中央競馬で負けても「ばんえい」がある! プロに聞く‟ばんえい競馬の勝ち方”

日刊SPA!

◆日本に存在するもうひとつの‟競馬”

競馬というと、鍛え抜かれた筋肉美と、それには不釣り合いの細い脚でサラブレッドが速さを競う風景を思い浮かべる方がほとんどでしょう。ですが、日本にはそれとは違った‟競馬”があります。それがばんえい競馬。

ばんえい競馬とは、農耕馬をルーツに持つ馬(ばん馬)が、最大1トンもある鉄のソリを曳いて、2箇所に坂が設けられた200mのセパレートコースで競い合うレースのこと。疾走するサラブレッドのスピード感ではなく、そこにあるのはまさに肉弾戦。前を行く馬がゴール寸前で止まってしまって起こる大逆転劇は、ばんえい競馬ならではのものです。

かつては旭川市、岩見沢市、帯広市、北見市の4市で開催されていましたが、2007年度からは開催が縮小されて帯広市のみに。ただ、その独自性、そしてインターネット投票の拡大により売上は好調で、2022年度には過去最高となる約554億の売上を記録。中央競馬が終わった土日のナイター、そして他の地方競馬があまり開催されていない月曜日に行われることもあって、「今度ばんえい競馬を買ってみようかな」と思っている競馬ファンの方も少なくないのでは?

ということで、今回は、気になるけれど、ちょっと敷居の高い「ばんえい競馬」の攻略法について、大手競馬サイトなどでばんえい専門に予想している予想家の「ワイドな男子!」氏にお話を伺いました。

◆基本は“水分量”。雨が降るほどカオスの状況に

――「ばんえい競馬を買ってみたいけど、よく分からなくて手が出せない」というファンは多いと思います。

ワイドな男子!:たしかに競馬場は1箇所だけで、セパレートコースなので道中の有利不利も少ない。同じメンバー同士の対戦も多いので、普段中央競馬をやっている方にとっては、何をよりどころに予想していいかよく分からないでしょうね(笑)。もっとも取っ付きやすいファクターは、‟水分量”ではないでしょうか。

――‟水分量”というのは、コースの砂に含まれている水分の割合ですよね。サラブレッドのレースでは、水分量が多い場合が「重馬場」、水分量が少なく乾いた状態が「良馬場」。

ワイドな男子!:ばんえいの場合、水分量が少なくパワーがいる場合を「重馬場」、水分量が多くて脚抜きの良い状態を「軽馬場」と言います。「重馬場」の概念が真逆なので混乱しそうですが、中央競馬を予想する時でも、時計の速い状態を「軽い芝」「軽いダート」と表現するので、そのイメージを持っておくとわかりやすいかもしれません。

水分量は0.0%~9.9%で表しますが、今の時期なら大体、水分量は1.6%前後。これぐらいの水分量だと各馬が能力を発揮しやすいので、シンプルに能力差や過去の対戦比較に基づいて予想するのが良いでしょう。実際、私も1.4~1.9%ぐらいの時が得意……だと自分では思っています(笑)。

――水分量によって傾向はどのように変わりますか?

ワイドな男子!:水分量が多いとソリを引く力が軽くなるため、前残り傾向に傾き、パワータイプの馬や末脚自慢の差し馬にはやや不利になります。特に2.5%を超えてくると、明らかに先行有利で、スピードタイプの馬が躍動します。そのため、日頃から軽馬場得意の馬をリストアップ・ストックしておくのがオススメです。

また、水分量が多い馬場は、昇級戦の馬にとっても有利に働くため、斤量差+馬場の恩恵により、ワンパンチ足りない馬が馬券圏内に来ることが増えます。3.0%を超えると、もはや色んな意味で沼(笑)。通常の予想ではあり得ない馬が飛び込んでくるので、穴党なら雨が降っている時に狙いを絞るのも面白そうですね。

◆新人、ベテラン…オススメの4騎手

――初心者にわかりやすいファクターとしては“騎手”が挙げられます。

ワイドな男子!:頼りになるのは私が密かに“ばんえいのルメール”と呼んでいる、鈴木恵介騎手ですね。レース運びがうまく、馬との呼吸を合わせて馬本来の力を引き出すのが得意で、人気馬をきっちり勝たせるし、穴馬もしっかり持って来ます。信頼度はかなり高いですよ。派手さはないけど、堅実な走りで馬券的に頼りになるのが西将太騎手。

穴党にオススメなのは金田利貴騎手。元甲子園球児で、類稀なる身体能力と強気の騎乗で、穴をよくあけるため、青オッズ(単勝オッズ100倍以上)のときは気にかけておいて損はありません。末脚を武器とする馬との相性がよく、ばんえいではあまり見かけないシンガリからの一気差しもかましてくる、まさに“新時代”のジョッキーです。

新人では、今井千尋騎手に注目。18年ぶりに誕生したばんえいの女性ジョッキーです。減量の恩恵があるのは確かですが、デビュー直後からとにかく乗れています。まだあまり知られていないと思いますが、大外枠での好走歴が多いため、大外枠に入ったら必ず買い目に加えています。

大外枠が得意といえば、ばんえい唯一のサウスポー・船山蔵人騎手も忘れてはいけません。左からべん打ち(長い手綱の余った部分で肩を叩いて合図を送ること)を入れられるのはこの人のみ。そのため、大外枠に入って、利き腕の左が使えるのはかなりの武器となります(一説には、大外枠だと馬がいない左にヨレやすいので、左からの合図が効果的だとか)。

◆今週末は「ウマ娘」とのコラボイベント開催

まだまだインタビューは続きましたが、必勝法やテクニックについては次回お届けします。

先述した通り、ばんえい競馬は主に土日月のナイター開催です。今週の競馬に勝った人はもう一勝負、負けた人は逆転をかけ、あるいは気分転換のためにチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

なお、9月23日、24日は帯広競馬場で「ウマ娘 プリティーダービー」とのコラボイベントが開催される模様。ウマ娘ファンの方は、現地に馳せ参じるしかありませんね!

文/松山崇

【松山崇】

馬券攻略誌『競馬王』の元編集長。現在はフリーの編集者・ライターとして「競馬を一生楽しむ」ためのコンテンツ作りに勤しんでいる。

当記事は日刊SPA!の提供記事です。