『スッキリ』終了で“朝の情報戦争”が激化。エンタメ路線、関西では振るわず

日刊SPA!

◆『スッキリ』が来年3月に打ち切り

日本テレビの朝の情報番組『スッキリ』(平日午前8時~10時25分)が来年3月に終了する。後続番組も情報番組になる。生活情報番組『バゲット』(同10時25分~同11時30分)も終わる。同局関係者によると、新番組は午前8時から同11時半まで3時間半の大型番組となる。

『スッキリ』が終了する理由の1つは『バゲット』の低視聴率。この穴を埋めるため、やはり視聴率が停滞している『スッキリ』も終了させ、大型番組化を図り、一気に浮上を図る。

◆『バゲット』の不調が昼の視聴率にも影響

『バゲット』が振るわないのは小さな問題ではない。あとに続く『ストレイトニュース』(同11時30分~同45分)や『ヒルナンデス!』(同11時55分~午後1時55分)にも悪影響が出るからだ。

平日の朝から日中にかけては積極的にチャンネルを切り替えない人も多い。1つの番組が不調だと、後に続く番組は不利になる。だから各局は「タテの番組配列」も大切にする。番組を個別に考えるだけではない。

『バゲット』の11月10日放送分の視聴率は世帯1・9%(個人0・9%)。対抗番組のテレビ朝日『大下容子ワイド!スクランブル 第1部』(平日午前10時25分~午後0時)は世帯5・4%(個人2・7%)、フジテレビ『ノンストップ!』(同9時50分~11時25分)は世帯2・4%(1・2%)なので、かなり厳しい。

◆軽視できない関西の視聴率

『スッキリ』自体の視聴率も好調とは言い難かった。『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)、『めざまし8』(フジテレビ)の後塵を拝し、3位に甘んじる週や日も目立つようになっていた。

明らかに悪かったのは関西の視聴率。新聞社の支社や支局と違い、テレビ局のネット局は別会社。その発言力は強く、低視聴率が長く続くことを許さない。ネット局の視聴率も情報番組の存廃に関わっている。

11月4日(金)から同10日(木)までの『スッキリ』『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)『めざまし8』(フジテレビ)の関東、関西、名古屋の平均視聴率を見てみたい(ビデオリサーチ調べ)。

■『スッキリ』(午前9時半までの1部)

関東   世帯5・0%、個人全体2・7%

関西   世帯4・7%、個人全体2・5%

名古屋  世帯5・5%、個人全体2・9%

■『モーニングショー』

関東   世帯8・9%、個人4・8%

関西   世帯6・3%、個人3・4%

名古屋  世帯5・2%、個人2・6%

■『めざまし8』

関東   世帯4・4% 個人全体2・4%

関西   世帯6・1%、個人全体3・5%

名古屋  世帯6・0%、個人全体2・8%

◆エンタメ情報でコア層の支持を集めるも

『スッキリ』は関西では大きく引き離されて3位。これが長く続いている。

2020年に女性グループのオーディション「Nizi Project」を放送するなど『スッキリ』はエンタメ情報を重視した。だからコア層(13歳から49歳の個人視聴率)に強かった。T層(10歳から19歳)とF1層(20歳から34歳)もトップだった。

けれど、それは関東の話。関西の視聴者は『モーニングショー』の硬派調のニュース、あるいは『めざまし8』の生活者目線のニュースを欲した。

また、『スッキリ』は若い層をターゲットにしているのに、番組は開始から17年が過ぎた。局側は老舗番組と若い視聴者の間に溝が生じることを危惧したのではないか。

MCの加藤浩次も53歳。『モーニングショー』の羽鳥慎一が51歳で『めざまし8』の谷原章介が50歳だから、一番年長になってしまった。若い視聴者から年齢が離れた。これも終了の理由だろう。どんな番組にも寿命や耐用年数はある。

◆アイヌ問題が投げかけた番組の問題点

それより、はるかに大きいのはBPO(放送倫理・番組向上機構)の審理に入る放送を、昨年1年間で2度もしてしまったこと。しかも同1月から同3月までの僅か2カ月の間である。やはり番組の耐用年数が過ぎたと見られても仕方がない。

昨年7月、BPO放送倫理検証委員会は『スッキリ』の昨年3月の放送にアイヌ民族を傷つける差別的な表現があったという意見を出した。番組にとって痛恨だったのは「差別問題に関する感度のアンテナの低さ」を指摘されたことだ。根元的に問題があるとされてしまった。

視聴者の中にはBPOを軽視する声もあるが、テレビ界にとっては最高裁判所のようなもの。運営資金も事務方のスタッフも自分たちで出している。スポンサーもその意見を大いに気にする。だから、各局はその決定を極めて重く受け止める。

◆ペットサロン問題はいまだ審理中

ペットサロンに預けられた犬がシャンプー後に死んだ問題も6月のBPO放送人権委員会が審理入りした。放送は昨年1月だが、今が審理の真っ最中。まだ終わっていないのである。

サロンの経営者は「事実と異なる放送」とし、局側は「十分な取材をしている」と主張。対立している。もしも経営者の意見が正しかったら、事実を歪曲していることになるので、大問題になるだろう。

こう考えると、『スッキリ』が終わるのは不思議ではない。

◆キー局の存在感を裏付ける情報番組と生放送

『スッキリ』終了が発表されたあと、「情報番組が次々と終わるのではないか」という声が上がっているが、あり得ない。朝の情報番組の視聴率を合計すると、夕方のニュース全体と同じくらい観られている。ニーズがある。在宅勤務やフレックスタイム勤務の増加などにより、ニーズはより高まっている。

そもそも今の時代に、ニュースと情報番組を区別すること自体が不毛なのである。ニュースが芸能やグルメ情報を扱うよりになり、情報番組が政治から外交まで取り上げているのだから。見せ方が違うだけ。

実はスタッフにも大きな違いはない。『モーニングショー』は報道局でつくっているし、フジの情報番組をつくる情報局は報道局と1960年代から頻繁に人事交流をしている。

加えて動画などの新たなコンテンツが出てきた時代だからこそ「情報」と「生放送」はテレビにとって大きな武器になるのだ。巨大資本の動画配信会社はドラマはつくれるものの、在京キー局レベルの情報番組はつくれないからだ。

◆朝の情報番組の競争はますます激化する

さらに情報番組には「長時間の中で何だって出来る」という強みもある。「Nizi Project」もそう。やろうと思ったら、ドラマもバラエティも番組内で出来る。こんな便利な代物を局側がわざわざ手放すはずがない。

それでも朝の情報番組をやめ、連続ドラマの再放送を流したらどうなるか。視聴率はある程度、獲るだろう。だが、収益は大きく落ち込む。誤解している向きもあるが、制作費のかからない番組にわざわざ高額のCM料を払うスポンサーなど存在しない。視聴率とは別問題なのだ。

視聴率は上位であるテレ朝の2022年度第1四半期(今年4月から6月)の売上高は日本テレビ、フジ、TBSの次で、主要4局では最下位。これも平日の日中に『相棒』など2本の連ドラの再放送をしているうえ、『モーニングショー』も含めて視聴者の年齢層が高く、スポンサーに歓迎されないからだ。

朝の情報番組の競争はますます激化する。『スッキリ』の後続番組が長時間化し、強化されるからだ。他局は対抗策を練るに違いない。

<文/高堀冬彦>

【高堀冬彦】

放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞東京本社での文化社会部記者、専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」での記者、編集次長などを経て2019年に独立

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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