生命保険は 「掛け捨て」だと本当に損する?意外に間違っている保険の知識

OTONA SALONE



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【50代からの確実なお金の貯め方】#5

「掛け捨て」はもったいない?


いま販売されている保険商品の多くは「掛け捨て」です。「もしものときのために保障を買う」という保険本来の役割が、多くの人たちに受け入れられるようになりました。とはいえ、「掛け捨て」を嫌う人がまだまだ多いとも感じます。定期的に祝金を受け取れる特約や、支払った保険料が将来戻ってくるタイプの医療保険に人気があります。どうしても、保険料が「掛け捨て」になるのはもったいないと感じ、何らかの戻りを求めるのが消費者心理なのかもしれません。
まず知っておきたいのは、将来必ず祝金、満期保険金などの戻りがある保険は、「掛け捨て保険に入りながら積立を行っている」のと同じで、保険料負担が重くなることです。保険料が戻ってくるタイプの医療保険も、掛け捨ての医療保険より保険料は高め。支払保険料分が全額戻ってくるのでムダなくおトクな感じがしますが、一度も入院給付金などを受け取らなければ、長い間無利息の預金をしていたようなものです。また、一般的な積立貯蓄とは違って、自由に引き出したりストップしたりすることができません。
「保険には保障機能だけを求めて、貯蓄は金融商品で行う」と、役割をハッキリ分けて利用したほうが家計にとって合理的です。

保険料のシンプルな仕組み/「貯蓄性」の部分はあやしい時代です


「戻りがある保険は、掛け捨ての保険に入りながら積立を行っているのと同じ」と述べましたが、それは、保険会社に支払う保険料の内訳を知ればわかります。

支払い保険料は、将来の保険金支払いに回すための「純保険料」と、保険会社の運営経費や利益に充てられる「付加保険料」に大きく分けられます。付加保険料は掛け捨て部分。ちなみに、対面販売の保険よりも通販やインターネット経由で契約する保険のほうが安いのは、対面販売より経費がかからないからです。そのため、付加保険料を安くできるのです。

「純保険料」も大きく2つに分けられ、生命保険・損害保険にはカバーするリスクに応じた「危険保険料」が計算されています。これも掛け捨て部分となります。

さらに、学資保険など祝金・満期保険金がある保険、年金の支払いが約束されている個人年金保険、解約した場合に解約返戻金がある終身保険など、加入者への戻りがある保険については「貯蓄保険料」を支払います。この部分は掛け捨てではありませんが、貯蓄保険料が含まれている保険も付加保険料、危険保険料を支払っています。それゆえ加入者は、掛け捨ての保険料と戻りのために積み立てられる保険料を合わせて支払っているわけです。

1990年代中頃までは、積立金に約束された運用利率(予定利率)が高かったため、運用収益が掛け捨て部分を補って余るほど増えましたから、支払い保険料の全額が貯蓄されているかのように見えました。しかし、その後は予定利率の引下げが相次ぎ、現在では1%足らず。積み立て部分の収益性は見る影もなくなっています。ですから、掛け捨ての保険でカバーすべきリスクに備え、資金づくりは金融商品を利用するというように、保険と貯蓄の役割を分けるほうが合理的なのです。

90年代に見られた「お宝保険」は今すでに存在していません


じつは、1990年代前半頃までに販売されていた予定利率の高い保険は、いまではもう手に入らない「お宝保険」と呼ばれています。予定利率は契約時の利率が契約終了まで約束されているため、終身保険や個人年金保険の終身型などの長期契約は、高利回りをキープできる「お宝」というわけです。

50代は「お宝保険」にギリギリ加入できた世代ではないかと思います。予定利率が高ければ、運用益が積立金づくりを手伝ってくれるため、加入者が支払う保険料は安くていいことになります。この予定利率が、93年3月まで5・5%、94年3月まで4・75%と夢のような高さでした。

当時、個人年金保険や終身保険のような積立部分の大きい保険は、いまと同じ年金額・保険金額でも保険料がかなり安かったのです。つまり、「お宝保険」は少ない保険料で大きな資金づくりができる金融商品としても魅力的だったわけです。

けれども、金利低下などの影響で予定利率が引き下げられていきました。保険会社は、積立金を運用益で増やせないので、年金や満期保険金などの支払いに備えるために、貯蓄保険料を上げざるを得ません。こうして金融商品としての魅力がなくなりました。

にもかかわらず、「保険は貯蓄になる」と刷り込まれている人は少なくありません。たとえば、いまでも、子どもの教育資金づくりには「学資保険が一番」と考えていませんか?

保険料を総額いくら払うのか確認せずにいると、祝金・満期保険金の受取総額がそれより少ない、つまり元本割れする場合があることに気づけません。そのこともあって、最近では保険の貯蓄性を表すのに「返戻率(へんれいりつ)」が使われます。支払保険料総額に対する受取総額の割合ですが、これがプラスであっても要注意です。

たとえば、「返戻率105%」との表示に「5%も増えてお得!」と思い込むのはNG。長期間かけて増える割合であり、利回り(年間の平均収益率)を表しているわけではないのです。仮に20年満期で返戻率105%とすると、積立の利率に換算した場合は0・48%程度なのです。

まぁ、預貯金金利がないに等しい現状を見れば、夢のような数字に思えますが、20年という長期の運用利率として魅力的かどうかは疑問です。

そもそもなぜ保険が必要なのかを先に考えたほうがいい時代です


そもそも家計にとってなぜ保険が必要なのでしょうか。暮らしのなかにはさまざまな「経済的リスク」があります。一家の大黒柱の死亡、大きな病気・ケガによる入院・就業不能、事故や災害に見舞われるなど、予定していなかった経済的損失に遭遇することがあります。

保険はこれらの経済的リスクから家計を守るのに、有効な手段です。なぜ有効かというと、契約が成立した時点で加入した保険金額のお金が準備できるからです。もし、貯蓄で備えたい金額分を積み立てようとしたら、経済的リスクの大きさによっては、長い時間がかかってしまうでしょう。「貯蓄は三角、保険は四角」といわれるとおり、リスクに応じた資金準備がすぐにできる点は、保険ならではのメリットです。

とはいえ、経済的リスクのすべてを保険でカバーするのは、保険料負担を考えるとムリです。どんなリスクに見舞われるかわからないので不安というのはわかりますが、保険だけに頼らず、貯蓄を併用して備えておいたほうがいいリスクもあります。何といっても、保険は基本的に掛け捨てですから家計にはお金が残りません。一方の貯蓄は確実にわが家に残るお金となるのです。基本的な考え方は次のとおりです。

①確率は低いが、もし遭遇したら大きな経済的損失が考えられるリスクは保険でカバー
②日常的に起こり得るが、経済的損失はそれほど大きくないリスクは貯蓄を併用

①に当てはまるリスクは、地震、火災、交通事故など損害保険でカバーする分野が多く、生命保険でカバーするのは、幼い子どもがいる家庭の親の死亡、重い障害状態になって働けなくなるなどが考えられます。

②については、公的な健康保険制度がかなりカバーしてくれる医療費などが挙げられます。ほかにも社会保障制度を知ったうえで対応を検討すべきリスクもあります。

現在の保険料の正しい捉え方は、「助け合いへの参加料」です


保険では必要なお金をすぐ準備できます。加入者が支払う保険料は自分が受け取るためではなく、その保険に加入する人全体の「助け合い」に回るものだからです。保険とは、みんながお金を出し合って、実際に経済的損失に見舞われた人にお金を回す仕組みです。保険会社は、いくら保険料を出し合えば保険金支払いがまかなえるか、リスクの発生確率や保険事業の運営経費などの予測をもとに、保険商品ごとに綿密に計算します。

発生確率が低いリスクの場合、保険金を支払う可能性が低いわけですから、1人の加入者が支払う保険料は少なくても収支のバランスがとれます。前述の①のようなリスクには、少ない保険料でも大きな保険金が準備できるため、保険の利用が合理的なのです。

②のようなリスクも、無事に過ごせる可能性のほうが確率的には高いでしょう。適切な保障額にとどめて加入しなければ、ずっとだれかを助けるために保険料を払い続けることになりかねず、わが家の家計にとって痛手となります。保険料は助け合いの仕組みへの「参加料」であり、将来の見返りを期待するものではないと割り切って考えましょう



文/ファイナンシャルプランナー(CFP・1級FP技能士)・生活設計塾クルー取締役 浅田里花

1959年兵庫県生まれ。 同志社大学文学部卒業。大手証券会社を経て日本初の独立系FP会社である株式会社エムエムアイに入社、ファイナンシャルプランナーの資格を取得する。1993年に独立し、フリーでの活動をスタート。

現在は、生活設計塾クルーのメンバーとして、一人ひとり・家庭ごとに合った資産設計、保障設計、リタイア後の生活設計等のコンサルティングを行うほか、新聞・雑誌等への原稿執筆、マネーセミナー講師などを手がける。また、東洋大学社会学部の非常勤講師を務め、学生にパーソナルファイナンシャルプランニングの基礎を伝える働きも。

当記事はOTONA SALONEの提供記事です。

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