黒羽麻璃央が明かす2.5次元舞台への思い、新境地を開拓した役との出会いとは

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「老けることが今から楽しみ」。20代最後の年を迎えた黒羽麻璃央は、歳を重ねることを歓迎している。そして30代突入の2023年が「本物しか残らない」実力の世界の幕開けだと自覚しながら。『新聞記者』『余命10年』で知られる藤井道人が企画・プロデュースを担った映画『生きててごめんなさい』(2月3日よりシネ・リーブル池袋、ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺ほかにて全国順次公開)は、その幕開けに相応しい作品になった。



始まりは「キラキラしていない黒羽君を見てみたい」という藤井からの期待。藤井とはテレビドラマ『向かいのバズる家族』(2019)以来の付き合いで「いつか一緒に映画が出来たらいいね」という言葉が今回実現した形だ。藤井は企画・プロデュースを担い、藤井が絶大な信頼を寄せる監督・山口健人がメガフォンを取った。

黒羽が演じたのは、小さな出版社で働く園田修一。小説家としての夢を諦めきれない修一は、同棲中の恋人・清川莉奈(穂志もえか)との関係性にひずみを感じていく。社会に認められていく莉奈に嫉妬を覚え、夢と現実のはざまで揺れ動く。

ごく当たり前の人間に扮した黒羽は「普通の人間を演じるのが一番難しいと実感しました。癖があったり、特徴があったりする方がキャラクターとして掴みやすい。撮影では全シーン全カットがトライ&エラーの連続でした。なかなかOKが出ず『これでもダメか…』と心が折れそうになる時もありましたが、自分を追い込んでこそ生まれるものもある。そのおかげで良い作品ができたと思います」と新境地開拓を口にする。

クランクアップ時にはいまだかつてない解放感を得たという。「ハッピーな物語ではなく、色々なものをどんどん背負っていくような役柄でもありましたから、演じている最中はあまり楽しくなかった」と笑い飛ばしながらも「クランクアップしたときにようやく自分の中から修一の悩みが解放される感覚がありました。涙すら出ず、完全に燃え尽きていました」と全力投球。そして報われる思いも。「いざ完成した作品を見たときに、撮影の日々の充実を感じました。今は早くたくさんの人に観ていただきたいという気持ちがある」と胸を張っている。

2023年7月に30歳を迎える。年齢ゆえに黒羽を慕う後輩も増えてきた。そんな年下の俳優から刺激を受けることもある。「2.5次元舞台で活躍する今の若い人たちは歌もダンスも表現もレベルが高い。どうしてこの人たちが正当に評価されないのだろうか?と不思議です。いつか『刀剣乱舞』のような舞台が著名な演劇賞を受賞できるよう、周囲の目も変わればいいと思います。そのためにも2.5次元出身の自分がもっと他のフィールドで活躍をして結果を残していかなければ…」と後進のために先頭に立つ構えだ。

後輩たちには「願望は口に出して言うこと」をアドバイスとして贈る。黒羽自身「帝国劇場に立ちたい」「始球式を務めたい」と自分の夢を口に出し、実現させてきたからだ。「思ったことは口に出した方がいい。言霊はあるはずだし、自分のケツを叩く意味でも必要。口に出して人前で言ったからこそ、その言葉に対する責任も生まれる。口に出した時点で退路を断っているわけですからね」と実感を込める。

同時にその後輩たちはライバルにもなる。「30代とは、自分よりも若い人たちが出てくることによって自分の存在意義が薄れていくタイミングでもあると思う。ここからは実力勝負の本物しか残らない世界」と兜の緒を締める。その一方で「僕は老いることに対して興奮を覚えるタイプで、老けることが楽しみです。今の30代40代の男性を見ていると楽しそうなので、自分も早くそこに行きたい」と期待を抱いている。憧れは所ジョージさんや木梨憲武さんで「僕も自由で子供心を忘れないイケてるおじさんになりたい」と未来の方向性はすでに決まっている。

文・取材:石井隼人

写真:NANAMI

ヘアメイク:有村美咲

スタイリスト:ホカリキュウ

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