「モテた経験のない既婚者」だけは気を付けて…こういう結末になるから【不倫の精算#50】後編

OTONA SALONE



後ろ指をさされる関係とわかっていても、やめられない不毛なつながり。

不倫を選ぶ女性たちの背景には何があるのか、またこれからどうするのか、垣間見えた胸の内をご紹介します。

モテた経験のない既婚男性って、大抵の場合こういう「暴走」をする




注文した料理が届き、Gさんはマスクを外してガムを出す。

「あの人に無茶な残業を言われて、それを気にしてくれた人がいたんです」

手を合わせてから箸を取り、小さな声で続けた。

「そうだったんだ」

その「残業」が、人がいなくなったフロアでの行為が目的だと想像できたので、思わず眉をしかめた。

「それで、私に大丈夫かってこっそり聞いてくれて。

おかしなことになっているなら、俺が上に話すよって。

そうですよね、残業してまでやることじゃない仕事を押し付けているって誰でもわかるし、何かあると思いますよね」

お味噌汁の椀を持つGさんの手は美しく伸びており、指先で光るネイルは新しい。

そこに目が止まるのは、彼女が「ちゃんとしている」状態だと伝わるからだった。

「うん」

「でも、本当のことなんて言えないじゃないですか。不倫だし。

それで、大丈夫ですよって答えたのですが、次の日にその人が『派遣の人に残業させるのはおかしい』とあの人に直談判して。

それであの人が怒っちゃって」

雰囲気が最悪でしたよ、とつぶやいてGさんはお味噌汁を口に含む。

「ごめん、こんな言い方おかしいのかもしれないけど、まともな人がいてよかったね」

職場を不倫に利用する既婚男性はこれまでも聞いてきたが、特に立場が上の男性の場合、周囲が不自然さに気がついても本人に直接言うなんてことはほとんどない。

「はい」

椀を戻してサラダの小皿に目をやりながら、Gさんが答えた。

「それを上の人たちも知って、これまで派遣社員の人に残業はさせなかったのに私だけ残業代が発生していることをあの人は聞かれたと思うけど、◯◯さんから事情を聞かせろって電話が来ました」

◯◯さんは派遣会社のコーディネーターだが、女性でいろいろと親身になってくれるという話は聞いていた。

「それで、あの人からセクハラされてますって言いました。

やめるなら今しかないと思って」

でも、不倫相手を「セクハラ」に問うのって、やっぱり


Gさんと不倫相手の彼が普段どんな関わり方をしていたか、LINEや電話ではどんな様子で、体を重ねるときはどう接してくるのか、詳しくは聞いていない。

その「報告」がない時点で、彼女自身この不倫を楽しんでいるとは思えなかった。

「そうだったんだ。

まあ、セクハラだよね、ふたりきりを狙って残業を押し付けるわけだから」

小鉢の煮物を口に入れて「美味しい」とつぶやいていたGさんは、大きく首を振った。

「私は嫌だって言ったんですよ、仕事とプライベートはちゃんと分けてくださいって。

それを無視して俺の言うことを聞け、ですからね。

さすがに無理でしょって」

それでも彼女の口ぶりに何となく歯切れの悪さを感じるのは、やはりこの騒動の原因が自分にあると思っているからだろう。

上司のやり方は明らかに間違っているが、それを生んでいるのは不倫なのだ。

「体を触られなくても、立場を利用した残業の強制とかふたりきりの空間をあえて作るとか、そういうのもセクハラになるそうです」

「問題だろうね、今までの派遣さんにはそういうのがなかったなら、なおさら」

その後の経緯について淡々と話しながら、食事を続けた。

和食を選んでよかった、美味しいですねとときたま笑顔を見せるGさんだったが、口調はやはり慎重で、安易な不倫が起こした騒動を悔やんでいることは伝わった。

ね、最初に浮かれてないで、あとのことまで考えないとならなかったね


盆が下げられて食後のコーヒーが出ると、Gさんはふたたびガムを手に取った。

「本当にお疲れさま。

何とか辞められてよかったよ、本当に」

淹れたてがわかる香りの高さを楽しみながらそう言うと、Gさんはこちらを見て

「あの人のLINEとか電話とか全部ブロックしたんですけど、いいですよね?」

と聞いてきた。

「え?

そりゃもちろん、ブロックしておかないと辞めた後こそ何を言ってくるかわからないよ」

派遣を終了させた、会社でのつながりが消えたということは、逆にいえば今までより自由にアプローチできるということだ。

実際に「ヤバい既婚者側」が追ってくるケースはある。

ですよね……とつぶやくGさんの表情は暗く、「どうかしたの?」と尋ねると

「私、住んでいるアパートを教えているんですよね、あの人に」

と低い声で答えた。

「それは……」

「……」

気まずい沈黙は、ブロックを知った上司が家まで押しかけてくる可能性が決して低くないことにふたりとも気がつくからだった。

「いやでも、そこまでするかな、会社からも怒られただろうし」

「その分別があるといいけど……」

「その分別」がないからこんな暴走を起こすのだ。

そして、幼稚な人間ほど自分から離れていくものにやみくもに執着するのも、よくあることだった。

不倫をやめても、心は開放されない。

「期間限定」のつもりが、最悪とも呼べるような終わり方になり、彼女の不安はいつまでもつきまとう。

Gさんがまともな精神状態だからこそ、相手の出方を冷静に想像する。

不倫が世間にバレてしまえば、立場が危うくなるのは彼女も同じなのだ。

「……」

こればかりは、こちら側にはどうすることもできなかった。

「引っ越ししようかな」

その言葉には、今日一番の力がこもっていた。

当記事はOTONA SALONEの提供記事です。

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