佐野正弘のケータイ業界情報局 第80回 スマホメーカーを悩ませる「OSのアップデート保証」


スマートフォンの買い替えサイクルが長期化していることもあり、投入したスマートフォンのOSアップデートがいつまで保証されるのか、という点に注目が集まるようになってきました。ですが、メーカーからしてみれば、既存の端末に対してまだ存在しない将来のOSのアップデートをどこまで保証するのかは非常に難しく、その対応には各社とも頭を悩ませている様子がうかがえます。
スマホを長く利用する上で重要なOSアップデート

ここ数年、スマートフォンの進化が停滞しているのに加え、行政によるスマートフォンの値引きに厳しい規制がなされるようになったことから、購入したスマートフォンを買い替えるサイクルが長期化する傾向にあるようです。かつては2年くらいとされていた買い替えサイクルも、現在では3~4年くらいにまで伸びているとの声が、携帯電話会社やスマートフォンメーカーから多く聞かれるようになりました。

そうなると、機種選びでも重要になってくるのが、手元のスマートフォンをいかに長く利用できるかということです。ボディが頑丈で壊れにくいというだけでなく、流行に左右されず飽きのこないデザイン、パフォーマンスが低下しないソフトウェア、そしていざという時のサポートをどれだけ継続して受けられるか……など、長く安心して利用するためにはさまざまな要素が求められます。

メーカー側からも、そうしたニーズに応えようとする動きが出ているようです。実際、2022年6月16日にオッポの日本法人であるオウガ・ジャパンが発表したスマートフォン新機種「OPPO Reno7 A」は、同じスマートフォンを長く利用したいという日本のユーザーの声に応え、注目を集めながらも飽きのこないデザインの採用や、ディスプレイ表面にAGC製の「Dragontrail STAR2」を採用するなどボディを強化、さらにはソフトウェア面でも、36カ月利用してもシステムの劣化率を5%に抑え、パフォーマンスを維持できる仕組みを備えるなど、長期間利用できることに注力したとしています。

ですが、同じスマートフォンを長く使ううえでもう1つ、OSのアップデートも非常に重要な要素として注目されています。なぜなら、OSのアップデートは新しい機能を追加するだけでなく、以前のバージョンのOSにあったセキュリティの穴をふさぐためになされることも多いからにほかなりません。OSのアップデートができなくなってしまうと、セキュリティの脅威にさらされた非常に危険な状態で端末を使い続けることになります。

それゆえ、最近はメーカーが一定期間のOSアップデートを保証するケースも見られるようになりました。オウガ・ジャパンの関係者によると、OPPO Reno7 AのOSアップデート期間は、発売当初の「Android 11」から最新の「Andorid 12」にアップデートすることは保証するとしていますが、それ以降のアップデートは未定としています。さまざまな側面で長く利用できる仕組みを整えているにもかかわらず、OSの長期間アップデートを保証できないことには疑問を抱く人も少なからずいることでしょう。
将来のアップデートを確約するのは非常に難しい

ただメーカー側からすると、OSのアップデートをどこまで保証するのかというのは非常に難しい問題でもあります。なぜなら、OSのアップデートをする際には多くの機能が実装され、端末側に従来より一層高い性能が必要になることから、OSを提供する側もすべての端末をOSアップデートの対象とするのは難しいからです。

また当然のことながら、端末発売時点で新バージョンのOSが存在するわけではなく、新バージョンのOSがどの程度の性能を必要とするのか、その時点では分かりません。なかでも、低価格で性能が低いミドル・ローエンドのスマートフォンは、現在のバージョンのOSで快適に動作するうえで必要最低限の性能に抑えて低価格を実現しているだけに、OSアップデートを長期間保証するのは難しいといえます。

OPPO Reno7 Aも、チップセットはクアルコムの「Snapdragon 695 5G」、RAMは6GBと、性能的にいえばミドルクラス相応です。現時点で将来のアップデートを確約するのが難しいのは、本体の性能によるところが大きいといえるでしょう。

もちろん、なかには一定期間のOSアップデートを保証するスマートフォンもいくつか存在します。例えば、Androidを開発しているグーグルの「Pixel」シリーズは、米国での発売から少なくとも3年間はOSのアップデートを保証するとしていますし、サムスン電子の「Galaxy」シリーズも2022年より、一部機種においてOSの3世代までのメジャーアップデートと、4年間のセキュリティアップデートを保証すると打ち出しています。

ですが、その対象機種を見るとハイエンド、あるいはミドルハイクラスの端末がほとんど。やはり、一定の性能を担保していないと、長期間のOSアップデートを保証するのは難しいようです。

一方で、iPhoneはAndroid端末よりもOSのアップデートを長期間提供する傾向にあります。実際、先日のWWDCで発表されたiOSの次期バージョン「iOS 16」では、アップデート対象が2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降となりましたが、それでも5年近く前に発売された機種がアップデート対象になるというのは、Android端末と比べるとかなりアップデート期間が長いことが分かります。

ただ、これはOSとチップセット、そしてハードを一体で開発しているアップルだからこそ実現できるものといえ、それぞれの開発元が異なる他のメーカーが真似をするのは難しいでしょう。一方でiPhoneは、長期間のアップデートに耐えられる一定の性能が備わっていることから、値引き販売がなければ5万円台の「iPhone SE」よりも低価格の機種はなく、Android端末のように2万~3万円台といった低価格を実現できないという弱点もあることを忘れてはいけません。

それゆえ、OSのアップデートを考慮するならば、やはり低価格の端末を長期間使い続けるのは難しいといえます。スマートフォンを長く使うなら、ある程度の出費を覚悟して高性能のものを購入し、そうでなければ低価格の端末を短い期間で買い替えるというのが、現時点ではベストな対処法といえそうです。

佐野正弘 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。 この著者の記事一覧はこちら

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