<ライブレポート>玉置浩二、オーケストラとともに到達した"理想郷"

Billboard JAPAN



そこはまさに理想郷だった――2月26日から全国8都市で11公演行われた、玉置浩二×オーケストラ公演の新シリーズ【玉置浩二35th ANNIVERSARY LEGENDARY SYMPHONIC CONCERT 2022 “Arcadia -理想郷-”】の特別公演が、6月11日、12日の二日間にわたり河口湖ステラシアターで開催された。魂の歌とオーケストラの情熱溢れる演奏、感性の交換がハーモニーとなって富士山の麓に鳴り響き、喜びと感動に包まれた“音楽”の理想郷が出現した。

6月12日。特別公演の2日目は前日の雨模様から一転、梅雨の晴れ間が広がり、開演が近づくにつれ、ステージの背景にそびえ立つ富士山の頂上にかかっていた雲が、徐々に流れ薄れていく。17時30分。少し空気が冷たくなってきた頃、群馬交響楽団のメンバーに続いて、指揮の大友直人が大きな拍手に迎えられステージに登場。まずはオーケストラによる「歓喜の歌」が奏でられた。このコンサートの幕が開いたことを祝福するかのように、富士山もはっきりとその姿を見せる。オーケストラの重厚な音色に、玉置浩二の歌声がどう重なり合うのか、これからの“時間”が一体どんな素晴らしいものになるのか、期待に胸が膨らむ。

ひと際大きな拍手が沸き起こり、玉置が颯爽と登場。一曲目は「カリント工場の煙突の上に」だ。優しく歌う玉置の声が客席を包み込み、歌と青空と流れる雲が、一瞬にして溶け合う。玉置が空を指差し<浮かんだ雲を眺め>という歌詞がリアルな映像となって映る。歌声はオーケストラの一音一音と共鳴し、徐々に熱を帯びてきて、激しいシャウトに心を掴まれる。ジャジーで軽快なリズムの「CAFE JAPAN」は、オーケストラの壮大なアレンジにより、エッジのきいたスケール感となって、客席を沸かせた。そして弦の切ない旋律が流れてきて「恋の予感」を歌い始める。オリジナルの持つ独特な空間を残しつつ、よりドラマティックになったアレンジが、歌をさらにドラマティックにする。甘美な世界に酔いしれ、感動を覚える。歌い終わるとともに地響きのような大きな拍手がステージに贈られた。続く「aibo」も感情を真っ直ぐに表現するように、切ない想いを乗せ訥々と歌い、伝える。聴く人の心の奥深いところへ直接訴えかけるメッセージとなり “伝わってくる” 。

メドレーのスタート「MR.LONELY」は、ノーマイクでのフェイクから始まり、艶やかで伸びのある歌声が会場いっぱいに広がる。「All I Do」は35年前のソロ・デビューシングルだが、瑞々しさに深みがプラスされ、何度も出てくる<僕を信じて>という歌詞が、聴き手の心に響く。「サーチライト」の<サーチライトは そうなんだ 君なんだ>というフレーズに、ファンの心は玉置のサーチライトで照らされ、思わず涙を流す人も。気温は下がってきたものの、温もりのある世界がここには広がっている。第一部の最後は「Friend」が歌われた。ピアノの音色に導かれると、もうそこには優しさしか存在しない。聴き手の心を温かく包み込み、満たしてくれる。

河口湖への起点となる富士急行線大月駅から河口湖駅間では、5月11日からこのコンサートを記念したラッピング列車が運行していたが、公演当日となる6月11日、12日は特別仕様にした特別臨時快速列車「玉置浩二Arcadia号」が運行。大月駅発13時26分の列車に乗ると、車窓からの美しい景色に加え、過去のオーケストラ公演のビジュアルヒストリー展示や、特別アナウンスで乗車客を楽しませてくれた。

その特別アナウンスは、玉置浩二夫人の典子さんが担当。玉置が毎日したためているという“玉置の日記”から、Arcadiaツアーについてのエピソードを語ってくれた。玉置がどんな様子でこのツアーに臨み、コンサート当日をどのような思いで迎えていたのか、他の誰も知ることができないのだから、ファンにはたまらない。さらに玉置と河口湖ステラシアターの深い縁、エピソードも語ってくれた。玉置が当時シアター建設中の現場を訪れて、工事をしている作業員の前でギターを片手に歌い、その士気を高めたという。

そんなステージに22年振りに立つ玉置浩二。コンサートにかける思いたるや…。そんなことを考えながら電車に揺られること1時間。河口湖駅に到着すると待っていたのはゴスペルグループ・ソウルバードクワイアよるウェルカムミニライヴだ。安全地帯、玉置の曲をゴスぺルコーラスアレンジで披露。コンサートへの期待感を煽る。

コンサートの休憩時間中も青空は広がり、鳥のさえずりが聴こえてくる。第2部のスタートはオーケストラによる「グリーンスリーブス幻想曲」から。ハープ、フルートの音色と共に鳥のさえずりが“ハモる”。そして再び玉置がステージに登場すると「愛だったんだよ」を優しく、そして語りかけるように歌い始め、丁寧に言葉を届ける。間奏のオーケストラの演奏が、切なさをさらに助長する。9年ぶりのシングルリリースとなった「星路(みち)」はステラシアター公演のみで披露された。ささやくように歌うバラードは、光を散りばめたライティングの演出で、まるで星空の中にいるようだった。ラストの<たどりつく道がある>という歌詞が、未来へと力強く導いてくれる。繊細な一本のヴァイオリンの音から「行かないで」が始まり、切々と麗しく歌い上げる。ソリストにピンスポットが当たり、ステージから客席までの会場全体をキャンバスにして描かれた照明が、空と玉置との間に、音が視覚的に浮びあがるような感覚にしてくれる。聴く者一人ひとりの心に憂いとして突き刺さっていく、この儚く美しい芸術品のような楽曲に胸を締め付けられた人は多かったはずだ。

「ワインレッドの心」のイントロが流れると拍手が湧く。誰もが知るこの名曲も、この日の会場の雰囲気、オーケストラの優美なアレンジ、玉置の湛える切ない感情で、特別な景色となって聴こえてくる。

「じれったい」では一転、激しいリズムに乗り、エモーショナルに歌う。そして「悲しみにさよなら」だ。<愛を世界中のために>と歌詞を変えて大きな愛を歌うと、割れんばかりの拍手が。さらに<悲しみにさよなら ほほえんでさよなら><ひとりじゃないさ><あなたのそばにいるから>と、コロナ禍で傷を負い、疲弊した心に、誰もが一番かけて欲しい言葉を伝えてくれる。そして心を“ほどいて”くれる。客席に感動の波が広がっていくのがわかる。このメドレーについて取材ノートには“歌の真髄”と大きくメモしていた。

「JUNK LAND」ではマシンガンのように言葉を繰り出し、熱狂が生まれる。それに応えるようにオーケストラも圧巻の演奏で情熱を生みだし、それが客席に伝わり大きな拍手が生まれる。

空に月が顔を出し、本編ラストは名曲「夏の終りのハーモニー」。優しいメロディーをしっとりと歌う。最後はマイクを置き、生の歌声を直接届ける。強く、しなやかなその声はファンにとっても、日本の音楽シーンにとっても宝物であるということを改めて感じた。

観客の反応も、やはり野外シアターならではだ。どこまでも響き渡るような拍手の渦に応え、アンコールがスタート。ベートーヴェンの「田園」をプロローグに「田園」を披露。客席は総立ち、手拍子でさらなる “歓喜” が生まれる。<愛はここにある ステラシアターにある>と歌うと、何度目かのクライマックスが訪れる。玉置もその熱気を全身に浴び、魂の叫びとなってシャウトで締めくくる。興奮冷めやらぬ会場は夕暮れの色が濃くなり、夜の帳が降りてくる。

ラストは「メロディー」だ。温もりのある優しい旋律のこの曲を力強く、どこまでも柔らかく、情感豊かに歌う。オーケストラの演奏がさらに歌を彩り、そして引き立てる。ラストは再びマイクを置き、自然の響きの中で歌う。その声を一人ひとりがしっかりと受け止める。魂の交換はスタンディングオベーションへと繋がった。何度も感謝の気持ちを伝える玉置と指揮の大友。割れんばかりの拍手と二人の満足そうな笑顔がこのコンサートの素晴らしさを物語っていた。

カーテンコールの後、ステージ後方の壁が開くとサプライズで花火が打ち上げられ、歓声が上がった。まさに大団円だ。玉置、大友、オーケストラ、観客、この会場にいる全ての人が同じ空を見上げ、花火に思いを馳せる。富士山も、青空も白い雲も、緑も鳥のさえずりも、夜空も月も、そして最後の花火も、全てがこのコンサートの一部となっていた。人々の心を潤す、まさにそこは理想郷だった。

Text 田中 久勝
Photo 加藤 亮

◎公演情報
【玉置浩二 Concert Tour 2022 故郷楽団 35th ANNIVERSARY ~星路(みち)~】

8月10日(水)OPEN 17:00 / START 18:00    千葉・市川市文化会館 大ホール
8月13日(土)OPEN 17:00 / START 18:00   兵庫・神戸国際会館こくさいホール
8月14日(日)OPEN 15:00 / START 16:00   兵庫・神戸国際会館こくさいホール
8月16日(火)OPEN 17:00 / START 18:00   京都・ロームシアター京都 メインホール
8月20日(土)OPEN 16:30 / START 17:30   栃木・宇都宮市文化会館
8月24日(水)OPEN 17:30 / START 18:00   新潟・新潟県民会館
8月28日(日)OPEN 17:00 / START 17:30   長野・長野ホクト文化ホール 大ホール
9月1日(木)OPEN 17:30 / START 18:00   北海道・旭川市民文化会館 大ホール
9月3日(土)OPEN 17:00 / START 18:00   北海道・札幌文化芸術劇場 hitaru
9月4日(日)OPEN 15:00 / START 16:00   北海道・札幌文化芸術劇場 hitaru
9月10日(土)OPEN 16:30 / START 17:30   大阪・豊中市立文化芸術センター 大ホール
9月12日(月)OPEN 17:00 / START 18:00   愛知・愛知県芸術劇場 大ホール
9月16日(金)OPEN 17:30 / START 18:30 熊本・熊本城ホール
9月17日(土)OPEN 16:30 / START 17:30 福岡・北九州ソレイユホール
9月23日(金)OPEN 16:30 / START 17:30 神奈川・横須賀芸術劇場
9月25日(日)OPEN 16:30 / START 17:30 埼玉・川口総合文化センター・リリア メインホール
9月29日(木)OPEN 17:00 / START 18:00 広島・広島文化学園HBGホール
10月1日(土)OPEN 16:30 / START 17:30 広島・ふくやま芸術文化ホール リーデンローズ 大ホール
10月5日(水)OPEN 17:00 / START 18:00 群馬・高崎芸術劇場
10月8日(土)OPEN 16:30 / START 17:30 福岡・福岡サンパレス
10月10日(月)OPEN 16:30 / START 17:30 静岡・静岡市民文化会館 大ホール
10月14日(金)OPEN 17:00 / START 18:00 三重・四日市市文化会館 第1ホール
10月19日(水)OPEN 17:30 / START 18:30 大阪・フェニーチェ堺(堺市民芸術文化ホール)
10月20日(木)OPEN 17:30 / START 18:30 兵庫・アクリエひめじ(姫路市文化コンベンションセンター)大ホール
10月24日(月)OPEN 17:30 / START 18:30 宮城・仙台サンプラザホール
10月25日(火)OPEN 17:30 / START 18:30 山形・やまぎん県民ホール(山形県総合文化芸術館)
10月31日(月)OPEN 17:30 / START 18:30 大阪・フェスティバルホール 
11月1日(火)OPEN 17:30 / START 18:30 大阪・フェスティバルホール

◆チケット料金
全席指定 9,900円 (tax in.)  4歳未満入場不可/4歳以上チケット必要

一般発売:7月2日(土)より順次
https://saltmoderate.com/

当記事はBillboard JAPANの提供記事です。

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