映画『ラストレター』ラブレターが紡いだ記憶

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あなたは初恋の人を覚えていますか?

今回ご紹介する映画は、高校時代の淡い初恋を描いた『ラストレター』です。好きな人への手紙、いわゆるラブレターがこの作品にとってのキーアイテム。

鑑賞後に自分の初恋を思いだそうとしてみましたが、いつが初めての恋だったのか、もはやそれ自体がうろ覚えでした。
生涯忘れられない初恋の記憶がある方は、そんな甘酸っぱい記憶を思い出すきっかけになる作品かもしれません。

清い世界を映し出す“岩井美学”

監督・脚本は、『スワロウテイル』や『リリイ・シュシュのすべて』の岩井俊二。監督自身が書いた同名小説を原作としています。

岩井監督の故郷である宮城県が舞台。
思春期の少女たちの透明感と瑞々しさ、そんな彼女たちを照らす自然光がとても美しかったです。岩井監督作品から感じられる“岩井美学”が本作でも息づいていました。

そしてこの作品は、監督初の長編映画『Love Letter』に対するアンサー映画でもあるそうで、『Love Letter』に出演している中山美穂と豊川悦司が出てきたときは興奮しました。

書き続けたラブレターの真相

本作は、裕里(松たか子)の姉の未咲が亡くなったところから始まります。葬儀で、未咲の娘である鮎美(広瀬すず)から未咲宛ての同窓会の案内を渡された裕里は、姉の死を知らせるために同窓会の会場へと向かいます。しかし、そこで姉と勘違いされてしまう裕里。そしてその会場で初恋の相手である、鏡史郎(福山雅治)と再会することに。

ひょんなことから始まった、裕里と鏡史郎の文通。裕里は未咲のふりをして手紙を出し続けます。
その手紙は、次第に鮎美まで巻き込んで…。

彼らの紡いだ手紙は、未咲の死の真相、そして高校時代の淡い恋愛模様を映し出していきます。
もうこの世にいない相手のことを想いながら書かれた言葉が、次第に生きている人々の心を動かし、まるで未咲がまだ生きているような錯覚さえさせてしまうのでした。

清さと濁り

岩井監督の世界は、清さだけが描かれているわけではないんです。光があれば影があるように、人間の濁った部分、人の心の闇にまで触れられています。

未咲の死の真相のように、目を背けたくなるような事実を知っていく過程は、時に残酷で耐えがたいことかもしれません。それは同時に、人生は川面に光が反射するような美しい思い出だけではないことも教えてくれます。

そして、そんな光と影のある人生でも、誰かを想って書かれた手紙が、言葉が、心の支えになることをこの作品は伝えてくれているように思いました。
最後に、ラストレターの意味を知ったときは涙が止まりませんでした。

【公開】 2020年

【キャスト・スタッフ】
 監督・脚本:岩井俊二
 原   作:岩井俊二
 出   演:松たか子
       広瀬すず
       庵野秀明
       森七菜
       神木隆之介
       福山雅治 他