ゲーム実況は善か悪か?メーカーに隠れて“三店方式”で収益化を図る配信者も

日刊SPA!

―[絶対夢中★ゲーム&アプリ週報]―

◆動画時代の新たな娯楽となったゲーム実況

一般人だけでなく、VTuber、お笑い芸人、タレント、元スポーツ選手などが次々と参入し、今やすっかりエンタメのひとつとして定着したゲーム実況。

私の話になりますが、PS1時代の1999年頃に普通の中学生にファミコンのゲームを遊んでもらい、ゲーム中の感想やリアクションを文字に起こすという企画を自分のサイトで展開していました。テキストベースながら言ってみればゲーム実況の走りのようなもので、これが好評を得て、後にゲーム誌の連載にもなりました。

ただ、連載の企画が通るまでは「ゲームはあくまで自分がやるもの、他人がゲームをしているのを見て面白いわけがない」「攻略情報や裏技ならともかく、単なるプレイの様子をそのまま伝える意味がわからない」とさんざん言われました。それを思い出すと隔世の感がありますね。

少し脱線しましたが、このゲーム実況、現状は各メーカーがガイドラインを出し、それを守ることでライブ配信やプレイ動画を公開することが認められています。メーカーによって基準はさまざま。任天堂は2018年11月に、「ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」を発表し、個人の動画実況の収益化について、指定のシステムを使う限り「著作権侵害を主張いたしません」と表明しています。

また、タイトルごとにガイドラインが引かれるケースも多く、アトラスの『真・女神転生V』(2021年発売)では「配信禁止区間」が設けられ、エンディングは配信禁止。イベントシーンなどを配信する際には「ネタバレあり」などの表記が必要となっていました。

◆投げ銭での収益に対してメーカーは?

ストーリー上のネタバレや、主題歌など他の著作物がゲームに使われている場合での注意事項が大半ですが、今年2月25日に発売された世界的な大作『エルデンリング』に合わせて改訂されたフロム・ソフトウェアのガイドラインには、「スーパーチャット(スパチャ)」に代表される投げ銭についての言及が明確にありました。

「投げ銭やスーパーチャットなど、視聴者から直接金銭の授受を行う機能を利用した収益化や、メンバーシップなど有料会員登録者限定の動画投稿に使用することは原則として禁止させていただきます」(※3月15日に動画に対する投げ銭機能「スーパーサンクス」も「金銭を送らないよう注意喚起をするようお願いいたします」と追記)

フロム・ソフトウェアのゲームに関し、実況動画の広告収入は認められるものの、視聴者が直接投げ銭をするいわゆる「スパチャ」は禁止。現在、大手VTuberや人気ゲーム実況者ともなるとライブ配信でのスパチャはかなりの額となります。1万円単位のスパチャが乱舞し、特別なイベントでなくても1日で軽く総額100万円を超えることも。

このスパチャを禁止された一部のゲーム実況者が編み出したのが、俗に「三店方式」と揶揄される手法。ゲーム実況ライブではスパチャ機能をオフにし、直後にゲームをしない別の枠を開いてそこでスパチャをもらうというもの。

パチンコ店を出たあとに別の店で換金する方式とイメージがかぶるためか、「三店方式」と呼ばれます。この集金方法に対して、モラルの問題を指摘する声や、「こうしたことを続けているとゲーム実況自体が禁止されてしまう」といった心配の声が上がっていました。

◆ゲーム実況の拡大は何をもたらすのか?

ことさらこの一件がどうというわけではなく、「ゲーム実況」というジャンルが拡大し、動く金額が莫大となったことである種の歪みが顕在化してきたと考えられます。

ここで浮かび上がってくる論点は主に3つではないでしょうか。1つ目は「メーカーや開発元に十分に還元がなされないゲーム実況はありか?」。ゲーム実況が宣伝となり売上が伸びるゲームは確かに存在します。しかし、それだけの還元では不十分に思えるほど、配信者の収益を上げる素材として消費されている感があります。ゲームの腕や話術が投げ銭に結びついているのはもちろんとはいえ、どこか納得がいかないという人も多いでしょう。

2つ目は「ゲーム実況動画だけで満足する“見るゲーマー”の増加」。ゲーム実況の視聴者が「このゲーム面白そう!」と思いソフトを購入するというのがひとつの理想形です。しかし、「ゲーム実況だけでお腹いっぱい。実際にゲームをやる気は起きない」「ゲーム実況を見ればプレイした気分になる」といった感想がよく見られます。スパチャを伴ったゲーム実況ライブが今後ますますエンタメビジネスとして盛り上がることで、「プレイヤー(配信者)」と視聴者の分離が進むかもしれません。

◆ゲーム体験を奪われるという問題点

3つ目は「クリエイターが意図していない、コンテンツの消費のされ方について」。ストーリーが簡単に明かされてしまう、敵の攻略法があっという間に広まってしまう……といったマイナス面がゲーム実況にはついて回ります。それだけではなく、当たり前ですが、大部分のクリエイターがプレイされることを前提にゲームを構築しています。自主的にキャラを動かして、悩んだり、迷ったりして閃くことをゲーム体験として組み込んでいる場合も多いでしょう。それがゲーム実況の場合、1人がプレイし、何千、何万の人が実況付きでそれを見るという受容のされ方になります。そうした根本的な歪みもあるでしょう。

動画時代に花開いたゲーム実況は、文化として成熟していくのか。ゲームクリエイターとメーカー、ゲーム実況者はどのような関係性、バランスを保つべきか。悩ましい問題です。

今後はゲーム実況を念頭に置いた収益構造の確立を目指すメーカーも出てくるかもしれません。クリエイター側も遊んで楽しいゲームではなく、実況される余白を残し、大人数が視聴することで成り立つゲームを模索するかもしれません。ゲーム自体がどう変わっていくかも気になるところです。

<文/卯月 鮎>

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【卯月鮎】

ゲーム雑誌・アニメ雑誌の編集を経て独立。ゲーム紹介やコラム、書評を中心にフリーで活動している。雑誌連載をまとめた著作『はじめてのファミコン~なつかしゲーム子ども実験室~』(マイクロマガジン社)はゲーム実況の先駆けという声も

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