タイ屈指のラッパー エフ・ヒーローが語る「ONE ASIA」への想いーーLDHとのパートナーシップ締結のキッカケや武者修行2組への期待も

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5月11日(水)。タイの音楽業界を牽引するエフ・ヒーロー(F.HERO)が、自ら設立したヒップホップレーベルHIGH CLOUD ENTERTAINMENTと、LDH JAPANの『パートナーシップ締結記者会見』に参加。この世紀のビッグプロジェクトに胸躍らせた音楽ファンも多くいるだろう。そこでエフ・ヒーローに、今回の経緯や6ヶ月間タイで修行をつける2組の印象、さらにはアジアのミュージックシーンについて単独インタビューで訊いた。会見の様子とあわせてお届けする。


HIRO
HIRO

冒頭にも説明した通り、LDH JAPANとHIGH CLOUD ENTERTAINMENT(以下、HCE)が、日本とタイの文化交流を通じてアジアから世界へエンタテインメントを発信することを目的として、パートナーシップ契約を締結した。EXILE HIROによるとLDHは元よりグローバルマーケットに向けての活動を構想していたところ、新型コロナが直撃しほとんどのプロジェクトが中止に。その状況下でもLDHのモットーの「ピンチはチャンスに」を掲げて、東南アジアのエンターテイメントの中心地であるタイを拠点に活動したいと考え始めたところ、エフ・ヒーローに出会ったという。

「コロナで悔しい思いをした。この思いをバネに本プロジェクトを必ず成功させる」(EXILE HIRO)

「アジアを一つに。今だからこそ羽ばたくチャンス」(エフ・ヒーロー)

と語る彼らの表情は実にすがすがしい。そう遠くない未来に訪れるであろう、アジアンミュージックの躍進を約束するかのように、HCEサインを軽やかに示すエフ・ヒーロー。その姿に会場は大いに沸いた。

HIGH CLOUD ENTERTAINMENTサインをしながら集合写真を撮影
HIGH CLOUD ENTERTAINMENTサインをしながら集合写真を撮影

ではエフ・ヒーローは、どんな想いでLDH JAPANとパートナーシップを組んだのか。

「今回のプロジェクトを実現できた経緯をお話ししますね。タイと日本のエンターテインメントを長年にわたり橋渡ししてきたCHETGroupとパートナーシップを組んだことが最初のキッカケです。彼らと僕の思考は極めて近かった。そして、僕らの考えを実現するためにCHETGroupからLDH JAPANを紹介してもらいました。LDH JAPANのCCOを務めるEXILE HIROさんと話していて驚いたのは、考え方や哲学が非常に近かったことです。それはアジアをグローバルスタンダードにしたい、 「アジアを一つに=ONE ASIA」という大きなテーマを持っていることです。BLACKPINKとBTSがビルボードにチャートインし、言語の壁が壊された今、ハイクオリティな音楽があれば、わざわざ英語で歌わなくても自身のユニークさやルーツを持ったままグローバルで戦える。そう考えていたのです」

エフ・ヒーロー(右)とHIRO
エフ・ヒーロー(右)とHIRO

本プロジェクトのパートナーとなるLDH JAPANの魅力について、彼はこう話す。

「先日THERAMPAGEfrom EXILE TRIBEのコンサートを観に行きました。インターナショナルな強さを感じると同時に、J-POPが持つユニークさをまだ捨てていないことに驚き、とても魅力を感じました。その後、EXPG STUDIO(LDHが経営するダンススクール)も見学させてもらいました。ポテンシャルの高さはもちろんですが、小学生から高校生までの彼らがEXILE TRIBEを継承していることに驚いたのです。新しい流れを取り込みながら、EXILEから始まったソウルをしっかりと根付かせています。とても斬新なのに、揺るがない強さを感じました。自分たちのルーツがはっきりしている。彼らにとってはEXILEがルーツの根源です。 自分のルーツをたえず意識することはONE ASIAを達成するために必要なことです。彼らの好きな音楽がK-POPであってもアメリカン・ヒップホップであっても、自分のルーツに誇りを持っている。それは非常に美しく、世界に羽ばたく上で欠かせないアイデンティティのひとつです」

BALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBE
BALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBE

本プロジェクトの要となる、BALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBEとPSYCHIC FEVER。彼らは半年間タイで武者修行を行い、そのすべてをリアリティーショーとして世界に発信する。総合プロデューサーとして全面的にバックアップするエフ・ヒーローから見た彼らの魅力とは。

「BALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBEとPSYCHIC FEVERの楽曲はJ-POPだけれど、今まで聴いてきたJ-POPとは大きく違います。華があると同時にルーツがあります。才能に溢れ、表現の方法も完成しています。ベーシックなことは、教えるまでもなく既に身についている。非常にレベルが高いのです。なので、個人としての魅力をもっと引き出せるように関わっていきたいと思っています。自身のルーツ、ユーモア、アイデンティティ、こういったものを前面に出せるようにしてあげたい。そのために僕自身が持っているものはすべて伝えていくつもりです。日本ファンが彼らの不在を悲しまずにいられるよう、リアリティーショーで彼らのすべてを届けていきたいです」

PSYCHIC FEVER
PSYCHIC FEVER

ここでおもむろに自身が立ち上げたHCEについて語り始めた。

「HCEを立ち上げた時の秘話をお教えしますね。夢として「いつか、フリーフォームで色んなジャンルの入ったミュージックレーベルを作りたい」と思っていました。音楽というツールを使い、自由にどこにでも、どんな国とでもアクセスできる土壌を作りたかった。僕らのレーベル名がまさにそれを物語っているのです。HIGHは「上」。つまり、タイの音楽やアジアの音楽をレベルアップして皆が上を見上げる空のような存在。そこに、フリーフォームの意味を持たせた「CLOUD=雲」をつけました。雲は見え方が人によって違い、一つとして同じ形はありません。バニラ・スカイのように甘い雲もあれば、雨の雲、晴れの雲など無数にあります。音楽もまさにそうです。素晴らしい音楽をたくさん発信して広め、自分も雲のように自由に色々なところに行き、音楽とともに羽ばたきたい。そう考えて名付けたのです。今、それが実現されようとしている。こんなに嬉しいことはありません」

タイ俳優ブライト・ワチラウィットやガルフ・カナーウット、先日アメリカで開催された『コーチェラ・ヴァレー・ミュージック・アンド・アーツ・フェスティバル』に登場し話題となったミリ(MILLI)らとコラボレーションしているエフ・ヒーロー。アジアンミュージックに造詣の深い彼は、これらから見てもわかるように、ジャンルを超えてコラボレーションすることに大きな意味を見出している。

エフ・ヒーロー
エフ・ヒーロー

「自分が得意なのはラップやヒップホップですが、他の作品では色々なアーティストとコラボレーションをしています。そのおかげで、自分らしくありながら、自由に作品を作り出せます。今年HCEはインドや中国、ラオス、カンボジア、ベトナムのアーティストとコラボしようと思っています。先日、カンボジアのアーティスト、ヴァンダらとコラボした曲「RUN THE TOWN」をリリースしたばかりです。世界中から多くのフィードバックをもらっており手ごたえを感じています。来年はシンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピンとも何かできたらいいなと思っています。今後コラボレーションしたいのは、日本だったら三代目J SOUL BROTHERSfrom EXILE TRIBEの曲もよく聴いていますし、OMI(登坂広臣)さんですね。歌声に広がりがあり、言語がわからなくても想像させる強さがあります」

2019年、エフ・ヒーローの働きかけによりBABY METALとのコラボレーションが実現。素晴らしい楽曲に痺れた音楽ファンは実に多い。日本の音楽に興味を持ったキッカケを聞くと、信じられないことに時々歌いながら、楽し気にこう答えた。

エフ・ヒーロー
エフ・ヒーロー

「いろんなジャンルの音楽を聴いています。タイのルクトゥーンやポップス、ヒップホップもすごく好きですし、ロックバンドのボーカルもしていました。J-ROCKも歌ったことがありますよ。LUNA SEAのコピーもしたしね(笑)。(歌いながら)<心から~ キミに伝えたい~>。ね、ちゃんと歌えているでしょう(笑)? 他にはSPEEDやEXILE、宇多田ヒカルもよく聴いていました。宇多田ヒカルはタイでも有名です。曲で言うと、中田ヤスタカさんの才能が好きで、Perfumeの「チョコレイト・ディスコ」は特に好きです(歌いだす)。あの時代のJ-POPはとてもユニークでしたね。そうそう。金城武と深田恭子主演のドラマ『神様、もう少しだけ』など、日本ドラマもよく観ていました(笑)」

ここで、先日日本デビューが決まった愛娘シュウジャイについて話をすると、嬉しそうに顔をほころばせた。

「赤ちゃんの時から僕と一緒にメディアに出演していたので、彼女はタイではちょっとした有名人です(笑)。僕はファミリーという考え方がとても好きなのですが、彼女は僕にとってファミリー中のファミリー。なので、僕の仕事によく同行し、エンターテインメントの世界をものすごいスピードで吸収しています。彼女はダンスがとても好きなので、EXPG STUDIOに入学させようかと思っています(笑)。でもついていけるかな、オーディションで落とされることも考えられるな。入学出来たら、日本の皆さん、応援よろしくお願いします(笑)」

BALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBE
BALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBE

最後に、彼は姿勢を正し日本のファンに向け、丁寧にこう語った。

「日本のファンの皆さん、僕のことを日本から応援してくれている皆さん、サワッディークラップ(こんにちは)。今回のプロジェクトに賛同し、応援してくれると嬉しいです。僕が総合プロデュースを務める、BALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBEとPSYCHIC FEVERのファンの皆さん。彼らは日本ファンをとても大切に思っています。必ず皆さんを楽しませますので、タイで活動する彼らのことをぜひ応援してあげてください。日本の皆さん、そしてタイの皆さん、一緒にアジアを盛り上げていきましょう! アジアを一つに! ONE ASIA!」

PSYCHIC FEVER
PSYCHIC FEVER

握手を交わしながら、「取材に来てくれてありがとうございます。あなたたちは家族の一員です」と、柔らかな表情で取材陣を迎え入れてくれたエフ・ヒーロー。本プロジェクトを成功させたいという熱意と、そのために必要なプロセスを熟知しているプロフェッショナルな眼差し、そして音楽、何より人のことが好きでたまらないという彼の温かい人柄に感銘を受けた。彼らが手掛けるプロジェクトの数々を今後も追い続けたい。

エフ・ヒーロー
エフ・ヒーロー

取材・文=渋谷のりこ 撮影=大橋祐希

当記事はSPICEの提供記事です。

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