【ラグビーW杯開催国、フランスを歩く】②  イングランドと戦う地ニースは地中海の陽光あふれる街

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 2023年のラグビーワールドカップ。開催地のフランス各地を紹介する連載の2回目は、地中海、コート・ダジュールに面したリゾート地、ニースだ。太陽と青い海、長い海岸線と白い砂浜。世界中の多くの人々がバカンスを過ごしたいと憧れる地の一つがここだ。巨大な山車や仮装行列が行くカーニバルでも知られている。パリなど北部の街から南下していくと、陽光だけでなく建物の色が明るいことに気持ちが上がっていく。

ニースのこの青い空の下、日本代表チームが対イングランドの2戦目を戦うのは2013年にできた「アリアンツ・リヴィエラ」スタジアム。ニースの旧市街から車で20~30分西に走ったところにある。3 万5千人を収容するこの競技場は、7千平米にわたり4千枚の太陽光パネルが設置されたエコなスタジアムとして知られ、骨組みには金属と組み合わせて木材を使ったことで約3千トン、ニースとニューヨーク間を3千回往復する分に相当するCO2を削減、雨水の貯水もできる“持続可能性”を考慮した建築物だ。ラグビーW杯だけでなく、もちろん翌2024年の五輪でも使われる予定だ。

太陽光パネルや骨組みを見上げる記者たちのそばで、現地を訪れた元日本代表選手、東芝ブレイブルーパス東京の大野均さんは違う方角にも目を向けている。ラガーマンはスタジアムを初めて訪れた時どんなところに注目するのかたずねてみると、「芝と照明の位置や角度ですね」という。スパイクにどう引っ掛かる芝なのか、ボールを投げ入れたり取ったりする時にまぶしい位置はどのあたりなのかといったことが気になる点。このスタジアムの芝は天然と人工のハイブリッド。「なかなか良いスタジアムだと思う」と大野さん。フィールドの端に膝をついて芝を見つめる表情は真剣だ。

地元のサッカーチーム、OGCニースのホームでもあるこのスタジアムは、ロッカールームがなかなか興味深い。 競技場のロッカールームは国により、場所によってさまざまだが、ここはOGCニースの選手たちが使うホーム側のロッカールームと迎え入れるチーム側が使うそれがかなり明白に異なっている。前者は、比較的柔らかで座り心地の良い、チームカラーの赤黒色のシートが各自備えられているのに対し、後者は普通の箱型で固い椅子。「ここまで差異が大きい所も確かに珍しいかも。ニースは地元愛にあふれているから」とスタジアム関係者は笑う。ちなみに2023年のラグビーW杯試合日程をみると、イングランドが左に表記されているからホーム側、日本はいわゆる“ビジター側”のようだ。がんばれニッポン!

このスタジアムのもう一つの特徴は、フランス国立スポーツ博物館が併設されていることだ。2013年までパリにあった博物館をニースに移して拡充。トロフィーやメダル、五輪の聖火トーチ、ユニフォームやボール、マスコットなどスポーツ関連の展示物4万5千点と40万点の文書がここに集められている。1998年のサッカーW杯でフランスを優勝に導いたジネディン・ジダン選手のユニフォームや、2014年、鈴鹿サーキットでの事故が原因で亡くなったニース出身のレーシング・ドライバー、ジュール・ビアンキ氏が乗っていたフェラーリのレーシングカーもここに展示されている。ブティックもあり、日本ではなかなか買えないさまざまなスポーツのユニフォームやグッズなども手に入る。

試合の前後は、やはり南仏を満喫できる王道のニース巡りを。散策の出発点はマセナ広場。1840年にできた広場で、選挙運動や市民の政治運動などでもよく報道されるニースのシンボルのような場所だ。周囲の建物は赤やオークル、黄色の外壁でニースの特徴的な風景を作っている。 ここから北東に向かって1.2キロにわたって伸びる散歩道が「プロムナード・デュ・パイヨン」。広場側の入り口にある水面鏡は3千平方メートルの大きさで128本の吹き出し口がある噴水を備える。フランスの水面鏡としてはボルドーに次いで2番目の大きさ。周囲の樹々や雲が映り込む水面に、子どもたちが歓声を上げながら駆け込んでいく様子はフォトジェニックだ。そこから歩いて7~8分のところに、さらに写真映えするフランス一華やかといわれる市場が立つ、サレヤ広場がある。南仏らしい色とりどりの花や石けん、青果やチーズ、ニース名物の「ソッカ」なども売られていて、そぞろ歩きが楽しい。ソッカはひよこ豆の粉とオリーブオイル、水を混ぜた生地をクレープのように広げて焼いたおやつ。熱々を食べるのが一番だから、その場で楽しむのが“お作法”。昔ながらの質素なおやつだが、最近はグルテンフリーを好む人に新たな人気が出ているという。

ソッカを手に、さらに北東方向に歩いていくと、ガリバルディ広場に出る。イタリア統一に尽力したガリバルディは、ニースの生まれ。19世紀のニースはフランスではなく、まだサルデーニャ王国で、フランス割譲に激怒したといわれる彼の像は広場の中央に立ち、イタリアの方角を向いている。イタリア国境からわずか30キロというこの地の歴史は他の国境の町同様複雑で、文化や食の味わいも重層的だ。旧市街の狭い路地沿いには毎日通っても飽きないほどたくさんのレストランがあるが、例えば“ニース料理”の店としてニース観光局お墨付きの「シェ・アッキアルド」には、プロヴァンスらしくオリーブオイルを使った肉や魚、野菜などの料理に加え、多種類のパスタもあり、「イタリア料理店」と書く人も少なくない。ニースの陽光を浴びて遠くを見据えるガリバルディの顔を見た後で食べると、国名よりも地中海沿岸地域というボーダーレスな土地柄をより強く感じるかもしれない。

マセナ広場から反対方向、海側に出ると、かの有名な海岸遊歩道「プロムナード・デ・ザングレ」。海風に吹かれながら東に向かって歩くと、軍事要塞だった城址公園がある。丘の上からの眺めは絶景だ。片側は長い海岸線、反対側は船が整然と係留されている港。時間が許すなら、芸術散歩へ。パリ・オペラ座(ガルニエ)の天井画をシャガールに依頼した当時の文化相、アンドレ・マルローの肝いりでできたシャガール美術館は、画家存命中に開館しためずらしい国立美術館だ。

次回3回目は、ニースを満喫した後で足を伸ばせるエズやトゥーロンを紹介する。

text by coco.g

詳細な観光情報はプロヴァンス・アルプ・コートダジュール地方
観光局、フランス観光開発機構、東芝ブレイブルーパス東京を参照。

当記事はOVOの提供記事です。

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