【ただ生きる】映画『オーバー・フェンス』フェンスの向こう側に行けなくたって

Oh!My!ムービー

無傷で大人になれたなら、まっさらなまま、関わりあえたなら。そんなことムリか。私たちは、傷つけあってここまでやってきたからこそ、他人を思いやれるのかもしれません。
人生の、上昇も下降もしないような取るに足らない「とある地点」で、偶然に出会っては惹かれあう大人たちの、いつか忘れ去ってしまいそうな、なんでもない日々の物語です。

大人は寂しいけれど

物語は、職業訓練校に集まった、年齢も背景もてんでバラバラな男たちin喫煙所だべりから始まります。ナンパ、合コン、女。話の内容は高校生なんかと大差なく、次の瞬間には風化していくようなくだらないものばかりで。でもその、「学校感」に救われたがっている登場人物たちの、束の間の逃避が描かれていたように思います。
すこし疲れたような風貌の大人たちが背負う問題はそれぞれで、皆くだけた口調でバカ話に終始しながらも、どこか距離を置いて互いへの干渉を避けているようで心地良い。

ただ生きるだけが難しい

群像劇は、「うまくやれない」人にいびつなスポットを当てながらゆっくり平坦な道を進んでいきます。
だれかを見下して冷笑しぐさでやり過ごすような、幼稚な人物が何人か出てくるんだけれど、彼らの人生は徹底的に空っぽで印象に残りません。そういう人の暇つぶしとして踏みにじられる側の人生に寄り添う物語がまた、やさしくて救われる。

笑っていてくれれば

訓練校で行われる小さなソフトボール大会、その目先の小山を登るために、とりあえず命をつなぐような生徒たち。そういうささいなイベントが、死なないで生きるための口実になるんだよなぁと思ったり。もしかすると、その為に開かれるって側面もあったかな。
「生きようよ」なんて大それたことは言えないけれど、「試合おいでよ」と肩を抱く。彼らの、不安定でフワフワした時間の進み方に、やはり観る側も救われるような作品でした。

映画『オーバー・フェンス』はDVD他、Amazonプライム・ビデオなど動画サブスクリプションサービスで観られます。
【公開】
2016年
【スタッフ・キャスト】
監督:山下敦弘

脚本:高田亮

出演:オダギリジョー
   蒼井優 他