競馬は馬券だけじゃない!「ファンの記憶に残る5つのレース」を元競馬誌編集長が徹底解説

日刊SPA!

◆レースとしての競馬の面白さを再認識

夏休みも折り返し地点に差し掛かり、子どもの自由研究に頭を悩ます保護者の方も少なくないのでは。子どもは研究対象に対して興味を示さず、周りの大人ばかりが翻弄されるこの課題。「なくしてくれればいいのに…」という気にすら陥ります。

とはいえ、夏休みは新たな知識をインプットするいい機会で、自由研究は、その最たるものでしょう。普段は競馬新聞ばかり眺めて、勝ち馬研究に余念のない我々も、この機会に、「競馬」そして「レース」そのものについて、見つめ直してみてもいいかもしれません。

そこで今回は、絶対に映像を観てほしい「面白レース」を5つ集めました。展開が面白い、動きが面白い、設定そのものが面白いなど、思わず人に勧めたくなるようなレースばかり。きっと、レースとしての競馬の面白さを再発見できるはずです。

◆世紀の逸走…からの猛追 12年阪神大賞典

まず最初にご紹介するのは2012年の阪神大賞典。このレースで単勝1.1倍の圧倒的な一番人気に推されていたのは前年のクラシック三冠&有馬記念を制したオルフェーヴルでした。

レースはそのオルフェーヴルが大外枠からのスタート。スタート直後から行きたがるのを懸命に押さえながら3番手を追走していましたが、道中でナムラクレセントが早めに捲っていったのに呼応する形でエキサイト。向正面で先頭に立つと、レースが終わったと勘違いしたのか、外ラチに向かっていきます。池添騎手が慌てて手綱をひいて急減速すると後方3番手まで後退。誰もが万事休すと思ったその瞬間、内側の馬群を発見して再加速します。一気に外を捲って4コーナーでは先頭に並びかけ、ギュスターヴクライを半馬身差まで追い詰めました。

同馬の通過順位は1-2-9-6。2着に敗れたものの、こんなロスだらけのハチャメチャな競馬をしながら勝ち馬を追い詰めたこの一戦で、オルフェーヴルの底知れぬ能力を体感したファンは多いことでしょう。

内の馬をみつけて再加速していく迫力は、ぜひ、映像でチェックしてみてください。

◆外ラチに向かって追え!?  14年アイルランドトロフィー

レースの中盤で外ラチへ向かっていったのがオルフェーヴルなら、最後の直線で外へ外へと逃げていったのが2014年アイルランドトロフィーのエイシンヒカリです。3歳春にデビューした同馬は、このレースまで無傷の4連勝。圧巻の逃げ切り続きで、ファンの期待値は大いに高まっていました。

単勝1.4倍の支持を受け、いつものように逃げの手に出ると、1000m通過が58.2秒という速めのペースで後続を15馬身近く引き離して最後の直線を迎えます。

誰もがいつも通りの逃げ切りを確信した残り400m。追い出しにかかると、右へ右へと張っていきます。ジョッキーが右打ちを入れて修正を図るのもむなしく、1頭だけ馬群を離れて外ラチ沿いへ。それでも、脚は衰えず、後続に3馬身半の差をつけて押し切りました。

エイシンヒカリはこの後、香港カップ、イスパーン賞と海外G1を連勝。その類まれなるスピード能力を、海外にも見せつけています。

同じ、外ラチに張っていきながらも勝ってしまったレースとして、リフレイムが勝利した2020年7月25日の新潟5R(新馬戦)にも注目。こちらも合わせて映像をみると、「馬が真っ直ぐ走るというのは、簡単なことではないんだなあ」と実感することができるでしょう。

◆理解不能の直線一気 00年根岸ステークス

直線一気は、なかなか他のギャンブルでは味わえない競馬の醍醐味。追い込み馬の逆転劇に、人生を重ね合わせる人もいるはずです。

日本競馬史に残る「ド追い込み」として必ず名前が挙がるのが2000年の根岸ステークス。ブロードアピールが4コーナー最後方から、14頭をごぼう抜きにしたレースです。

残り400mで先頭に立ったエイシンサンルイスも実力馬で、そこから10馬身近く後方とあらば、いくら末脚自慢のブロードアピールでも、前を捉え切るのは不可能だと思われました。もし、このタイミングで馬券を買っていいと言われたら、ブロードアピールを選ぶ人は皆無でしょう(笑)。

大外から脚を伸ばし、使った上がりはダートでは出色の34秒3。けっして前が止まったわけではなく、紛れもなく自身の鬼脚でねじ伏せたのです。

国内外で36戦した後、引退して繁殖牝馬となったブロードアピールは、4番仔のミスアンコールがダービー馬ワグネリアンを産み、「ダービー馬のお婆ちゃん」として名を残しました。

なお、「残り100mからのド追い込み」部門としては、1994年のクリスタルカップを推奨します。

◆ゴール前の大混戦 01年エリザベス女王杯

各馬横一線でのゴール前もまた、競馬の醍醐味の一つ。1989年毎日王冠、1999年有馬記念なども捨てがたいですが、横一線部門のナンバーワンとして推したいのが2001年のエリザベス女王杯です。

最後の直線、早め先頭のテイエムオーシャンを内からレディパステル、馬場の真ん中をティコティコタックとトゥザヴィクトリーが伸び、ゴール寸前で大外からローズバドが飛んできた一戦は、ハナ差で武豊騎手騎乗のトゥザヴィクトリーに凱歌があがりました。

上位人気5頭が0.1秒差にひしめきあう大接戦は、まさに名勝負。勝ったトゥザヴィクトリーは、それまで先行して甘くなる競馬が多かったのですが、G1の舞台でこれまでとは打って変わって待機策を取り、見事に差し切ってみせたのです。まさにユタカマジック!

みんな大好きゴールドシップのお母さん、ポイントフラッグが走っているのも胸アツポイントです。

◆スタートを切っているようです 96年バイオレットステークス

最後は番外編(?)とも言うべき変化球を。これはみなまで説明しませんので、ぜひ、レースを探してご覧になってください。

当時、高校生だった私はリアルタイムで中継を観ていましたが、直線に入って浮かび上がってくる馬の姿が、随分、幻想的に映ったのを覚えています。

歴史に残る大逃げレース、失速からの復活、カラ馬の大激走など、まだまだ紹介したいレースが盛りだくさん。今回、原稿執筆にあたり、改めてレースを見直しましたが、やっぱり競馬は面白いですね。この夏も後世に語り継がれるようなレースが繰り広げられることを期待しつつ、レースを見守りたいと思います。

文/松山崇

【松山崇】

馬券攻略誌『競馬王』の元編集長。現在はフリーの編集者・ライターとして「競馬を一生楽しむ」ためのコンテンツ作りに勤しんでいる。

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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