アラフィフのくせに「若作り」は痛々しい? 自称“普通の妻”がド派手な姉に言い当てられた本心

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何事においても「年相応」を求められがちな日本。ファッションについても、世間の目を気にして敢えて年相応にとどめる人、また「いい年して」「アラフィフのくせに」と好き勝手に非難する人もいる。
日本では、どうしても「年齢相応のファッション」が求められがち。自分が好きなら何を着てもいいはずなのに、世間の目を気にしてしまう人も多い。

「若作り」の姉が恥ずかしい

「私の姉はアラフィフですが、離婚経験者で現在は独身。ここ数年、妙に派手なファッションが目につくようになっていました」

そう言うのはアキコさん(44歳)だ。4歳年上の姉・ミナコさんは、35歳で結婚したものの5年たたずに離婚した。原因は夫の不倫だった。

「姉はおとなしくて地味なタイプでした。でも離婚後しばらくたってから明るい色の服を着て言動も変わっていった。仕事で認められるようになったらしく、それが自信につながっていったのかもしれません。とはいえ、最近は短いスカートをはいたり、ものすごくワイドなパンツを着用したりと、ファッションが派手になった」

同時にヘアやメイクも変わっていったという。かなり金髪に近い髪色になったり、ところどころにピンクを入れたり。まつエクで目元もぱっちりした。

「なんだか痛々しくて。この年齢になってどうしてそんなふうになったのか。若作りがイタイなと思っていました」

アキコさんは29歳で結婚、12歳と10歳の子を持つ「普通の妻、母」だという。だからこそ姉の変貌ぶりが理解できずにいたのかもしれない。職場で浮いているのではないかと心配もしていた。

ところがつい先日、アキコさんが久しぶりに学生時代の友人と行った店で、姉にばったり会った。姉は職場の後輩たちと来ていたようだ。

「あら偶然とちょっと話していたら、姉の後輩たちが『ミナコさんの妹さんなんですか』『ずいぶんミナコさんとタイプが違いますね』と。彼女たちが姉を悪くは思っていない様子が伝わってきました。『私たち、ミナコさんを目指してるんです』とまで言っていて。

『姉が派手で気になってるんですよ』と言ったら、『自分のしたいファッション、メイクをしているだけで、それが似合ってるんだからいいんじゃないですか』と切り返されました」

姉が後輩たちの信任を得ているのが、アキコさんには少し不思議に感じられたという。

「自分らしい」って何だろう?

その後、久しぶりにゆっくり姉と話す機会があった。

「あんた、私のことをみっともないと思ってるんでしょ?と姉が言うんです。みっともないとはさすがに思わないけど、年に似合わず派手な女だと思ってると正直に答えたら、姉は笑っていました。年齢相応なんてくそくらえよ、と。私は知らなかったんですが、5年前、学生時代からの親友が急死したそうです。

彼女は人生を楽しんでいなかった。仕事が休みの日でも地味な服を着て、『一度でいいから茶髪にしてみたい』『派手なネイルをしてみたい』と希望ばかりつぶやいていた。職場はそれほど厳しくないというから、だったら茶髪くらい、やってみればいいじゃないと言ったら『周りが何と思うか』を気にしていたそう。

そんな親友とのやりとりを思い出して、姉は自分もできるうちにできることをやっておこうと考えたんですって。それが意外と職場の後輩たちに好評だった。誰にも若作りなんて言われてない、と」

私に嫉妬しているようにしか思えないと姉に言われ、アキコさんは図星だと思い至った。自分の好みを取り入れていく自由さ、周りの目を気にしないミナコさんの強さを、アキコさんは「いい年して」という言葉で見下そうとしていたのだ。自分にはできないことだから悔しかったのかもしれない。

「誰にも何も言われないように生きていくのが姉の価値観だと思っていたんですが、姉はそこから脱皮していった。私は年とともに、姉とは逆に保守的になっていった。子どもがいるとどうしても受け身になると言い訳をしながら生きていた。そんな気がしました」

たとえ若作りと言われようが、本人が好きで納得しているなら、どんな外見であろうが構わないはずだ。まして姉は会社員として、社の規定からはずれるようなことはしていない。すべてが許容範囲である。

「姉は40代になってから5キロのダイエットにも成功した。だからそれまで避けていたファッションにもチャレンジできるようになった。今はジムにも通っている。努力しながら人生を楽しむこともいけないのかと詰め寄られました」

すべてがアキコさんにはできないことだった。そのとき彼女は気づいた。結婚して自由がなくなり、家庭に縛られていると感じていることを。

「おねえちゃんには家庭のストレスがないからね、好きなことができるよね」とアキコさんは皮肉っぽく言った。

「家庭のストレスがない代わりに、ひとりきりで生きている孤独があるわよ」

姉はさらりとそう言った。あ、とアキコさんは姉の顔を見た。うっとうしいと思うこともあるが、アキコさんは家族に囲まれた生活を愛している。姉にはそれがないのだ、と。

「それぞれ自分が選んだ人生なんですよね。どちらを羨ましがっても意味がない。私は私、姉は姉。そう思うようになったら、姉のファッションも気にならなくなりました」

どうせひとりで気楽に生きているのだからと、なんとなく姉との交流を避けていたアキコさんだが、最近は少しだけやりとりが頻繁になったという。

◆ 亀山 早苗プロフィール
フリーライター。明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
(文:亀山 早苗(恋愛ガイド))

当記事はAll Aboutの提供記事です。

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