「餃子の王将」値上げラッシュの苦境に“逆王手”をかける過去最高売上のナゾ

日刊SPA!

―[あの企業の意外なミライ]―

◆外食チェーンを襲う値上げによる売上減

〈値上げのお知らせ〉。

いつも通っているカレーつけ麺屋、コンビニで見かけるスナック菓子、通販でいつも買っている化粧水…。最近、こんな告知を見ることが増えていないでしょうか。

いま、約1万品目を超える値上げが家計に大打撃を与えています。納豆やカップヌードルなどの庶民の味方の定番品や、発売開始以来ワンコイン100円で親しまれてきたセブンイレブンのセブンカフェのほぼすべての商品、36年の歴史で初となるローソン「からあげ君」など。今や、値上げされていない商品を探すことが難しいほどに幅広く値上げが実施されています。

値上げが消費者の懐を苦しくするのは言うまでもありません。これは、値上げする側である企業側も同様。値上げによる売上低下に企業側も戦々恐々としているのです。

そんな中、異質な存在を放っている企業があります。それが、あの「餃子の王将」を展開している株式会社王将フードサービスなのです。

値上げに負けない王将、その秘密に迫ります。

◆「ギョーザ値上げ」したのに客数売上増。なぜ?

餃子の王将は5月14日に値上げを実施し、餃子や炒飯などのグランドメニューの約2割が従来よりも税別20円から30円ほど高くなりました。一般的には値上げをすると客足が遠のきますが、餃子の王将では真逆のことが起きています。

6月2日に公表された月次売上高(速報版)によると5月の売上は単月で最高となる73億8400万円。前年同月比で見ると120.3パーセント、コロナの影響を受けていない2019年同月と比較しても111.3パーセントと大幅な伸びを見せています。

株価も売上に呼応するように好調で5月6日では6110円でしたが、6月6日には6920円と7000円台が手に届くところにまで伸びています。また決算資料を見ると、2023年の業績は過去最高を更新し、900億円を突破する見通しを立てています。

つまり、今後も値上げによるマイナスはほぼなく、むしろ売上を伸ばすことができると予測しているのです。多くの企業が値上げの影響を懸念している中、餃子の王将はなぜ好調を維持することができ、そして今後も継続できると考えているのでしょうか。

◆そもそも、客数が増えていた!

餃子の王将の好調の理由を探るために、値上げを実施した先月5月のデータをもう少し紐解いていきます。5月の客単価は前年同月比で101.7パーセント。値上げしたことを踏まえると客単価の伸びは決して大きくはありません。

むしろ、好調の理由は客数の方にあります。

5月の客数は同じく前年同月比で見ると118.3%。値上げしたにも関わらず大きく伸びているのです。客数増加の背景には、テレビのバラエティー番組に取り上げられたこと、割引等の各種特典を受けられるスタンプの2倍押しキャンペーン、生ビールの値引きセールなど、複数の要因があります。

またテイクアウト・デリバリーの充実も売上を後押ししています。2020年3月段階では100店舗以下でしたが、今年3月の段階で560店舗がデリバリーに対応。

現在、餃子の王将はフランチャイズを含め約700店舗なので、すでに過半数の店舗でデリバリーサービスに対応している状態です。買って帰ることのできるチェーン店として餃子の王将は定着してきているのです。その結果、テイクアウト・デリバリーの売上はほぼ全ての月で前年同月比100%超えとなっています。

そしてもう一点、餃子の王将が非常に力を入れているポイントがあります。この点こそが餃子の王将が客数を伸ばし、多くの人に選ばれている最大の理由です。

◆「腹減った。王将いこ?」ブランド力の強さ

餃子の王将が値上げにも負けずに客数を伸ばせている最大の理由、それは量が多く美味しいから(京都で大学時代を過ごした筆者も王将の大ファンです)。数十円の値上げ程度ではお客さんから見ても納得感のある範囲にとどまっているということです。

非常に単純な理由にも見えますが、当然これは餃子の王将の企業努力があってこその境地です。

餃子の王将は「人にしか創り出せない価値」に非常に重きを置いています。その一環として「王将調理道場」という調理技術を学ぶことのできる研修をLIVE配信。オンライン受講者は3万人を超えており、料理のクオリティを日夜高めて餃子の王将の美味しさを支えています。

この他にも店舗運営やマネジメント、もしくは王将の哲学を学ぶ研修などスキルや知識を学ぶ機会が複数用意されています。質の高いサービスを提供し続けられているのは餃子の王将が人材教育に力を注いでいるからこそです。

◆王将でしか食べられないメニューと味

餃子の王将の現状を見ると、料金に見合ったサービスを提供し、セールやキャンペーンによる戦略的な面での工夫があれば消費者は離れていかない可能性が非常に高いということにもなります。この点は他の企業でも参考にできる点と言えるかもしれません。

長年のデフレによって私たちは安さを求める習慣が定着しています。しかし、それはともすると「安かろう悪かろう」の粗悪品を生み、それを受け入れるサイクルを作ることにつながることもあります。

値上げでも、そこでしか食べられないメニューと味があれば顧客は離れないのです。

一周回って、「ちゃんとしたものをつくる」を徹底すれば、餃子の王将のように値上げの波に対しても抗える。王将モデルは、すべての企業にとって重要な示唆を与えてくれるのではないでしょうか。

<文/馬渕磨理子>

―[あの企業の意外なミライ]―

【馬渕磨理子】

経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi

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