リアルとバーチャルの融合は“普通のこと”になっていく。メタバースの可能性についてのトークセッション

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Photo: オルガテック東京2022

1990年代にPCが登場し、インターネットが広く一般に普及した後、2000年代にはこれまでリアル店舗で行われたサービスがインターネットで提供されるようになりました。また、2000年代にはSNSが登場し、いろいろな人がインターネットに集まって意見交換が可能に。さらに2010年代にはスマートフォンの普及により、それらのサービスはより身近になりましたが、迎えたこの2020年代はインターネットとリアルがこれまで以上に近づくと言われています。

そんな時代をリードする技術として、現在、AIとともに注目を集めているのが、昨年以来バズワードになっている「メタバース」です。日本メタバース協会によると、メタバースとは「現実世界とは異なる3次元の仮想空間のサービス」のことを指すとのことですが、実際にはそのほかにも「インターネットにリアルさを与える」など、さまざまな定義が存在します。

ここでは、ジャーナリストの林 信⾏さんをモデレーターに迎え、KDDI株式会社の中馬和彦さん、建築家の豊⽥啓介さん、アーティスト/プログラマ/DJの真鍋大度さんが登壇したトークセッション「未曾有の価値形成をもたらすメタバースの正体」で語られた、バーチャルの魅力を拡大するメタバース、そしてコミュニケーションの先にある可能性についてご紹介します。
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※2022年7月1日記事公開時、中馬さんはKDDI株式会社の事業創造本部 副本部長 兼 Web3事業推進室 室長
Image: オルガテック東京2022

林さん曰く「メタバースとはリアルとインターネットの融合」とのことで、たとえばBMWの工場で採用されているNVIDIAの「Omniverse」もその一例。リアルタイム3Dデザインコラボレーションおよび仮想世界シミュレーションプラットフォームのOmniverseでは、リアルの工場をデジタルツインで再現し、工場作業をシュミレーションすることで効率化を図ることができます。



とはいえ、一般的にメタバースと言えば、Meta社が提唱するような3DCGで再現された仮想空間で交流を楽しめるものをイメージする人は多く、「これがメタバースの王道になっていくはず」と林さん。一方で、ポケモンGOなどの制作を手掛けるNianticは、ヘッドマウントをつけて体験するフルVRに懐疑的で、よりリアルとの融合を目指すAR的なアプローチに取り組んでいるといいます。

Nianticとともに、仮想世界に音のオブジェクトを配置することができるARアプリを手掛けた真鍋さんは、これまでにSXSWでのPerfumeのライブ演出や、参加者の動きと呼応して光と音が同期する「Coded Field」を手がけてきました。そのような取り組みについて、「デジタルツインやメタバースと言われるものよりも、現実世界と仮想世界の関係をうまくデザインすることでエンタメにしていくプロジェクトをやっている」と語ります。





「実際に起こっていた社会的な活動や歴史を元にしたメタバース的なものにも、いろいろな可能性があると思っている」と語るのは豊田さん。

メタバース的なものを建築の視点で設計しているという豊田さんは、これまでに、巨大なディスプレイが映像やその日のライブ情報と連動しながら自動で動く「KABUTO ONE」アトリウムや、大阪万博のパピリオン、子供たちが機会的な要素と電子的な要素を体感できる「PLAY EARTH PARK」の遊具、今年解体された『中銀カプセルタワービル』の複雑な形状を3次元計測技術で正確に記録する3Dデジタルアーカイブプロジェクトなどを手がけています。



KDDIを中心とした渋谷5Gエンターテイメントのメンバーとして、渋谷区と一緒に「バーチャル渋谷」の運営に取り組む中馬さんは、「メタバース空間に存在するバーチャル渋谷を、あえてリアルにおけるカルチャーの街・渋谷とシンクロさせようとしている」と語ります。「バーチャル渋谷」の2年間の運営で得た知見として

・メタバースでの表現は、すべてアバターを起点に起きる
 ・その空間の使い方や遊び方は、ユーザーが決める
 ・リアルのアセットがデジタルに寄ってきた

などを挙げました。


メタバースが浸透することで社会はどう変わっていくか


コロナ禍の影響でリアルで行うことができなかった展覧会をバーチャルで行なったという真鍋さんは「わざわざ現場に行かなくてもメタバースでリアルに近い体験ができるというのは、可能性がある。また、リアルには存在しないVTuber歌手がリアルでライブをすることが増えているが、これからはそういったリアルとバーチャルの融合がより増えていき、それらがもっと“普通のこと”になっていくはず」と述べました。

また豊田さんは、メタバースによって、自分の分身を“情報”としていろいろなところに送れるようになると指摘。「自分の出し方やキャラ設定、役割に関して、動きだけを送るのか/人格ごと送るのか、など選択肢もどんどんできてくる。そうなると、これまで物理的な身体ひとつに、人格・居場所・存在価値までがすべてまとまる必要があったことが、不自然なことになってくると思う。自分のアバター設定次第で、メタバースでの感覚が変わってくることがすごく面白い。そんなことが、ありとあらゆる場所で起きるようになるのでは」とのこと。

一方、メタバースの経済面について、中馬さんは「これまでの平面でのインターネットではできなかったことができるようになる。Web3が入ってきたことでメタバース上でも経済が回るようになった。今後リアルとのハイブリッドは進む。例えば、外出する必要がないメタバース空間では、本物の服は買わなくても、アバターのための服を買うようになるなど、インターネットがより人間的になっていく」と話します。そして、「今のメタバースの達成度は5%程度。ただ、スマホでもなく、ヘッドマウントでもなく、その中間にあるちょうどよいデバイスがヒットすれば、さらにメタバースは普及し、その達成度も上がっていくはず」と、今後について予想。
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(左から)林 信⾏さん、中馬和彦さん、真鍋大度さん(豊⽥啓介さんはオンラインでの参加) Photo: オルガテック東京2022

今後のメタバース発展の可能性について


また、2025年の大阪万博に向けた今後のメタバース発展の可能性について、「今はまだPCやスマホのスクリーンのような2次元を通してコミュニケーションするバーチャル世界と、リアル世界との様式の違いが少ない。空間を共有するということは、位置関係や距離というものが前提にあって初めてできるもの。そういう意味では、デバイスよりも実体験のデジタル信用性を高めていかないとうまくいかない」と豊田さん。

中馬さんは「基本的には、そこに“何か”があれば人が集まる。ただ、今のバーチャル空間だと、その“何か”はゲームだけ。そこに例えば、バーチャル渋谷のような都市型メタバースが食い込んでくれば、加速度的にメタバースの普及は進んでいくし、センサー機能によるリアルへのフィードバックがあることで、メタバースでできることは変わってくる」と期待を寄せます。

真鍋さんは 「3年ほどのスパンで考えると、ハードはあまり変わらないがソフトは進化するので、主にソフトによる発展が考えられる」とし、今後のメタバース発展に影響を与えるものとして、AIの機械学習アルゴリズムなどを用いた​​プログラムによって自動生成される「ジェネラティブコンテンツ」を挙げました。

この話を受け、林さんも「今のメタバースはバーチャル空間の中に人が入って会話をしていることが多い。しかし、最近ではNVIDIAがさまざまな知識を持つAIを搭載したCEOのアバターを作るなど、AIによってメタバース自体がより進化していく」とAIとメタバースの相互作用について言及しました。



先述のように、メタバースといえば現状は一般的にエンタメ的な活用方法に注目が集まりがちです。しかし、今回のトークセッションで語られたように、今後はさまざまな角度からその活用方法が広がっていくことが予想されます。

そうなれば、より身近なものとして我々の生活に浸透していくことになるのではないでしょうか?

当記事はギズモード・ジャパンの提供記事です。

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