「花はどうしていろんな色なの?」4歳の質問に専門家が答えます【それってなんなん?相談所】

Kindai Picks

こんにちは! キシダチカです。



まあまあの強風に吹かれながら失礼します。

今日はとある依頼を受けて、近畿大学 奈良キャンパスにやってきました。

というのも、近大の先生や学生がみんなの悩みや疑問に答えてくれる「近大それってなんなん?相談所」の調査員として呼ばれたんです。

これまでにも「四つ葉のクローバーは、どうして四つ葉なの?」や「あざは、なぜいろんな色がある?」といった疑問に答えてきましたが、今回の相談内容は……?



ということで、さっそく相談者と合流しましょう!

お~~~~~~~~い!



相談者:……。

不安そうな表情を浮かべる相談者。草陰からカラフル人間が出てきたらそうなるよね。


キシダチカ


こんにちは! お名前と年齢を教えてください。




おうが君


すだ おうがです。4歳です。




キシダチカ


おうが君、今日はよろしくね!



話してくれてありがとう……。

4歳の少年が見つけた不思議とは





おうが君


あんな、おうが君な、ノートに聞きたいこと書いてきてんで。




キシダチカ


おお! 見せて見せて。




「なぜ花はいろいろな色になるのですか?」

確かに……なぜ……?
生まれてこのかた、花の美しさに感動しても色について疑問を抱いたことないぞ……!?


キシダチカ


おうが君はいつ、それを不思議に思ったん?




おうが君


幼稚園で、花に水やりしてるとき!





キシダチカ


同じ種類の花でもいろんな色があったり不思議やんなあ。じゃあ、一緒にお花の色のこと、専門の先生に聞きにいこっか!




おうが君


(コクリ)



ということで、本日、おうが君の疑問に答えてくれるのは、農学部 農業生産科学科山崎彬先生です!


見よ、背後に生い茂る植物たちを!


キシダチカ


よろしくお願いします!




おうが君


よろしくお願いします!




山崎先生


こちらこそ、 よろしくね。


山崎 彬(やまざき あきら)先生

近畿大学 農学部 農業生産科学科 博士(農学)
専門:蔬菜花卉(そさいかき)園芸学

花卉や蔬菜などの園芸作物の育種や栽培に関する研究を行なっています。特に、植物の栽培環境への応答に焦点を当てた研究をしています。

教員情報詳細


花から色を取り出す実験で、色素の違いを見る



キシダチカ


おうが君、先生に聞いてみたいことってなんやったっけ?




おうが君


なぜ花はいろいろな色になるのですか?





山崎先生


なるほど。おうが君はさ、どんなお花が好き?




おうが君


ヒマワリ!




山崎先生


ヒマワリが黄色いのは、カロテノイドっていう色素が花びらの中に入っていて、それが黄色にみえる色のもとなんだよ。




おうが君


カロテ……?




キシダチカ


あ! ニンジンとかにも入ってるやつじゃない? えーっと、なんやったかな。あれはカロテンか。カロテンはカロテノイドと関係あるんですか?




山崎先生


するどいですね! カロテンはカロテノイドの仲間です。他にもカロテノイドの仲間はいて……。これ、なにか分かる?





おうが君


分かんない。




山崎先生


シネンセ種という品種の唐辛子で、ハバネロやギネス記録に認定されるほど辛いキャロライナ・リーパーの仲間なんです。この赤色もカロテノイド。




キシダチカ


黄色や赤の暖色系に多い色素なんですか?




山崎先生


そうですね。トマトのリコピンもカロテノイドです。



カロテノイドは動植物に広く存在する、黄、橙、赤色などを示す天然色素。フラミンゴやロブスターの色もカロテノイド色素による着色なんだって。


山崎先生


他に好きなお花ある?




おうが君


うん。スミレ。




山崎先生


じゃあ、なんでスミレは紫色だと思う?




おうが君


なんで???




山崎先生


スミレの紫色は、アントシアニンっていう色素なんだよ。




おうが君


あ、知ってる。




山崎先生


へー! すごいね。どんなところで聞いたの?




おうが君


幼稚園!





キシダチカ


幼稚園でアントシアニンって単語聞くことある!? 進んでるなあ~。




おうが君


おうが君な、紫色好きやねん。




山崎先生


じゃあ、花からおうが君の好きな色を取り出す実験をしてみようか。色水遊びってやったことある?




おうが君


ないー。




山崎先生


ペチュニアの花びらでやってみよう。ナスの仲間なんだけど。





山崎先生


これにお水を加えて……。





山崎先生


上から押しつぶしてみて。




トントントントン


おうが君


あっ!





山崎先生


なに色が出てきた?




おうが君


紫色が出てきた!




山崎先生


ペチュニアに含まれるアントシアニンは水に溶ける色素。だから、こうすると色が出てくるんだよ。見やすくチューブに入れてみよっか。





おうが君


おお……。




キシダチカ


きれい~!



興味津々のおうが君




おうが君


左は紫。右は黄色。




山崎先生


そう。これは黄色のお花から採ったもの。紫はアントシアニン。黄色はカロテノイド。それぞれの色素、つまり、色のもとの種類が違うから、花の色はたくさんあるんだよ。




おうが君


ふんふん。




山崎先生


じゃあ、この色水をここから違う色に変えることってできると思う?




おうが君


できる! もっと押しつぶす!





おうが君


あれ……紫のままだ。




山崎先生


ちょっと濃くなったけど、さっきとほとんど一緒だねえ。じゃあ、今から魔法の粉を入れるから振ってみてくれる?




キシダチカ


魔法の粉……?!!





ふりふり


おうが君


あっ!




ピンク色になった!!!


キシダチカ


なんでなんで!?




山崎先生


もうひとつ作ってみよう。次は違う粉を入れます。なに色になるかな?




おうが君


分かんない。




キシダチカ


私は青色になると思います!




おうが君


おうが君も青色~!




山崎先生


さあ、どうなるかな。振ってみて!



ふりふりふり


おうが君


!!!





おうが君


青色になった!




山崎先生


大正解!





おうが君


おうが君やっぱり、青が一番好き。




キシダチカ


今日の洋服も青色やもんな。先生、色水に加えた魔法の粉って、一体なんですか……?




山崎先生


ピンク色になったチューブには、クエン酸、青色になったチューブには重曹を入れました。同じアントシアニンでも、pH(ペーハー)の値の違いで色が変わるんです。




キシダチカ


ぺー? はー?




山崎先生


pHというのは、酸性・中性・アルカリ性を表す尺度のことです。pH7を中性とし、それ未満だと酸性、それより大きければアルカリ性としています。




キシダチカ


あ! 小学生の時にリトマス紙で実験したやつか!




山崎先生


それです、それです。



下が、アントシアニンの紫が抽出された色水。真ん中が、クエン酸の溶液(酸性)を加えることでピンク色に変化したもの。上が、重曹の溶液(アルカリ性)を加えることで青色に変化したもの。


山崎先生


おうが君、梅干しはなに色かな?




おうが君


赤!




山崎先生


あれは今の実験と同じことが起きてて、梅に含まれるクエン酸と、赤しそに含まれるアントシアニンが反応して赤くなってるんだよ。




おうが君


ええ~。




キシダチカ


化学反応が起こって酸性になった結果、赤色に染まってたんですね。




キシダチカ


さっきのチューブを見て、アジサイの色合いみたいだな~って思ったんですけど、もしかして、アジサイの色もpHが関係してる……?




山崎先生


その通り。品種による色の差もありますが、アジサイは育った土壌の環境で花びらの色が変わるんです。土にはアルミニウムが含まれているんですが、酸性の土だとアルミニウムが溶け出してアジサイのアントシアニンと結びつき、青くなる。逆に、アルカリ性の土だとアルミニウムが溶けないので、ピンク色のアジサイに育ちます。



白いアジサイはアントシアニンが含まれないので土壌による色の変化が起きない。ちなみに、私たちが観賞している部分は花びらではなく萼片(がくへん)。


山崎先生


雨の多い日本では、酸性雨の影響で土壌が酸性に傾いているので、ピンク色のアジサイを咲かせたいときは消石灰や苦土石灰(くどせっかい)というアルカリ性の高い石灰を混ぜて土壌のpHをアルカリ性に傾ける必要があります。




キシダチカ


なるほど! 土壌の管理次第で、アジサイの花の色をある程度コントロールすることができるんですね。



花はどうして色がついている? 生き残るための虫へのアピール



キシダチカ


そもそも、なんで花には色や模様があるんですか? 生き物だと彩度の高い色は警告色の役割があると聞いたんですが……。



関連記事:フグは自分の毒で死なないの?毒を持つ生物が派手なのはなぜ?毒にまつわる謎を専門家に聞いてみた


山崎先生


色があるのは生存のためですね。その意味では、警告色も生存のためといえます。でも、花においては、受粉を手伝ってくれる虫たちに向けてアピールするための戦略なんです。面白い例が、ランタナの花の色ですね。





おうが君


いろんな色がある!




山崎先生


そうなんです。ランタナは受粉によって花の色が変わります。花びらの色素がカロテノイドの黄色からアントシアニンの赤色に変化するんですよ。




キシダチカ


二度も楽しめるなんてお得~! でもなんで??




山崎先生


一説によると、未受粉のランタナは虫が好む黄色のカロテノイドが多く含まれますが、受粉を終えたランタナはアントシアニンを増やすことで花びらの色を赤に変え、効率よく虫に未受粉の花の場所を知らせているといわれています。



虫は黄色い花を好む傾向があり、受粉後はカロテノイドは分解されるんだとか。他にも、オレンジ→赤だったり、薄い黄色→白だったり、変化は様々。


キシダチカ


めちゃくちゃ賢いな……。あ、でも淡い色の花もあるじゃないですか。派手な色のほうが目立つから、虫をおびき寄せたい花としては淡い色って不利じゃないですか?




山崎先生


虫の種類によって花の好みもバラバラなので、鮮やか=有利というわけでもないんです。それに、人間と虫では色の見え方が違うんですよ。虫の中には紫外線を通して花を見てるものもいるんです。




キシダチカ


紫外線が見えるんですか!? なんのために?




山崎先生


花粉や蜜のある花を認識するためです。花粉は紫外線を吸収するので、花粉や蜜のある場所がくっきり見えるんですよ。また、人間には見えないような模様も、紫外線が見える虫には見ることができるので、花を区別するのに役立っていると考えられているんです。



イメージです。実際は、種類や個体によって見え方が変わります。


キシダチカ


へえ~! 虫にとっては花粉や蜜は大事な食料源ですもんね。私も紫外線が見えたら日焼け対策もっと頑張れるのになあ。



花壇の花と、野草の花の違い。人が感じる「きれい」が花の色を作る



おうが君


ねえ! もっと実験したい!!




山崎先生


あはは、じゃあ、もっといろんな花で実験しよう!



すっかり色水の実験にハマったおうが君。キャンパス内の中庭で、実験したいお花を探すことにしました。




おうが君


ここ、咲いてる!




キシダチカ


小さいのがいっぱいあるね。ここら辺は野草かなあ。





先生とジャスミンの香りを楽しむおうが君。


山崎先生


向こうにも、僕が植えたお花があるから行こっか。





おうが君


おうが君、この花にする!



花壇の花は勝手に摘んじゃダメですが、こちらは山崎先生が用意したものなのでご安心を。


キシダチカ


見せて~。




おうが君が選んだのは、濃いオレンジ色のマリーゴールド。私は小さな花に心惹かれたので野草のポピーにしました。マリーゴールドのオレンジとポピーのオレンジにどんな違いが出るのか楽しみ!


先程の実験にも使ったペチュニア、マリーゴールド、クワガタソウ、ハルジオン、ポピー。

おうが君も待ちきれない様子で、足早に研究室へ戻ります。




おうが君


こっちやで!





キシダチカ


もう完全に自分の研究室やん!




山崎先生


あはは(笑)。じゃあ、さっきと同じ方法で色水を作ってみましょう! まずはマリーゴールドからいきましょうか。




おうが君


うん!



トントントントン




キシダチカ


色出てきた!




おうが君


黄色になった~!




山崎先生


匂いもしっかりしてますね。





キシダチカ


なあなあ、私が摘んできたポピーの色水も作ってくれへん? オレンジというよりサーモンピンクやけど、比べてみたい!




おうが君


うん、いいよ。



真剣な眼差しは研究者そのもの。

そしてできたのがこちら。




キシダチカ


なんか……左、薄くない? マリーゴールドの色水はウェルチのオレンジジュースくらい濃いのに。




おうが君


ちょっとだけ赤いけど、薄い。




キシダチカ


ポピーは花びらが薄っぺらいから、色素の量が少ないんですか?




山崎先生


多少関係はあると思うけど、花の色素って花びらの表面にしか貯められないことが多いんです。なので、必ずしも分厚さが起因するわけではなくて。それよりも、細胞の中にどれだけ色素を貯められるかの違いが大きいと思います。




キシダチカ


なるほどな~。




山崎先生


色素の濃淡の理由は花によって異なるので、一概にはいえないんですけどね。でも、このポピーとマリーゴールドの話だけでいうと、人間が選んできたかどうかというのも、理由かもしれません。





キシダチカ


ど、どういうことですか……?




山崎先生


実はこのマリーゴールドは、僕がお店で買ってきて、花壇に植えたものなんです。一方、このポピーは、どこかから種が飛んできて、大学内で育っているもの。

僕たち人間は、ガーデニングのために植える花や、花束用の切り花を選ぶとき、目立つものや、きれいだなと思うものを選びますよね。だから売る側も、自然に咲く花からきれいな色のものを摘んで繁殖させたり、品種改良をしていて、それらが店頭に並んでいる。そうやって長い年月をかけて人間が手を加えてきたから、鮮やかな色の花になったものと、野生で育った淡い色の花があるんです。




キシダチカ


そうか、だから花壇のマリーゴールドは鮮やかで、野草のポピーは薄かったのか……!





後日、花の色に注目して外を歩いてみると一目瞭然。左は花壇のサツキツツジ、右は野草のヒメジョオン。


山崎先生


おうが君と実験に使ったこのペチュニアも、もともとはこんな色じゃなかったようです。この花は今から250年くらい前に、フランスの研究者がウルグアイで発見して、ヨーロッパに広がったんだけど、その頃はそんなに鮮やかじゃなかったらしくて。でも、稀に鮮やかな色が咲いて、そういうものを交配させて、新しい色を作っていったんですよ。




キシダチカ


そんなに前から品種改良が行われていたんですか!? やっぱり、人が観賞のために好む色は野生に生き残るための花の色じゃなくって、鮮やかなほうなんですね。





キシダチカ


あれ? でも、サクラは人の手が加わっているはずなのに、薄ピンク色ですよね? あの淡さが儚くて良いんですけども。




山崎先生


サクラも確かに淡い色ですが、人に選ばれて今の色があるんじゃないかな。サクラは、リンゴやイチゴと同じバラ科なんですが、バラ科は白い花が多いんです。その中で、偶然ピンク色になったサクラをきれいだなと思う人がいて、残っていったんだと思います。




キシダチカ


なるほどなあ~。おうが君、分かったかなあ? おうが君がヒマワリやスミレをきれいやなーって思うみたいに、昔の人も花を見てきれいって思ってたから、こうして今、カラフルな花がいっぱいあるんやって。




おうが君


うん、分かる。おうがくん、おばあちゃんちにな、きれいなお花選んで、持っていってるもん。




キシダチカ


素敵なエピソードで締めてくれるやん……。



まとめ



キシダチカ


おうが君、今日はどうだったかな? 何か伝えたいことはある?




おうが君


あんな、もう一個質問あるねん。




山崎先生


どうしたの?




おうが君


青色の水を持ってかえってもいいですか?




山崎先生


もちろん!




キシダチカ


なにに使うの~?




おうが君


幼稚園に持っていく。それで、みんなにも見せるねん。




山崎先生


いいね! またお友達の反応教えてね。




おうが君


うん!!




大学の授業より長い時間、取材に参加してくれたおうが君。本当にお疲れ様!

まさか、花を見て「きれいだなあ」と思う人の気持ちが、長い時を経て、花の色の鮮やかさに繋がっていたなんて……! 私もおうが君の真似をして、誰かにお花を贈ってみようかな。

みなさんも、ふと気になったことがあれば、ぜひ「近大それってなんなん?相談所」までお寄せください。お待ちしてま~~す!!


この記事を書いた人

キシダチカ

ライター兼漫画家。派手なものが大好きな引きこもり。最近ハマっているものは大衆演劇。TikTokはお絵描きASMRを投稿しています!

写真:大越はじめ
編集:人間編集部

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「外来種って悪者なの?」「お餅ってどうして伸びるの?」そんな「?」を大募集。素朴な疑問も、思わず頭をひねってしまう難題も、近大の先生や学生が一緒になって考えます。「子どもの自由研究に役立てたい」「あの研究室に潜入したい!」「◯◯について、専門家の意見を聞きたい」などなど、スタイルは不問。まずは一度、私たちに託してみてください。その道を究めたプロが、真剣かつ丁寧にお答えします。

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