を取り合っているから、今でも常に新しい情報は入ってきていますね。この店は過激に突っ走っているとか、これはヤバいなあとか。『女子高生の裏社会』(光文社新書)の著者・仁藤夢乃さんは、性的被害に遭っている女の子たちと助けようと社会運動もされている方ですけど、私は女の子を保護したり、警察に通報したり、店に注意を促したりなんてことはしません。ただのルポライターなんで、SNSで情報発信したり、雑誌に書くまでが仕事と割り切っています。私の情報を参考にしていただいた上で、JKビジネス関係者なりが対応したり、警察なりNPO団体なりが動いてくれればいいですよね。

──JKビジネスの動向は刻一刻と変化していますが、その報道についてどう思われますか?

井川 とんちんかんな報道が多いですよね。今でも秋葉原がJKビジネスのメッカみたいな感じで報道されることは多いんですけど、先に言ったように今の秋葉原の大半は、18歳以上のJKコスプレです。東京オリンピックが間近に迫っているのに、都内随一の観光スポットである秋葉原にJK店が乱立していたら見栄えが悪いということなんでしょうけど、実態としては、秋葉原よりも問題なのが新宿や池袋のJKコミュ、それに池袋の某お散歩店。そこは裏オプが蔓延しているので。秋葉原にもアンダー(18歳未満)が働くJKカフェはあるけど、そこはせいぜいお茶を飲んだりオセロをするぐらいですからね。JKビジネスが騒がれたことで、ただの秋葉原のメイドすらも白い目で見られるようになっていて、ちょっとかわいそうだなあと思ったりもしますよ。

──本書は日本経済の停滞が、危険なJKビジネスを横行させてしまったという井川さんからの問題提起ですよね?

井川< そうですね。今の日本の閉塞感もあって、働く少女、買う客、経営者と、三者三様に、この日の当たらない世界に寄り集まってきています。JKビジネスの経営者は若い人が多いんですけど、まともに働いても給料も上がらないし、企業に搾取されるだけ。そんな冴えない人生を歩むぐらいなら、JKビジネスで一発当てよう。仮にパクられても労働基準法違反で30万程度の罰金で済む……って考えて、経営者は何度パクられても店を立ち上げるんですよ。取材していて経営者の名前を聞いてみたら「この店って、あのパクられた店長の店だったんだ」ってことは、よくあります。今、JKビジネス界隈には、慶応とか早稲田とかの高学歴の経営者グループがあって、そこがかなりイケイケで、法スレスレで突っ走ったりもしているんですよ。本来だったらそれだけの大学出てたら、大手企業に就職しようって考えるでしょ? でも、今はそういう道に夢が持てなくなっているんでしょうね。実は、私自身も早稲田大学を卒業した後、コンピュータ会社に就職してSEになったんですけど、過酷な仕事に音を上げて、こんな人生は嫌だって思い、ホストクラブ関連やアダルトビデオ、着エロ系グラビアとか、ダークな仕事をやってきたんです。だから、経営者の気持ちもすごくよくわかるというか、ひょっとしたら自分も彼らと同じことやっていたかもしれないと思っちゃうんです。貧困が蔓延している今、JKビジネスは決して私らと隔たれた世界にあるわけじゃなくて、すぐ間近に横たわっているんですよ。自分の娘が小遣い稼ぎに働いちゃうかもしれないし、友人が満たされない思いを抱えつつ客で通っているかもしれないし、ある日、自分がそういう店を立ち上げることになるかもしれないんです。これは日本社会全体の問題なんですよ。

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