手取り年収440万円の40代男性、“FIRE達成”しても仕事を辞めない理由

日刊SPA!

―[ライオン兄さん連載コラム「米国株FIREの流儀」]―

株式会社バイアンドホールド 代表取締役社長の山口貴大と申します。YouTubeやSNSでは「ライオン兄さん」名義でお金にまつわる情報を発信しておりますので、すでに私のことをご存知の方は、そちらのほうが馴染みがあるかもしれません。

私は現在、「Financial Free College」(FFC)という金融と起業の総合マネースクールを経営しております。受講生の中に、40代前半でFIRE達成できるポートフォリオを完成させた会社員の男性(Hさん)がいらっしゃいます。

FIREと聞けば、“もともとお金持ち”しか実現できないと思われがちですが、Hさんは手取り年収440万円です。一般的な所得にもかかわらず、いかにして、後にFIREを達成したのでしょうか。じつは、成功する人たちには共通しているマインドがあります。

◆学生時代から「学ぶこと自体が好きだった」

Hさんは、学生時代から「学ぶこと自体が好きだった」と言います。電気工学を専攻して大学院まで進学。卒業後は、ソフトウェア開発のメーカーに就職しました。勤めていた事業部がM&Aでアメリカの会社に売却されましたが、仕事内容や職場の環境は一切変わらなかったそうです。

「もともと物欲はなく無駄遣いもしなかったので、気がついたらお金が貯まっていました。とくに頑張って節約することもありませんでしたね」

“頑張らなくてもお金が貯まる”のは立派な才能だと私は思いました。そんな勤勉なHさんに転機が訪れます。

◆人生初の投資がリーマンショックで大失敗

「それまで投資には一切手を出していませんでしたが、ただ貯金しているよりも投資をして運用益を出した方が良いと考え、2007年頃に投資信託を購入しました。しかし、2008年~2009年にかけてリーマンショックが起きて、世界的に金融資産が暴落しました」

Hさんには当時、金融知識がありませんでした。結果、人生初の投資経験は損切りに終わってしまいます。その一方で、“幸運”もありました。

「付き合っていた彼女と結婚することになったのです。偶然ですが、彼女も同時期に投資信託を購入し、同じようにリーマンショックで損切りするハメになっていたので共感しました」

◆会社の収入だけでは不安…

投資で失敗したHさんは、「他の手段で収入アップをさせる方法はないものか?」と模索します。そして、副業セミナーに参加するようになったそうです。

「会社員の収入1本だけという現状に不安がありました。それで、自己投資と思って副業系のコンテンツを購入したのですが、結局、自己投資額は回収できませんでした」

とはいえ、この件についてHさんは「僕のやり方が悪かったのです」と、コンテンツの批判は一切せず、自分について反省しています。

◆「成功する人」にじつは共通している特徴

私は、これまでにたくさんの「成功者」の話を聞いてきましたが、じつは、彼らには共通点があります。それは、失敗したときに、他責ではなく、自責で語るということ。

今回のインタビューではとくに誘導していませんが、Hさんは失敗の責任を他人になすりつけることはしなかったのが印象深かったです。

そして、この副業コンテンツに自己投資した体験が、後に大きなリターンとなって返ってくることになります。

◆結婚、そして2度目の転機「体調不良で仕事をしばらく休むことに」

話を戻しますが、Hさんが結婚したのは経済的にもメリットが大きかったそうです。

「妻も正社員として勤めており、手取り年収は420万円。私同様に無駄遣いはしないタイプでした。そのおかげで、貯金額は年々増加。結婚してから12年、以前の貯金と合わせると、気がつけば6000万円ぐらい貯金が貯まっていました。運用益を出せばFIRE達成できる金額、少なくともセミリタイアはできるぐらいまで貯金額は増えていたんです」

そんなHさんに2回目の転機が訪れます。2021年5月頃、体調不良で仕事をしばらく休むことになります。

「せっかくの機会なので、YouTubeで資産運用について学ぶようになりました。そのうち、インデックス投資という手法を知り、“これは自分もやった方が良い!”と確信。ただ、過去にはリーマンショックで損失を出した経験もあったので、インデックス投資に関する書籍やブログを読んで勉強しました」

◆過去の悪夢が脳裏にチラつく…

最低限の知識を身に付けて、まずは「つみたてNISA」の非課税枠を利用して、インデックス投資をスタートします。しかしセミリタイアするためには、さらなる入金が必要と考えたHさん。特定口座で全世界株式インデックスファンドに約4000万円を投資しました。

それは2021年10月頃の話。当時は、順調に株高になっている相場の後半に差し掛かっていました。

「4000万円を投資した後、冷静になって考えてみました。4000万円のうちの10%でもマイナスになれば、400万円の損失を出すことになります。ここで再び過去のリーマンショックの悪夢が脳裏にチラつくようになりました。

インデックス投資は長期保有すれば報われる可能性が高いとはいえ、自分は大金を投資しているにもかかわらず、知識が足りなかった。チャートの読み方も分からず、ロウソク足や移動平均線が何を意味しているかもチンプンカンプン。

米国の経済指標やFRB(連邦準備制度理事会)の金融政策についても、ニュースで報道されても何を意味しているか、まったく理解できない状況で。YouTubeやブログ、書籍などでコスパ良く投資の勉強をしてきましたが、自己流では限界を感じるようになりました」

そんなとき、私(ライオン兄さん)のYouTubeライブでFFCを知り、マンツーマンのコンサルティングがあることから入会を決意したそうです。

「資産運用の講座(40万円)で金融知識が身に付くのであれば、コスパの良い自己投資かなと。4000万円のうちのたった1%を自己投資に回して、年間4%のリターンをコンスタントに得られたらROI(投資利益率)が高いと判断したんです」

後ほど解説しますが、ROIで判断する考え方こそ、成功者が持っている“金持ちマインド”なのです。

◆資産7000万円のポートフォリオ

お金持ちでも、講座やコンサルティングに自己投資した経験がないと、“学び”にお金を使うことに抵抗がある方もいらっしゃいます。その点、Hさんは過去に副業コンテンツを購入した経験があり、“自己投資には青天井でお金を使う!”と決めていたそうです。

入会後はコンサルタントに相談しながら、さらに7000万円ほど株式に投資しました。ただし、以前から保有していた全世界株式インデックスファンドは全て利益確定し、思い切って米国株ETFのVTIに乗り換えをしました。円建てのインデックスファンドは少額からの投資には向いているものの、分配金が出ないデメリットがあります。運用額が大きく、FIREを目標としていたHさんにとっては株式を売却しないときでも分配金がもらえるETFでの運用の方が適しているとアドバイスを受けたのです。

2022年2月、本格的に資産運用を始めてから8ヶ月間かけて7000万円のポートフォリオを完成させました。

◆FIREを達成した途端に労働収入をゼロにするのは危険

こうしてFIREできるポートフォリオが完成したHさんですが、現在も会社員の仕事を継続しているそうです。

「FIREを達成した途端に労働収入をゼロにするのは危険だと教わったので」

その理由を説明していきます。FIREの鉄則「4%ルール」を思い出してください。

資産の運用益で生活するFIREは、自分の年間生活費の25倍を米国株インデックスで築き、その資産から毎年4%ずつ売却しても築いた資産は半永久的に減らない、という考え方です。

たとえば、1億円の資産でFIREを達成した場合、S&P500などの米国株指数は、長期では年平均7%の利回りなので1年後には1億700万円になっていることが期待できます。そのうち4%(428万円)を使っても大丈夫、というものです。

しかしながら、株式相場が上昇しているタイミングには資産の切り売りができますが、2022年のように株式が下落しているタイミングで切り売りすると、FIREに失敗してしまいます。

株式相場は上下動しながら、長期保有していると、徐々に含み益のバッファが大きくなってきます。つまり、FIREした直後は含み益のバッファが少ない。そのため、労働収入は減らしても構いませんが、ゼロにはせずに、“セミリタイア”的に働くのがベターです。

◆SNSで「FIRE卒業」がトレンド入り…

FFCの受講生では、完全FIREを達成する資産を持っていても、多少の仕事を継続している方が80%くらい、まったく仕事をしていない方が20%くらいです。

巷ではFIREがブームになる一方で、SNSでは「FIRE卒業」という言葉もトレンド入りしました。

FIREを達成したものの、その後の生き方について教育を受けていないと、目標の資産額に到達した途端に仕事を辞めてしまい、相場が下落したタイミングで再就職する人もいらっしゃるそうです。

FIRE達成の資産額に到達したならば、「ライスワーク(生活のための仕事)」「ストレスがある仕事」は辞めてください。

その代わりに、「やりたい仕事」「楽しい仕事」「やり甲斐がある仕事」をしましょう。資産の含み益がじゅうぶんに乗り切るまでは、細々でいいので仕事は継続すること。

そうやって株式をホールドしているうちに、資産の含み益が増えたり、配当株の場合は増配によりインカムゲインの額が大きくなるので、徐々に仕事量を減らしていき、気がつけばまったく働かなくてもいい状態になります。

HさんもFIREできるポートフォリオが完成しましたが、会社は辞めずに今後数年は働くそうです。現在の目標は資産額1億円、その後は夫婦で海外移住も視野に入れているのだとか。

◆年間生活費300万円「固定費を抑えて貯蓄率を上げる」

Hさん本人は、自分がうまくいった理由についてこう振り返ります。

「とにかく無駄なお金を使わなかったことです。地方住まいなので車は所有していますが、軽自動車に乗っていますし、趣味はバードウォッチング、ジョギング、海や山に遊びに行くことなので、お金はかかりません。

年間生活費は夫婦で300万円程度。固定費を抑えて貯蓄率を上げることが、その後の生活をイージーにさせるコツだと思いますね」

年間生活費300万円と聞くと、“贅沢ができなくてぜんぜん楽しそうじゃない!”と思う方もいるはずですが、けっしてHさん夫婦は我慢などしていません。趣味で毎日を楽しく過ごしているそうなので、これも1つの才能だと思います。

◆自己投資の大切さ「失敗しても修正すればいいだけ」

そんなHさんから、最後に読者の皆様にアドバイスを頂きました。

「人それぞれ才能や能力は違うので、自分にあった最適な方法を探すために行動することが大切です。もしも行動して失敗しても修正すればいいだけ。そうやって行動と修正を繰り返すうちに、自分の方法(スタイル)に辿り着くと思います。

その一方で“学びにお金と時間を使うこと”も大切です。私は20代の学生の頃から有料、無料を問わず、セミナーに参加するなどして学びに自己投資してきました。副業コンテンツを購入して回収できなかった経験もありますが、失敗しても修正すればいいと思っているので、新たな学びの場としてFFCにも躊躇なく飛び込むことができました。結果として、今までの自己投資額を全て回収できたので」

◆お金持ちマインド「リターンで判断する」

私の連載コラム「米国株FIREの流儀」では、事業で成功したお金持ち経営者のエピソードなども紹介しましたが、Hさんのように一般的な年収でも後にFIRE達成した方もいらっしゃいます。

FIRE達成者の共通点は、“学びにお金を使う”ことです。お金持ちマインドとは、「お金を使うときや投資するときに金額だけで選ばずにリターン(ROI)で判断する」という考え方です。

たとえば、3万円の商品Aと、300万円の商品Bがあった場合、貧乏マインドの人は、単純に金額が安いAを選びます。しかし、お金持ちマインドの人は300万円でも「将来的に900万円になる可能性が高い」と判断すればBを選ぶように、目先の出費よりも将来的な期待値で判断します。

スーパーで買い物をするときも金額が安くても添加物が多い商品を選ぶのか、金額が高くてもオーガニック商品を選ぶのか。お金はモノやサービスと交換する券なので、目の前の金額だけではなく、お金を出したあとに得られる価値(リターン)で選ぶのがお金持ちマインドです。

この記事を読んでいる貴方が現在、年収や資産が少なくても問題ありません。自分の考え方を「お金持ちマインド」に変えるだけで、未来の貴方はお金持ちになってFIREを達成しているでしょう。

私は年収300万円台で年間300日労働をしていた当時から、書籍やセミナーを通してお金持ちから学び、お金持ちマインドを持っていました。このマインドを持ち続けたことが、30代でFIREを達成し、ギネス世界記録を取得し、書籍8万部のベストセラーやYouTube登録者数17万人、そしてFFCで多くのFIRE達成者を輩出するという輝かしい現在に繋がりました。

学びにお金を使う! そして得たリターンを自分に再投資する! 自分自身を複利運用することで、人として成長し、人生の夢を達成して頂ければ幸いです。

<取材・文/山口貴大(ライオン兄さん)>

―[ライオン兄さん連載コラム「米国株FIREの流儀」]―

【山口貴大(ライオン兄さん)】

金融・起業のマネースクール『Financial Free College』代表。SNSでは「ライオン兄さん」名義で活動。ネット関連会社などにて、8年間のサラリーマン勤務をするが独立。金融・起業の書籍をむさぼり読みつつ、サービス業関連会社を興し、2018年に売却、その売却益を米国株を中心に運用し、経済的自由を獲得した。同スクールは、「投資家が推奨するお金のスクール」、「未経験から学べるお金のスクール」、「結果が見込めるお金のスクール」の3冠を取得(日本マーケティングリサーチ機構調べ)。2021年10月4日(証券投資の日)に「資産運用をしよう」という言葉をTik Tokで世界一広めてギネス認定される。YouTubeチャンネル「ライオン兄さんの米国株FIREが最強」を運営。著書に『年収300万円FIRE 貯金ゼロから7年でセミリタイアする「お金の増やし方」』(KADOKAWA)がある。

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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