5人組声優アイドルユニット「i☆Ris」。昨年10周年イヤーを見事に駆け抜けた彼女たちが、8月23日に23枚目となるシングル「Let you know!/あっぱれ!馬鹿騒ぎ」をリリース。「声優アイドルだからこそ出せる、個性ある表現」「11年目を迎えた私達らしい楽曲」と自信を滲ませる今作について、山北早紀、芹澤優、若井友希の3人にその魅力を語ってもらった。
◆昔から憧れていたヒャダインによる楽曲提供
――「Let you know!」はAdoの『踊』の作曲編曲を手掛けたTeddyLoid、「あっぱれ!馬鹿騒ぎ」はヒャダインと、両作とも豪華クリエイター陣とのコラボでした。まず、聞き所、みどころを教えてください。
若井 昔からずっとヒャダインさんに楽曲提供してほしいと思ってたんです。ももクロさんも大好きだったし、でんぱ組.incさんも、ああいう曲羨ましいなってずっと思ってて。曲の展開や転調がたくさんある、聞いたら「これはヒャダインさんだ」ってすぐわかる曲を私達も歌ってみたかったので、ついに叶ったって感じです。いろんなアイドルがヒャダインさんの曲を歌ってきたけど、声優アイドルだからこそ出せる、個性ある表現の「あっぱれ!馬鹿騒ぎ」をぜひ聞いてほしいです。
山北 私はまず何も深いことを考えず、ジャケットを見て、このシングルを再生してほしいと思ってます。お、歌うまいじゃん。ビジュもいいじゃん、こんなグループ、日本にいたんだ、みたいな。「Let you know!」の次に「あっぱれ!馬鹿騒ぎ」を聞いて、え、これ同じ人達の歌なの!? と驚く。写真を見ながら、この人たち、こんなふざけた歌も歌うのか~って振り幅を感じてほしいですね。
◆「一緒に頑張ろう」から「ついて来いよ!」に
――「Let you know!」の歌詞は抽象度が高く、聞く人によって読み取り方が変わると思います。個人的には、キャリアとスキルを積み上げ、10周年を超えてなおかっこよさを貫いていくi☆Risのいまを描いているように感じましたが、みなさんはどのような解釈で歌っていたのか、教えてください。
芹澤 みんなで曲のイメージを共有することはなくて、それぞれでレコーディングをするんですけど。私は、“私の歌”だと思って歌いましたね。〈他人が決める価値も 磨き上がれば勝ちよ〉って言葉、芹澤優ちゃんが言いそうだなって。
――「今のセリコがいちばんかわいい」というフレーズと重なりますよね。
芹澤 そうそう。私っぽいところを当ててくれたのかな。歌い方のニュアンスはいろいろ込めてるけど、気持ち的にはなにも作らずに、そのままの自分で歌いました。
山北 私も似たような感じで、何も考えず、自然に歌いました。昔のi☆Risの曲だともっとメロディラインもカチッと決まってて、歌詞も全力で頑張る!って感じが多かったと思うんですけど。この曲って、歌詞は強気だけど、メロディラインはけっこう余裕があるというか抜け感があって、抜くことを覚えた11年目のi☆Risちゃんって感じが出てる。メロディと歌詞がうまい具合にマッチしてると思います。
若井 私が最初に歌詞を見たときは、“自身に満ち溢れてる女”だと思ったけど、自分が自信を持ってる人であるべきとは思わなかったかな。〈Do you wanna ×3 どーする〉とかの部分は、最近聞いてくれるようになった若い女の子層に向けて、「i☆Risちゃんたちが自信持って歌ってるから、自分も頑張ろう」って思ってもらえるような応援ソングになったらいいなと思ってます。これまではキラキラしてて一緒に頑張ろうよって曲が多かったけど、今回は「ついて来いよ!」って提示しているようなイメージですね。
芹澤 「Let you know!」はラップパートもあり、クールなテイストかつ、友希ちゃんが言うみたいな「ついてきて!」って強さのある曲だけど、それが強がりじゃなくて、自然にできてると思うんです。11年やってきて説得力が出てきたのかな。
◆最終的に「これは一番ないな」と思ってた衣装に
――「Let you know!」は、衣装を中心としたビジュアル要素が2021年8月に発売した「Summer Dude」以降の“大人i☆Ris”の続きのように感じられました。メンバーたち自身で選んだ要素もあるのでしょうか。
山北 スタイリストさんが、「この子にはこれがいいんじゃないか」と、コンセプトに合った衣装を複数パターンを用意してくださって、そこから選んだんですけど、今回私が選んだ衣装は、元々私を想定した衣装じゃなくて。
芹澤 あ、そうそう。最初、優のところにあったよね。
山北 衣装を机に置いた状態で見たとき、「これは一番ないな」って思ってた。だって、このシースルーを脱いだら、“武富士のCM”状態だから(笑)。ふたりは世代的にわからないかな?
若井 (スマホで武富士のCMを見て)これか! (笑)
山北 わかってくれたか。でも結局すべて試着したあとで、最後にこれを着たら、あれ、一番いいのでは…? となって。今後この衣装を着ることがあるとなると、太れないので、またダイエット生活が始まります。
芹澤 私の場合は、曲を聞いたらカッコいい感じだったので、衣装はキュートな要素も入れて、足や肩は出したいなって思ってましたね。
若井 私は最年少だけどあんまり子どもっぽく見られたくないけど、大人っぽすぎても私じゃないみたいだから、髪型を含めトータルでキュートさがある大人をイメージしてます。肌は露出してる衣装のほうが好きなのと、個性的な服が好きなので、この衣装を選びました。私服では絶対に着ないな~ってデザインに惹かれがちです。
◆花火は見たいけど、浴衣を着る機会は……
――「あっぱれ!馬鹿騒ぎ」はすでにライブでも和風の衣装をまとって披露しましたが、プライベートでお祭りに行ったり、浴衣を着たりする機会は近年ありましたか?
山北 ないです! ……って即答しちゃったけど、ふたりはあるのかもしれない。
若井 浴衣を着る機会はないけど、ちゅりちゃん(高柳明音)とお祭りに行く約束はしました。お祭りには行きたいけど、浴衣は着ないかな、疲れちゃうから。お祭りではしゃぎたいっていうよりは、花火を見て風情を感じたいですね。地方の夏祭りが大好きで、私の地元の夏祭りが何年かぶりに復活するんですよ。川沿いにレジャーシートを敷いて、みんなで足をほっぽりだして、音楽を聞きながら花火を眺める……。今年は行けるかわからないけど、また行きたいな~と思ってます。
芹澤 わかる。花火は地元の友だちと見たいかも。エモい感情にひたりたい。浴衣とかで映える必要ないんだよね。地元で見る花火is最高。
――山北さんは、そもそも出かけたくない派ですよね?
山北 はい、人混みが本当に苦手なので、ベランダから花火が見える家に住んでる友だちがいたら、行きたいですかね。そこで焼きそばをつくって、みんなで見る、みたいな。なんなら、手持ちの花火をやるだけでもぜんぜんいいです(笑)。
◆冷やしきゅうり以外の記憶がない夏祭りの思い出
芹澤 私は人がたくさんいる雰囲気やお祭りが大好きなので、行きたい気持ちはいつだってあるんですけど、久しく行ってないですねえ……。悲しい。にぎわってる空気やなにかの食べ物が焼かれてる匂いとかが好きで、強いて言うなら、年越しの神社のお祭りは毎年行ってます。深夜の1時とか2時とか。今年も行きたいですね。ぜんぜん浴衣の話じゃなくなっちゃったけど。そういえばさ、めっちゃ昔、麻布十番のお祭り行ったよね。
若井 行った! なにしたっけ。冷やしきゅうり食べた。あとは記憶ないね。
芹澤 ない。冷やしきゅうりだけ食べて帰った? 待ち合わせもしたっけ……?
若井 駅で待ち合わせした気がする。
芹澤 じゃあ友希ちゃんとお祭りに行く、というイベントだったんだね。昔のブログを探っていただければ、詳細が書いてあるかもしれません(笑)。
山北 ブログ? アメブロ? すごい、7~8年前※じゃない?
※2015年8月23日「ゆうき*昨日と24時間テレビ」と8月25日「そんなせりびじ、ゆう」
◆「こんなに聞こえるんだっけ?」と驚いた声援
――最後に、今作のBlu-ray/DVDには三郷のライブのバックステージ映像が収録されます。以前、そのライブレポートをでも振り返ってもらいましたが、あらためて。声出し解禁を待ちわびたファンの熱量と、それに応えるメンバーのエネルギーの応酬が凄まじい盛り上がりでしたね。
若井 私は「幻想曲WONDERLAND」のイントロで、コールをコロナ前ぶりに聞いて、涙がちょちょぎれそうになりましたね。「あっぱれ!馬鹿騒ぎ」では、イヤモニをしてるのに、客席からの声がうっすら聞こえてきて。え、こんなに聞こえるんだっけ?って驚いたな~。
山北 普段はMCの内容とかぜんぜん考えないけど、客席から声が返ってくるライブが久しぶりだったから、何話そうかなって謎の不安が少しありました。いろいろ考えてたので、楽しんでたっていうより、初日はちゃんとやらなきゃって感覚が強かったかな。ただ、そんななかでも、自己紹介で「あなたが好きなのは、姫さま、女王様、いいえ…さきさま―!」ってみんなの声が聞こえた喜びは大きかったです。
◆曲中に涙ぐんでいたとの指摘に……
芹澤 私はやっぱり「§Rainbow」で、「ゆうちゃーん!」って名前を呼んでもらえたとき、うわ~、これがライブだー!って思いましたね。もちろんコロナ禍のライブも楽しかったけど、ちょっと物足りない、完成してない感じがあったので。久々に、これがi☆Risのライブだ、楽しい、このために続けてるんだよなーって感じでした。
――曲中に涙ぐんで、メンバーから指摘される場面もありました。
若井 お、泣いてる?って。
芹澤 いや、ぜんぜんカラカラでしたよ?
山北 あれは泣いてたね。
芹澤 まあ、感動しますよ、そりゃあ。久々に。
――そのバックステージ映像が収録されていると。
若井 珍しい。
芹澤 本当にバタバタしてるよね、バックステージは……。
――オフショット映像が相当いい感じとのことなので、ぜひ見てほしいですね。本日はありがとうございました!
【i☆Risプロフィール】
2012年7月、エイベックスと声優事務所81プロデュースがタッグを組んで開催した「アニソン・ヴォーカルオーディション」の合格者6名で結成。同年の11月にデビュー。’14年からテレビアニメ『プリパラ』でメンバー全員が声優としてメインキャラクターを演じ、主題歌も担当する。結成4年目の2016年、日本武道館でライブを成功させた。’21年3月にメンバーの澁谷梓希が卒業し、4月からは5人での活動を開始。’24年には劇場版アニメ『i☆Ris the Movie -Full Energy!!-』が公開予定。23枚目となるシングル「Let you know!/あっぱれ!馬鹿騒ぎ」は3形態で発売中
取材・文/森ユースケ