『木梨憲武展 Timingー瞬間の光りー』内覧会レポート 見る人の気分を上げる、ノリさんのアート

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『木梨憲武展 Timingー瞬間の光りー』が、東京・上野の森美術館にて、2022年6月26日(日)まで開催中だ。

“とんねるずのノリさん” が、「現代アーティスト」というもう一つの顔を持っていることをご存じだろうか? 自らのアトリエを持ち、がっつりと創作活動に向き合っているという、ノリさんこと木梨憲武。実はこれまでに日本各地のほか、ストリートアートの本場・ロンドンやNYでの個展を開催し、着々とアーティストとしての歩みを進めてきている。

今回の『木梨憲武展 Timingー瞬間の光りー』では、約200点に及ぶ絵画、ドローイング、オブジェ、映像作品などが展示され、新作も数多く発表されるという。アーティスト・木梨の眼が捉えた“いま”を垣間見るチャンスだ。
会場・上野の森美術館
会場・上野の森美術館

本記事では、開幕前日に開催されたプレス内覧会の写真とともに、会場内の見どころをレポートする。彼の自由な感性の元に生み出される作品とは、一体どんなものなのだろうか?

世界はこんなにカラフルで

会場エントランス
会場エントランス

まず声を大にしてお伝えしたいのは「音声ガイドが楽しい!」ということ。ナビゲーターを務めるのは、タレント/映画評論家のLiLiCo。木梨本人と掛け合いをしながら作品のテーマや創作背景に迫っていくのだが、ノリノリのふたりのトークは、美術展の音声ガイドというよりもラジオ番組のよう。展覧会をより深く楽しむため、ぜひ利用したいコンテンツだ。
展示風景
展示風景

最初の展示室で出迎えてくれるのは、力強いタッチで描かれた《Flower》シリーズの作品たち。花の中心部がキラッと光った気がして近づいてみると、カラフルな絵の具に混ざって、マニキュアのようなラメ入りの塗料が使われていた。
展示風景
展示風景

ラメってなかなか美術館では見かけない質感だなぁ……と思った途端にハッとする。ラメを「美術館で展示される立派な作品」「大人の絵画」に使ってはいけない、なんて決まりはどこにも無い! そういえば子どもの頃大好きだったのに、自分はいつから何に遠慮し、忖度するようになっていたのだろうか。きっと作家の目には、花が虫を誘う引力がこんな風にキラキラと瞬いて見えるのだろう。冒頭の展示で、さっそく固定観念をガツンとやられてしまった。

他者へと手を伸ばして

展示風景
展示風景

続いては、木梨が30年以上描き続けているという《REACH OUT》シリーズの展示だ。たくさんの手が伸びたり繋がったりするモチーフは、ダイレクトに人と人との繋がり・助け合いを思い起こさせてくれる。キャンバスに描かれたペインティング作品のほか、中央に据えられた新作の《REACH OUT TOWER》や《REACH OUT-Glass》がパッと目を惹く。
《REACH OUT TOWER》の根元には、製作に携わったメンバーへのスペシャルサンクスの色紙が
《REACH OUT TOWER》の根元には、製作に携わったメンバーへのスペシャルサンクスの色紙が

《REACH OUT TOWER》は、金属加工の「浜野製作所」の協力を得て実現した大型作品で、高さは約3m。手の形をした金属板が複雑に絡み合い、迫力ある塊を構成している。ともすれば不気味にもなりそうな手のモチーフだが、透明感のあるライトアップも相まって、樹氷やクリスマスツリーを思わせる美しい仕上がりだ。
ぷっくりしたフォルムが可愛い《REACH OUT-Glass》
ぷっくりしたフォルムが可愛い《REACH OUT-Glass》

一方こちらは、富山のアーティストたちとの協働で生まれた《REACH OUT-Glass》。ひとつひとつの手は色も形も異なっており、じっと見ていると人そのもののように見えてくる。中には、手首の部分がグルグルねじれた少数の捻くれ者(?)もいて面白い。
展示風景
展示風景

そもそもこのシリーズは、キャンバスに油性ペンで描き進めたものが始まりだったという。こんなふうに丸いキャンバスを使った作品だと、手と手の繋がりが同心円状にどこまでも続いていくようでクラクラする。右手の作品のタイトルを見てみると……。
《REACH OUT》のキャプション部分
《REACH OUT》のキャプション部分

《REACH OUT》というタイトルの下に、木梨が後からマジックで書き加えたと思しき「サンゴショー」の文字が。アーティスト曰く、タイトルは一応あるけれど、見る人それぞれの自由な解釈で自分なりのタイトルを与えていい、とのこと。作品を前に、自分にはどんなものが見えてくるのか、鑑賞者同士で語り合うのも楽しそうだ。

2000体の妖精さん登場!

展示風景
展示風景

《フェアリーズ》の展示コーナーでは、その数に圧倒される。《フェアリーズ》は、段ボールや日用品の空き箱を利用して、ユーモラスな表情を持たせた小さな妖精たち。家庭内の段ボール処理担当だという木梨が、コロナ禍の自粛期間中に作り溜めたものも含まれる。本展では、なんと約2000体ものフェアリーズが展示されている。
展示風景
展示風景

よくぞこんなに! と驚くほど妖精たちは個性豊かで、中には名前がついているものも。段ボールは画材店で購入したものではなく、すべて、用を果たして捨てられる運命だったものが活用されている。ここ2年でネットショッピングにますます偏り、気づけば段ボールの使用量(そして廃棄量)がグンと増えた自分の生活を振り返ると、ちょっと胸が痛む。

なお隣には、お菓子や日用品の空箱を素材にした、カラフルなバージョンの《フェアリーズ》も展示されている。そちらは商品名のロゴを利用してさらに表情豊かな仕上がりとなっているので、ぜひ近くでゆっくり眺めてみてほしい。

広がっていく輪


さて、会場内には、少し雰囲気の違った作品が展示されている一角も。キャイ~ンの天野ひろゆきが15歳の時に描いた自画像《15の夜》が、特別展示されているコーナーだ。
天野ひろゆきの《15の夜》
天野ひろゆきの《15の夜》

この作品には、番組の企画でその作品を見て、木梨が惚れ込み、本展へのゲスト出品を急遽決めたという背景があるのだとか。確かに……暗くオレンジがかった皮膚や、アンバランスな左右の瞳が胸にグッとくる。作品をじっと眺めているのは、木梨が生み出した妖精のキャラクター“コッカ”だ。
《Noritake×杉田陽平》
《Noritake×杉田陽平》

さらに、『バチェロレッテ』出演で知られるアーティスト・杉田陽平とのコラボレーションも。アコーディオンのような樹脂のプリーツに鮮やかな色彩がのせられた、華やかな作品だ。

こうして自身の展覧会に他のアーティストの作品を織り交ぜることで、鑑賞者にとっても、別の才能との新たな出会い・繋がりが生み出されていく。これも木梨流の「REACH OUT」だと言えるかもしれない。

想いを花束にして

展示風景
展示風景

締めくくりとなる2階の展示室は、《感謝》と題された作品でまとめられている。カラフルなタッチがたくさん集まって花束になり、さらには大樹のように広がった美しいシリーズだ。中でも、白をバックにした大きな《感謝》は、本展が各地を巡回する先々で、色を重ねて成長を続けてきたのだという。近くで見ると色彩が額縁にまで及んでいるのがわかる。文字通り、感謝の気持ちが溢れているということだろう。
展示風景
展示風景

最後に、個人的に素敵だと思った作品を一枚。写真中央の《菜の花》だ。キャンバス全体に飛び散るライトグリーンの飛沫が、めちゃめちゃフレッシュ! 両サイドに展示された繊細な作品が黄色の力強さをさらに引き立てて、思わず足を止めて見入ってしまった。

いざ、エンジョイアート


この記事で紹介した作品は、展示の一部にすぎない。ほかにも「旅」をテーマに世界の風景を描いた作品たちや、富士山を自由な色彩で変奏していく《Mt. FUJI》シリーズ、本会場限定のARコンテンツなど、アーティスト・木梨の溢れる創作意欲に触れて、きっと誰もが前向きなエネルギーをもらうことができるだろう。いずれも色鮮やかで、理屈抜きに気分が華やぐ作品が多いのが印象的だった。
オリジナルグッズが豊富に揃うミュージアムショップ
オリジナルグッズが豊富に揃うミュージアムショップ

『木梨憲武展 Timingー瞬間の光りー』は、上野の森美術館にて、2022年6月26日(日)まで開催中。枠組みや決まり事にとらわれず、自由に創作活動を楽しんでいる木梨憲武。その流儀にならって、見る人も思い切り自由に受け止め、味わってしまおう。どちらがより面白がれるか、ノリさんとの勝負である。

文・写真=小杉美香

当記事はSPICEの提供記事です。

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