市川猿之助さんの両親の死因とされている「向精神薬中毒」とは?

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PROFILE
小竹 武 (コタケ タケシ)
近畿大学 薬学部 医療薬学科 教授
専門:医療薬剤学
教員情報詳細



――向精神薬中毒とはどのようなものでしょうか?
小竹:広義的に、睡眠導入のような不眠に対して使用する薬や、統合失調症などの精神疾患に関しての治療薬が向精神薬と呼ばれています。うつ病、てんかん、躁鬱病、双極性障害、不眠症といったような精神疾患などに対応する薬剤は、全て向精神薬として分類されます。その過剰摂取による症状を向精神薬中毒と言います。

――精神・神経疾患は、中枢神経(脳)の病気と言われていますが、向精神薬は中枢神経などに作用する薬ということでしょうか?
小竹:中枢に関するさまざまな受容体や、神経の伝達物質に関わる作用を持つ薬全般が向精神薬と呼ばれます。睡眠薬や抗不安剤は、一般的に不眠や不安性の高い人などに使われます。

――今回、猿之助さんは意識がもうろうとした状態で、両親は倒れている状態で発見され、その後死亡が確認されたとのことです。健康な成人と比較して、高齢者への薬の影響は大きいのでしょうか?
小竹:はい。腎機能や肝機能は、年齢とともに低下してきます。そのため薬の代謝や排泄に対する能力が低下しており、高齢者や小児などの場合、少量の服薬でも中毒に至る可能性や、飲む量が同じでも症状が重く出ることがあります。



――猿之助さんは「睡眠薬を飲んだ」と話されているとのことです。睡眠薬にはどのようなものがあるのでしょうか?
小竹:睡眠導入剤には、バルビツレート系、ベンゾジアゼピン系があり、高齢者には安全なベンゾジアゼピン系を処方するのが一般的です。バルビツレート系はてんかん治療や不眠に使われていたこともありますが、中毒性が強く、少量でも呼吸抑制などの作用があり、習慣性が高いことから、現在はあまり使われていません。

――睡眠薬、睡眠導入剤、睡眠改善薬はどのような違いがあるのでしょうか?
小竹:睡眠導入を助ける効能と、覚醒するのを抑える効能などの作用があり、これら全てを睡眠導入剤、睡眠改善薬と呼んでいます。作用が多岐にわたるものが出てきており、一般的にはそれらを「睡眠薬」と総称されています。

――睡眠薬と呼ばれるものの中にも、強い薬や安全な薬など、様々な種類があるのでしょうか?
小竹:医師から処方される薬も含めて、睡眠導入薬として入手可能なものの中では、安全性の高いものしかないのが現状です。ただ、過剰に摂取してしまうと、今回の両親のケースのように死に至ってしまう可能性もあります。
市販薬や医師から処方される薬には、用法・用量、効能・効果、副作用などが使用上の注意に記載されています。薬による想定外の事故を防止するためには、これらを必ず確認し、適切に服用することが大切です。

当記事はKindai Picksの提供記事です。

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