織田、徳川、武田…戦国武将が高校生に? バカバカしさもつきつめれば傑作に

日刊SPA!

◆日曜の夜にはピッタリのドラマ

7月期ドラマの中からナンバーワンを決めろと言われたら、すぐに答えるのは難しい。けれど最もバカバカしいドラマは即答できる。日本テレビの『新・信長公記~クラスメートは戦国武将~』(日曜午後10時半)をおいてほかにない。もっとも、貶すつもりは毛頭ない。ドラマがミステリーや感動モノ、お仕事モノ、ラブコメばかりではつまらない。とことんバカバカしいドラマがあったっていい。月曜日からの仕事や学校を控え、頭を空っぽにしたい日曜日の夜に合っている。

ストーリーは単純明快。織田信長や徳川家康ら戦国武将のクローンたちが現代に15歳で蘇り、同じ高校内のクラスメートとなって、テッペンの座を争う。考察なんて全くないし、メッセージ性も皆無。ついでにリアリティもゼロだ。

キャスティングもふざけている。全員15歳なのだが、徳川家康役の小澤征悦の実年齢は48歳。主人公・織田信長を演じる永瀬廉こそ23歳であるものの、伊達政宗役の三浦翔平は34歳、黒田官兵衛役の濱田岳も34歳、武田信玄役の満島真之介は33歳、井伊直政役の駿河太郎は44歳。ドラマ史上、最も老けた高校生たちが集まった。

◆視聴率は低いが話題性はバツグン

視聴者ニーズがあるのかが気になるが、7月31日放送の第2話は世帯視聴率が5.4%。個人視聴率は3.3%。低い。ただし、これだけで「ダメだ、こりや」と判断するのはあまりに早計である。

世帯と個人の視聴率は人口の約半分を占める50歳以上も見ないと上がらないが、このドラマは最初から50歳以上をターゲットにしていないからだ。なにせブッ飛んだ設定である。60代、70代、80代が放送を心待ちにするとは思いづらい。

コア視聴率(13歳から49歳の個人視聴率)は3.2%もある。同じ日の『鎌倉殿の13人』(NHK)の2.6%、『ポツンと一軒家』(テレビ朝日)の1.9%、『ナニコレ珍百景』(同)の1.8%より上だ。

若い人にはよく見られている。現時点では制作者の狙いが見事に当たった。7月24日の第1話放送後はこのドラマがTwitterの日本トレンド1位、世界トレンドで4位になった。

◆リアリティは無視しているが「そこがいい」

武将のクローン高校生をつくったのは戦国オタクの博士である。「そんなことムリだろ」と言うなかれ。時代設定は100年後なのだ。半面、その割には未来チックな感じが画面内にあまりない。家康はガソリンエンジンとしか思えないハーレーダビットソンに乗っている。もっとも、そんなことは気にしないほうがいい。おそらく最初からリアリティなんて毛ほども気にせずにつくられているのだ。

整合性も大胆なまでに無視されている。登場人物たちが生きる100年後の世界では明治期(1868年~1912年)以前の日本史教育は行なわれていないことになっているが、第2話で三浦翔平の伊達政宗はバッハ(1685年~1750年)のコスプレで現れた。独特の髪型も服装もほぼ完璧に再現。周囲もすぐにバッハだと分かった。

となると、日本史は省略しながら、音楽史はガッチリ教えていることになる。妙な話だが、そんなことも考えないほうがいい。キリがなくなる。何も考えずに見るべきドラマなのである。

なぜ、政宗がバッハになったか。それはクラスメートの上杉謙信(犬飼貴丈)がほかの生徒と音楽対決をしていたから。校内でテッペンの座を争うための「旗印戦」の一環である。「旗印戦」はケンカでの対決が中心なのだが、お茶の産地当て対決や将棋対決もある。何でもアリなのだ。

謙信は音楽対決で琵琶の名演奏を見せた。ホンモノの謙信も琵琶の名手だったのである。それはドラマ内でも説明された。いろいろと確信犯的にテキトーなドラマなのだが、歴史考証には力が入っている。

不良高校生姿の謙信がまるで布袋寅泰のようなパフォーマンスを見せながら琵琶をジャンジャン弾く姿には思わず笑ってしまった。政宗のバッハ姿にも。

◆原作コミックよりも笑いを重視

このドラマは言葉を駆使したギャグが少ない。一方で考えなくても笑えるシーンがあちこちに散りばめられている。実のところ高度な構成と演出にほかならない。

原作漫画の『新・信長公記~ノブナガくんと私~』はヤンキー作品色が濃厚だが、ドラマのほうはコメディ作品色が強い。登場人物のキャラからしてそう。

1980年代の不良青年を彷彿させる満島の信玄は原作の通りだが、小沢の家康は漫画『ボボボーボ・ボーボボ』の主人公を想起させる。その風貌を見ているだけでもニヤッとしてしまう。

24年間におよぶ俳優生活の大半はシリアスな役柄を演じてきた小沢が、この仕事を引き受けたのはストーリーと役柄が気に入ったからに違いない。三浦、濱田、満島、駿河も同じはず。演じる側にとっても近来稀に見るバカバカしさが新鮮で魅力なのだろう。

ストーリーの話に戻りたい。「旗印戦」では相手に勝つとポイントが貯まる。そのポイントを一番多く獲得した生徒が高校内の総長と戦う権利を得る。総長に勝ったら、晴れてテッペンの座に就く。総長か誰なのかは現段階ではナゾ。この辺はヤンキー漫画風味だ。

第2話終盤ではケンカ最強と謳われた信玄が、家康との「旗印戦」で「3分以内に倒す」と宣言され、その通りになってしまった。家康はバケモノのように強い。家康を倒せる可能性があるのは信長くらいか。いつも干し柿を食べている変人だが、心優しく、桜吹雪で敵を瞬時に倒す必殺ワザを持つ。こちらも恐ろしく強い。これから最終回まで2人の対決が軸になるのだろう。

ほかにクラスで唯一の女子生徒・日下部みやび役で山田杏奈(21)、豊臣秀吉役で西畑大吾(25)、今川義元役で松大航也(22)らが出演。

高校の理事長である別府ノ守与太郎役は名優・柄本明(73)が務めている。けれどAIなので水晶玉に顔がぼんやりと浮かぶだけ。小沢、三浦、濱田、満島、駿河ら30代と40代の15歳役を含め、なんとも贅沢なキャスティングだ。<文/高堀冬彦>

【高堀冬彦】

放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞東京本社での文化社会部記者、専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」での記者、編集次長などを経て2019年に独立

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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