【大河ドラマコラム】「鎌倉殿の13人」第10回「根拠なき自信」生き生きとした三谷脚本が際立たせる女性たちの活躍

エンタメOVO


 兄・源頼朝(大泉洋)に従って常陸の佐竹氏征伐に出陣し、誰もがあっと驚くような作戦を立案しながらも、その実力を発揮する機会もなく鎌倉に戻った義経(菅田将暉)。

膝枕をした上で、「誰もが考えつかなかったようなことを九郎殿は思いつかれた。素晴らしいではないですか」と慰める兄嫁・政子(小池栄子)に、「姉上のお声は、いい響きだ」とうっとりしたように答える。

そんな義経に、「私にできるのは、話を聞くことぐらい。つらいときは、いつでもおいでなさい」と応じる政子。

3月13日に放送されたNHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第10回「根拠なき自信」の終盤で繰り広げられた一幕だ。政子に膝枕をさせる義経の大胆さにはまたしても驚かされたが、それに加えて、女性の活躍が際立つ本作を象徴するシーンとしても印象に残った。

武士を中心に動き、女性が表舞台に立つことが少ない封建時代の歴史を題材にした時代劇で、女性の活躍をどう描くかは、課題の一つでもある。

半世紀を超える大河ドラマの歴史を振り返ってみても、来年放送予定の「どうする家康」までの62作中、女性主人公の作品は男性とダブル主演を含めて14作(うち2作は明治以降の近現代が舞台)と少ない。

時代の移り変わりを反映してか、そのうち7作が2002年以降に集中しており、特に11年の「江~姫たちの戦国~」から17年の「おんな城主 直虎」までは、1年おきに女性主人公が登場したものの、その後は再び男性主人公の作品が続いている。これは、女性を活躍させることの難しさを示す指標の一つといえるのではないだろうか。

そういう意味で「私にできるのは、話を聞くことぐらい」という政子のせりふは、当時の女性の立場を端的に表現している。にもかかわらず、言葉とは裏腹に、この場面はその奇抜さもあり、強く印象に残った。

恐らく、物語が完結した後も「義経に膝枕をする政子」は、名場面(迷場面?)として視聴者の記憶に残り続けるに違いない。

この回は他にも、頼朝を巡って前妻の八重(新垣結衣)を陥れる愛妾の亀(江口のり子)…といった女同士の火花散る戦いが描かれていた。そんなふうに、封建社会を背景にしながらも、女性たちの活躍が印象的な点が本作の特徴だ。

もちろんそれは、後に“尼将軍”として主人公・北条義時(小栗旬)と共に、鎌倉幕府を動かしていく政子の存在や、“亀の前騒動”と呼ばれる事件など、史実が残っているからこそ可能なことではある。

だが、三谷幸喜の巧みな脚本には、「史実だから」という一言に収まらない生き生きとした人物描写があるように思う。それは、何げない場面の描き方によく表れている。

例えば、第5回。頼朝の挙兵を受け、政子たちが北条邸から伊豆山権現に避難した場面。身分を隠す必要に迫られた政子たちは、地味な作業着に着替え、寺女として掃除などの作業に従事することを求められる。

継母・りく(宮沢りえ)や妹・実衣(宮澤エマ)が渋る中、政子は「佐殿たちは命がけで戦っておられます。これは私たちの戦です!」とビシッと告げる。

一見、何でもない場面で、普通であれば、政子の覚悟を示すこの一言だけで済むところ。だが、そこに「身重なんですけど…」とやんわり嫌がるりくや「帰りたい…」と愚痴る実衣とのやりとりを交えることで、それぞれのキャラクターが引き立ち、シーン自体がより印象深くなる。その積み重ねが、後々、りくや実衣たちの活躍を描く際に生きてくるに違いない。

その裏付け、というわけでもないが、三谷作品で女性の登場人物として印象に残っているのが、「真田丸」(16)で主人公・真田信繁(堺雅人)の幼なじみとして登場したきり(長澤まさみ)だ。

放送開始当初は、「うざい」などと批判を浴びながらも、最終的には見事に物語を締めくくり、喝采を浴びたことを覚えている人も多いだろう。

制作統括を務める清水拓哉氏は、放送開始前のインタビューで「当時の女性は一般的に日陰の存在で、政子だけが特別だった、というわけではありません。他にも、自分の夫を操り、積極的に舵取りをしていく強い女性たちが次々に登場します」と語っており、更なる女性たちの活躍が期待される。

また、今後も、義時の正妻・比奈(堀田真由)、義経の愛妾・静御前(石橋静河)、義経の正妻・里(三浦透子)といった女性たちの登場が、演じるキャストと共に発表されている。彼女たちの史実を基に、三谷がどのようなドラマを編み上げていくのか。その行方も楽しみだ。

(井上健一)

当記事はエンタメOVOの提供記事です。

ランキング

ランキングをもっとよむ

注目ニュース

注目記事をもっとよむ