収入が増えたら威張り出すわけ?夫への不信感から「マンション内別居」を選択してみたら

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結婚生活も長くなれば、互いに「あら探し」をしたり、衝突して消耗したり、裏切られたり。「離婚」の二文字が脳裏にちらついたとき、何をすべきだろう。
結婚生活も長くなると、お互いに対して鈍磨してくるところもあるが、一方で「あら探し」状態になることもある。まだあきらめきれず、かといって期待をすれば裏切られる状態だ。どちらかが「離婚」と叫び出す前に距離をとったほうがいいのかもしれない。

結婚20年、お互いに我慢の限界だった

「ここ2年ほど、同じマンションの中で夫と別居しているんです。ようやく関係が落ち着いてきたと思います」

そう言うのは、ユキノさん(48歳)だ。28歳のとき妊娠がわかり、つきあっている人と婚姻届を出した。だが、彼女自身は結婚するつもりがなかったという。

「仕事がしたかったんです。輸入家具の会社に勤めていましたが、とにかく楽しかった。大きな会社ではないから苦労もありましたが、毎日が飛ぶように過ぎていきましたね」

結婚して出産したが、すぐに仕事に戻った。自宅でデザイン関係の仕事をしている夫が、家事育児をほとんど担ってくれた。ところが無理がたたったのだろう、第二子を出産したあと、ユキノさんは体調を崩しがちになり、ついに退職に追い込まれた。

「落ち込みましたね。バリバリに仕事をしていた自分が、急に家にこもるしかなくなって。子どもはかわいかったけど、それでも子育ても家事も私には向いていなかったと思う。それなのに、仕事ができなくなったからせめて家事育児は完璧にしなければと自分を責めてしまって」

過呼吸を起こして恐怖と不安で外に出られなくなった時期もある。それでも彼女はあがいていた。社会とつながろうと必死だった。

「どうしてあんなに必死だったのか。あとからわかったんですが、結婚するとき夫が『何に対しても努力を惜しまないきみが好きだ』と言ったんです。妊娠したからしかたなく結婚したようなつもりでいたけど、実は夫は私にとっての支えだったんですよね。

私は小さいときに両親が離婚、親戚に預けられて育ちました。いつも大人の顔色を見ながら大きくなったので、人が自分をどう思っているのかに敏感すぎた。だから夫の言葉は、がんばっていない私は好きになってもらえないというのも同然だったんです」

仕事をしているときは、仕事で評価された。だがやめてしまうと自分で自分を評価できず、家事育児で完璧を目指すしかなくなってしまったのだ。

再就職はしたけれど、夫婦に亀裂

30代半ばで運良く再就職ができてから、ユキノさんはまた仕事で完璧であろうとがんばりつづけた。

そのころ夫も個人で仕事をすることに限界を感じ、友人たちと事務所を立ち上げた。

「その仕事が軌道に乗ったところから、夫が少し変わり始めた。それまでは家で子どもたちのめんどうを見るのが何より好きと言っていた夫が、収入もよくなったせいか私を下に見るような発言をしたこともありました。

『独身だった○○が、一回りも下の女の子と結婚したんだよ』と仲間を羨んだり、『きみのほうが時間があるんだから、もうちょっと家の中をきれいにしたら?』と小言を言ったり。収入が上がったとたんに威張り出すのって、人としてどうよと思いますよね」

男女の役割にとらわれずに生きていると思っていた夫なのに、それは収入が妻ととんとんだったからそうせざるを得なかっただけだとわかってしまったのだ。友だちのような夫婦関係は少しずつ崩れていった。

「4年ほど前には、女性から私の携帯に電話がかかってきたこともあります。『いつ別れてくれるんですかぁ』って。夫に言ったら『飲み屋の女性のいたずらだよ』って。あなたはそんな人じゃなかったのにねと言うと、夫は逆ギレして。

当時、高校生だった娘が『うるさい。そんなにケンカばかりするなら離婚しろ!』と叫んだとき、このままだと私は夫を恨むようになるなと思ったんです」

娘が大学に合格した2年前、ユキノさんは夫に別居をもちかけた。同じマンション内にワンルームの賃貸物件があるため、そこに移ってもらえないかと打診したのだ。

「離婚したいということ?と夫はおずおずと言いました。そのころコロナの影響で夫の仕事も減りつつあったようです。収入が減ると夫は気弱になる。そこが嫌だと言いました。

私たちは人と人としてつながっていないのかと問いただしたんです。そうしたら夫は夫で、子どもたちが小さいころ、ワンオペのように家事育児をしていたことをいまだに恨みがましく思っているとわかって……」

お互いに根深い不信感が育ってしまっていた。今さら話し合いを重ねたら、離婚するしかないところまで追いつめ合うだけだ。ふたりは長いつきあいでそれがわかった。

「夫はワンルームに越していきました。まず子どもたちが落ち着きました。下の息子も2年後に受験を控えていたので、とにかく夫婦での諍いはやめようということにして、週末は夫が食事を作りに来てくれるようになりました。

お互いの行動は詮索しない、監視しない。だけど子どもたちはまだ未成年だから、そこは責任をもって対処しよう、と。マンションみたいな狭い空間だとどうしても顔を合わせてイライラしがちですが、離れてみたら、私も心穏やかになっていきました」

今年の春、息子も大学生になった。夫婦の距離感は変わらない。結婚はしているが別々に暮らし、ときどき食事をともにする。もはや子どもたちが親につきあってくれることはなくなったため、食事をともにする頻度は減った。

「やはり子どもがいないときにふたりきりで向き合うのは避けていますね。でも夫のことが嫌になったわけではないし、この先、また同居ということもありうると思う。そのあたりはフレキシブルに考えればいいと思っています」

最近、夫の仕事はまたうまくいきはじめているようだ。だがいい波も悪い波もあると知った夫は、嵩にかかったような物言いはしなくなった。

「ずっと一緒にいるだけが夫婦じゃないですからね。早めに距離をとって本当によかったと思っています。憎まずにすんだから」

ユキノさんはホッとしたようにそう言った。

◆ 亀山 早苗プロフィール
フリーライター。明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
(文:亀山 早苗(恋愛ガイド))

当記事はAll Aboutの提供記事です。

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