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イエモネ
私は白い虎になれるだろうか。何者かになろうとすることが、いつしか暑苦しいもののように思えてきたのはいつからだろう。それでも時たまチャンスの風みたいなものは私たちの頬を撫でてきて、納得しかけていたはずの現実を一転させる。「今ならできるかもしれない」と、無闇な勇気ばかりが首をもたげる。
そしてやっぱり、そのチャンスを掴もうと奮い立ってしまう気持ち、わかりますよ。
使われる側としての人生を生まれながらに決定づけられていた男が、幾度となくチャンスの風に吹かれて、少なくとも以前よりは生命力を手に入れるまでのサクセス(?)ストーリー。奪う側かむしり取られる側か、階級社会のなかで自分を見失わずに息をし続けられるのか。
勝者の人生を歩んできた人のオーラって凄いですよね。たぶん悪気はないんだろうけれど、みなぎるパワーに一種の暴力性をはらんでいる気がします。そして敗者はみるみる正気を、生気を奪われていく。
スラムドッグがミリオネアになる確率は、低いからこそエンタメになった。でも生活はエンタメじゃないし、弱い者には時間も余裕もない。本作の主人公は裁かれることを嫌っていました。「この物語を最後まで聞き終えるまでは」と。
彼は作中で二度失神するのですが、それだけ彼の精神力は並なんです。決して強くない。でも強いことの反対は弱いことだと安易に裏返すのは、失礼なことだと思いませんか。
彼の行動や言動は称賛できるものではありませんが、自分のことで精一杯のひとに正論でぶつかっても砕けるのはこちらでしょう。ぶっ倒れるほど自責して、彼が追い求めた結果、もしくは過程が現時点なのであれば観客の誰にも彼を裁く権利はないと思います。彼は根っこが優しいので、私たちにその権利を与えてくれていましたが。
運良くチャンスをモノにできた彼にまんまと煽られて、腹の底から湧きあがるパワーのようなものを感じました。負けないぞ。
Netflix映画『ザ・ホワイトタイガー』独占配信中
【公開】
2021年
【スタッフ・キャスト】
監督:ラミン・バーラニ
脚本:ラミン・バーラニ
出演:アダーシュ・ゴーラヴ
ラージクマール・ラーオ 他