お得でも庶民がEVを買う気にならない理由

日刊SPA!

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

◆EVの命はバッテリーなり!

国際エネルギー機関の発表では、2021年のバッテリー電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)を合わせた世界のEV新車(乗用車)販売台数の合計は、前年比2.2倍の660万台でした。担当Kとしては、急速充電設備の普及と充電時間のさらなる短縮、バッテリーの保証(もしくは安価な交換システム)がEV購入に残る課題です!

永福ランプ(清水草一)=文 Text by Shimizu Souichi

池之平昌信(流し撮り職人)=写真 Photographs by Ikenohira Masanobu

◆8年でバッテリーがメロメロになるようじゃ、EVなんて怖くて買えません

「なんか、サクラのほうがかっこいいですねえ」

担当Kの写真を見ての第一声がこれだ。

今回取材したのは、三菱の新型軽EV、ekX(クロス)EV。日産のサクラとは、見た目が違うだけでメカはまったく同じである。

確かにekクロスEVのデザインは、「絶世のブス」と呼ばれた軽自動車ekクロスとほとんど変わっていない。日産サクラも、デイズの顔をちょっと変えただけだが、サクラのほうが電気自動車っぽくて、わかりやすいだろう。

しかしまあ、中身は同じなので、見た目は好みで選べばヨシ。この2台の軽EVは、停滞が続く日本のEV市場に、革命をもたらすかもしれない。それは、「郊外や地方のセカンドカー」という形で!

◆電気代はガソリン代の半額以下

現在のEVを、ガソリン車と同じように使おうと思っても、まだ無理がある。航続距離をガソリン車並みにすれば値段が高くなりすぎるし、出先での急速充電はカッタルイ。

でも、軽自動車をベースに作ったekクロスEV/サクラは、航続距離を180㎞(実質150㎞?)に割り切って、バッテリー容量を小さくした。充電は自宅での普通充電(200V)が基本。ご近所用のセカンドカーに特化して作ったので、値段は約240万円~。ナビなどオプションを30万円付けても、政府からの補助金55万円を引けば215万円。

東京都なら、さらに45万円の補助金が出る。つまり170万円! ガソリンの軽より少し安いじゃないか! 充電を100%自宅で行えば、電気代はガソリン代の半額以下で済む。お得じゃないか! それで加速力はガソリン軽の2~3倍。速いし快適だ!

◆いずれバッテリー交換が必要に?

ただ、日本人はEVに対して、「いずれバッテリーが劣化して、交換が必要になるんでしょ?」という不信感を抱いている。これは、初代日産リーフ(初期型)のバッテリーが、数年でメロメロに劣化したことから生まれた不信。交換には数十万円かかるから誰もやらない。もしも日産が、赤字覚悟で無償交換サービスをやっていれば、こんな不信は生まれなかっただろう。

◆バッテリー強制冷却システムが付いた!

で、ekクロスEV/サクラのバッテリーはどうなのかというと、たぶん大丈夫だ。なぜなら、今やEVに常識のバッテリー強制冷却システムが付いたから! バッテリーの劣化は主に熱で起きる。熱を逃がせば寿命が延びる。リーフにはこれがない。ちなみにテスラや日産アリアなど、リーフ以外のEVにはすべて、バッテリー強制冷却システムが付いている。

バッテリーの寿命への自信の表れが、ekクロスEV/サクラの「バッテリー容量8年16万㎞保証」だ。ヤッター、これで安心だネ!

そう思って説明書をよく読んで愕然とした。この保証、「バッテリー容量が新車時の3分の2に低下した場合は、無償で4分の3以上に復帰させる」というもので、つまりリーフと同じ保証だったのだ!

これじゃダメだ! 自信があるなら「10年10万㎞で容量が8割を切ったら新品に無償交換」くらいやってほしい。バッテリーはEVの命。劣化イコール廃車なんだから。

◆【結論!】

ekクロスEV/サクラは大変優れたEVで、「これなら買ってもいいな」と思えるが、バッテリーの保証が弱すぎる。軽は年間1万㎞も走らないんだから、もうちょっと保証を充実させてもらいたい

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

【清水草一】

1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com

当記事は日刊SPA!の提供記事です。