たった一度、ごみの分別を間違えただけで、近隣住民からひどい仕打ちを受けるケースがあるようです……。
今回は、ある社宅で起こった悲惨な出来事です。
◆夫の勤務先の社宅へ
杉並区在住の田中香織さん(仮名・33歳)は、結婚してすぐに夫の会社の社宅に入りました。社宅に住み始めて3ヶ月で妊娠が発覚し、すぐに悪阻(つわり)がスタート。
「ものすごい食べ悪阻でした。朝から晩まで、ずっと二日酔いが続いているような感じでしたね。キッチンにも立てなくって、夜中も、少しお腹が空くと吐き気が来るので何度も起きてました……」
香織さんは妊娠初期から中期までの間、ずっと食べ悪阻に苦しんだそう。
◆悪阻中のごみ出し
ニオイで気分が悪くなってしまうため、悪阻中のごみ出しはツラいもの。香織さんは妊娠がわかってからずっとごみ出しは夫にお願いしていました。そんな中、夫の北海道出張が決まります。
「夫はあの頃、主任になったばかりでした。妻が妊娠しているからと言って、出張を断ることなんてできなかったみたいで……『ごめんね、一週間の出張だから頑張ってね』って言ってました。
正直、あの時、夫が出張に行くって聞いて……もう、不安過ぎて、しばらく涙が止まらなかったですね……。ただ、社宅に住んでいる身ってこともあって、私にはどうすることもできなかったんですよね」
夫が出張で留守の間、香織さんは、ウーバーイーツや出前館、生協などの宅配を毎日頼んでいたそう。
「出来るだけ家事をしないで、後は、なるべく胃をカラにしないようにゆっくり食事しながら、悪阻を抑えることを最優先に過ごしてました」
◆ブルーシートに出された我が家のゴミ
「あの期間は、毎日宅配が来てたんで、普段よりゴミの量は多かったですね。それで、妊娠中のダルさもあって、気の緩みもあったと思いますけど、ちょっとごみ出しでミスしちゃったんです。でも、あんな事するなんて普通じゃないと思う……」
香織さんが燃えるごみを出した翌日、社宅の “ごみ当番” がとんでもない行動に出たそう。
「ゴミを出した次の日ですよ。朝9時頃だったかな……チャイムが鳴って玄関のドアを開けたんですよ。そしたら、家の前にブルーシートが敷かれてて、その上にたくさんのごみが並べてあって……」
ドアを開けた瞬間のニオイに、香織さんは吐き気をもよおしたそう。そんな香織さんに追い討ちをかけたのが、この時の “ごみ当番” である50代の女性でした。
◆ペットボトルのフタ1つで激昂
「えずきそうになって涙目の私に言ったんですよ……『あんたが出した燃えるごみに、ペットボトルのフタが入ってたわよ! ほら見なさい! 』って。ヤバくないですか?」
調べてみると確かに、ペットボトルのキャップは「プラスチックの資源ごみ」「可燃ごみ」など、自治体によって分別がまちまちのよう。香織さんは、怖くなって「申し訳ありません」とか細い声で謝罪しました。でも、ごみ当番”の女性はさらにこう続けたそう。
「『証拠も出てるんだからね』って。私がビリビリに破いて捨てた明細を、セロテープで貼り付けたのを出してきたんです。その後も、何度謝罪しても、全然許してくれませんでした……。挙げ句の果てに、『あんたの旦那、主任でしょ? うちの夫は○○課の課長よ』なんて言い出して。……ほんと、悪夢を見ているかのようでした」
香織さんはえずきながらも、出されたゴミを回収し精神的にかなり追い詰められたと言います。
「私が妊娠していて、夫が出張で留守って事もわかっててあんな酷いことしたんだと思います。今は変な人だったって分かるんですけど、当時はただただ怖くて仕方なかったです」
夫が出張から戻ってすぐに転居先を探し、翌月には逃げるように社宅を出たそう。
◆引っ越した後もトラウマで社宅に近づけない
「もともとは出産後も社宅に住むつもりだったんですけど、子どもが産まれてからあんな怖い人とトラブルになっていたらと思うとゾッとします。あれは私の中でトラウマになってしまって……以前住んでいた周辺にはまだ行けませんね。」
香織さんはごみ当番などがない、管理人常駐のマンションに引っ越しました。
「今住んでいるマンションは、若いファミリーが多いので気持ち的にラクですね。ゴミは24時間出せて、掃除も全て管理人さんがやってくれるので。今のところ、異常な感じの人もいなそうだし……」
新しい家でスタートを切った香織さん。あれ以来、ゴミの分別は徹底的にするようにしているそうです。
<取材・文 /maki イラスト/ズズズ@zzz_illust>