入社1年で辞めた新入社員「自己成長ができる最強の環境」が「やりがい搾取」だったと気づくまで

日刊SPA!

 多くの企業が新入社員を迎え入れる春。新卒はもちろん、転職してきた人たちで職場の空気は一変する。だが、なかにはすぐに辞めてしまう新入社員もいるのだ。その理由は、いったい何なのか——。

就職活動中に「第一印象が良かった」という理由で選ぶこともあるだろう。しかし、働いていくうちに「なんか違う」と違和感を覚えて、転職を考える人も少なくないはずだが……。

◆「自己成長ができる最強の環境!」と豪語していたが…

和久井優斗さん(仮名・20代)は、大学時代の友人Sが入社後1年で退職してしまったエピソードを聞かせてくれた。

「Sとは、プライベートだけではなく就職活動でも共に切磋琢磨できる仲でした。ある日、彼としては珍しく興奮気味に語り始めたんです」

Sさんは、従業員30人程度の小規模な不動産会社に興味をもっていた。その会社のコンセプトは「挑戦」。社長は40歳くらいの若手でイケイケ系だったそうだ。

「社長の考え方が気に入ったそうで、特に『利益のためではなく、お客様のため、自分の将来のために働いてほしい』という言葉が刺さったそうです。そこで働いて、自分自身の性格を前向きに変えたいと思ったみたいで、見事に内定を獲得していました」

◆面接で聞かされていた理念とは真逆のゴリゴリ営業

和久井さんとSさんは、大学卒業後も近況報告会という名の食事会をしていた。入社して1か月後、「自己成長ができて最高の環境だ!」と目を輝かせながら話していたという。和久井さんもそれをいっしょに喜んだ。しかし、次第にSさんの様子が変わっていくことになる。

「入社して半年後、Sから意外な言葉を聞かされました。『ちょっとこの会社、思っていたのとは違うかも』。営業スタイルがゴリゴリだったそうで、お客さまの事情なんかお構いなしで、利益は取るだけ取るといった超利益重視の会社だったようです。

ただ、Sは『成長できているからいいんだけどね』と言って、無理やり自分を納得させている様子でした」

今思うと、そこで辞めるように諭しておけばよかったと和久井さんは言う。

◆“やりがい搾取”のブラック企業

「1年近く経ってから、いつものように食事に誘ったのですが『お金がない』と言うんです。奢ることを約束し、連れて行ったのですが……」

久しぶりに会ったSは、明らかに満身創痍だった。

「S曰く、『自己投資』という名目で残業をかなりさせられていたようで。当然、残業代も出ていませんでした。また、研修にも数多く参加させられ、全て自腹だったそうです」

研修費は平均5万円。多い時には10万円かかることもあった。Sは金欠でほぼ毎日カップラーメンを食べていたという。

「この食事会をきっかけにSもさすがにヤバいと思ったらしく、退職を決意したそうです。まさに、ブラック企業の典型的な“やりがい搾取”ですから」

◆野心の強い新入社員が「トップになれない」と悟って転職

持田明美さん(仮名・30代)は、都内の携帯ショップに勤務していた頃に出会った同期のNについて話してくれた。

「四大卒業後、1年を経て入社したN。とにかく『トップに立ちたい』という野心溢れる熱い性格の男でした。何事にも一生懸命で学ぶ姿勢があり、上司、先輩、同期にも『教えてください』と声をかけているほどでした」

前職で接客業の経験がある持田さんにも「きれいな“いらっしゃいませ”を教えてほしい」と言っていたそうだ。

◆営業熱心が裏目に! クレームになることも…

「Nは、ショップ内で営業ナンバーワンになることを目指していました。熱い接客……なのですが、特にイケメンではなく説明も下手。『これいいですよ』がNの売り文句でしたが、お客さんには、しつこくてくどいと思われてしまったようで、成約にはあまりつながっていませんでした」

さらに凡ミスを連発するのでクレームも多かった。当初は呆れていたが、良くも悪くも“いつでも全力投球”の姿勢に、上司や同僚たちは感心してしまうほどだった。

とにかく野心が強く、店長に「自分が上司になったら面接でどんな人を採用すればいいのか」「どうすれば出世できるのか」「何をすればとにかく偉くなれるのか」を尋ねていたという。

「店長は質問に対して『顔の良い奴を選べばいいんだよ』とか適当に答えていたのですが、Nは真面目にメモしているんです」

◆2度のスピード転職で六本木のベンチャーに

しかし、2か月もすると、この仕事ではトップに立てないことを悟ったようだ。

「彼は転職を考え始めていました。まだ退職していないにもかかわらず、それを大っぴらに話すので同僚たちは苦笑い。結局、コンビニの運営会社の営業に転職したようです」

しばらくして、持田さんにメールが届いた。

「転職先のコンビニでは、まずは店員として勤務していたそうですが、アルバイトが来ない日もあったり、夜勤もあったり、キツすぎてすぐに辞めたとか……」

あまりにもだらしないと思ったが、この話には続きがある。その後、六本木のベンチャー企業で元気に働いていると報告があったのだ。

「常識が足りないNですが、六本木でやりがいのある仕事を見つけた彼の野心には、再び感心しましたね」

何事も前向きに捉えて、勝てないと悟ったときの切り替えの早さは、ある意味でベンチャー向きか。

前出のSさんは心身ともにボロボロになりながらも働き続けていたが、Nさんのように「自分に合わない」と思ったら早々に見切りをつけることも自分らしさを失わないためには大事なことなのかもしれない。

<取材・文/chimi86>

―[すぐに辞めた新入社員]―

【chimi86】

ライター歴5年目。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。Instagram:@chimi86.insta

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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