今井大輔の漫画『ヒル』『ヒル・ツー』(新潮社バンチコミック)が『WOWOWオリジナルドラマ ヒル』としてドラマ化される。6話ずつ2シーズン構成の同作で主演を務めるのは、赤楚衛二(Season1)と坂口健太郎(Season2)。同作で久々の共演となった2人に、作品の魅力や撮影中のエピソード、お互いの印象について話してもらった。
真夏の撮影でアクションシーン “汗をかかない”設定に苦戦
――今回お2人が主演を務める『WOWOWオリジナルドラマ ヒル』は、他人に寄生して生きるヒルたちの運命と、格差社会の闇を描く社会派復讐サスペンスドラマと聞いております。原作を読んでの印象や、脚本を読んでのおもしろさを教えてください。
赤楚:原作を読んで、法や秩序が成り立たない世界が、すごくリアルに描かれているなと感じました。日常に潜んでいてもおかしくないような世界ですし、もし存在していたら怖いなと。原作では『ヒル』からの『ヒル・ツー』の流れなのですが、ドラマでは『ヒル・ツー』からの『ヒル』という流れになっているので、ヒルの世界がどういうものなのかを、僕が演じたユウキとともに追体験できるんじゃないかなと思います。
坂口:『ヒル・ツー』からの『ヒル』という流れにしたことで、ヒルが身近な存在にあるということを、より感じてもらえるのかなと思いました。シーズン1ではユウキの逃亡劇、追い詰められていく絵を見て、ヒルがどういう存在なのかを理解する。そして、シーズン2ではカラが何と戦うのかを感じてもらえるのかなと。1つの作品として見た時に、いろんな楽しみ方ができるんじゃないかなと思います。
――もしもご自身が、不法滞在者“ヒル”に寄生されていたらどうしますか?
坂口:今、僕がこうやって仕事に出ている間に起きているかもしれないですからね。でも、意外と平気かもしれないです。家の中にあるものを破壊されたら嫌ですけど、ヒルも気づかれないように最低限の守ることは守ってくれるんじゃないかなと思うので、危害がなければ大丈夫かも。いや、「大丈夫」以前に、気づかないかもしれません。
赤楚:僕は気づくと思います。この作品が終わってから、シャンプーだけ透明のボトルにしたんです。「あれ? 最近減りが早いな…」と思えたら気づけるかなと思って。微々たるものですし、1日、2日だとわからないかもしれませんが…。
――赤楚さんは、見知らぬ男に身分を奪われ、殺人未遂罪で警察に追われるユウキ役を、坂口さんは“ヒル狩りのカラ”の異名を持つ伝説のヒル・カラを演じたとのことですが、演じる際に、大変だったことがあれば教えてください。
赤楚:監督から「アクションも、走るのも全力で」とオーダーをいただいて大変でした。また憎悪をぶつけることの難しさを感じました。普通に生きてきたら、なかなか出てこない感情なので、どうしたらいいんだろうと。ただ、監督が「自分の大切に思っている人が殺されたら?」とか「自分の名前を奪った人が目の前にいるんだよ」と具体的な例を出してくださったので、想像しながら作り上げていけました。
坂口:同じくアクションシーンは大変でした。アクションではカラの持つ正義の鉄槌(てっつい)感を出したいということを提案していただいたので、正攻法で戦っているんです。見ている方には、そこまで伝わらないかもしれないんですけど、ここまでしっかりとしたキャラ付けがされているというのは、個人的にすごく気持ちが乗る感じがありました。
それと「カラは汗をかかない」という設定があって、すごく苦労しました。撮影が行われたのが「熱中症に気をつけて」と注意喚起されるような夏の日だったので、監督に言われたときは「いや、汗かくぜ」と思いましたね(笑)。実際に、カラは白のシャツを毎回着ていたのですが、そこに汗がにじむとシャツを脱いで、乾かしてもらって…と大変でした。
お互いの印象は? 坂口は「“チーズちくわ”のような人」(赤楚)/赤楚は「これからがすごく楽しみ」(坂口)
――お2人が共演されるのは、坂口さんが主演を務めたドラマ『イノセンス 冤罪弁護士』(日本テレビ系/2019年放送)以来ですね。共演してみていかがでしたか?。
赤楚:お話をいただいた時は、坂口さんのシーズン2にバトンを渡す立ち位置ということで大役だなと思いました。また直接的に共演したシーンは少ないけれども、同じ作品として参加させていただけるのは、とてもうれしかったです。
坂口:僕もうれしかったですね。赤楚とはよくご飯を食べに行ったり、電話をする近しい後輩ということもあり、すごく楽しかったし、心強かったです。ただ…2シーンしか一緒のシーンがなかったので、がっつり組んだという感覚はちょっと薄いんですよね。もうちょっと一緒にやりたかったなというのが本音です。
赤楚:僕、がっつり2人で共演したシーン、「ヒルとしての覚悟はあるのか」って問われるシーンがかなり印象に残ってます。あのシーンで立っているカラと、寝転がっているユウキの構図などを提案してくださったときに、頼もしい先輩だなって改めて感じました。
坂口:全然そんなことないんですよ。役者として先輩後輩ではあるんですけど、役をもらって相対するときには、1人の役として出るから、僕自身、気兼ねなく一緒に作品を作れたなと思います。赤楚と「このとき、ユウキとカラの対比がこう見えた方がいいよね」と話しながら作れたのは良かったです。
――坂口さんから見て赤楚さんは「よくご飯を食べに行ったり、電話をする近しい後輩」とのお話がありましたが、お互いの印象を一言で教えてください。
赤楚:難しいですね、一言で言い表すのって。坂口さんは、自然体で飄々(ひょうひょう)としていて、だけれども、すごくちゃんと立ってる…。何て言えばいいんでしょう…チーズちくわみたいな?
坂口:どういうこと?
赤楚:ちくわの中に、太い針金を入れたような人かなって。
坂口:柔らかく見えるんだけど、芯があるみたいな?
赤楚;まさにその通りです!
坂口:僕、ちくわの中に芯がある人って書かれちゃうと思うんだけど、大丈夫?(笑)。
僕から見た、赤楚はこれからがすごく楽しみな人ですね。ご飯を食べに行ったり、電話をしたりして、赤楚の話を聞く機会がちょいちょいありました。その時に「きっと赤楚は今、もがいてるときなんだろうな」って感じたんです。それは赤楚自身というよりも、周りからの見られ方が目まぐるしく変化しているから。僕自身、経験したことがあるからこそ、そう思いました。それを見ていたからこそ、今話していて、ふっと抜けたなと感じます。だから、これからが楽しみだなって。
赤楚:あの…僕、やり直した方がいいですよね? 本当に助けてもらいました。
坂口:後から付けなくていいよ!(笑)。
赤楚の誕生日に2人で1日ショッピング 「結構はしゃいだよね」(笑)
――お2人はどういう時に連絡を取り合うのですか?
赤楚:多くはないんですけど、でも基本は僕からお電話させていただいていました。僕が悩んでいたことを、坂口さんも経験をしてすでに解決されてるようだったので、そこのヒントを得たいなって。
坂口:赤楚から「話があって…電話させてもらっていいですか?」ってメールが来て電話するみたいな感じだよね。少しずつキャリアを重ねていく上での現場の居方、俳優としてのあり方みたいな話、そこから派生して、作品にどうやってアプローチしていくかとか、今の現場はどうなのかみたいな話をしました。
赤楚:以前は「相談するなんておこがましい」と思っていたのですが、坂口さんが僕の誕生日をお祝いしてくれたタイミングがあって、ちょっとお願いしてみようかなと思ったんです。
坂口:そうだった! 赤楚の誕生日の前日ぐらいに、ご飯を食べる約束をしていて「誕生日近いなら、どっか行く?」って急きょお祝いしたんです。2人でショッピングをして、その後お茶をして…楽しかったよね。
赤楚:服だと形に残るから、服が欲しいと言って、連れて行ってもらいました。午前から集まったのに、夕方くらいまでお洋服を見てましたよね。
坂口:そうそう! とりあえず、赤楚に服を着せまくったよね。「これも着てみればいいじゃん」「僕写真撮るから、あとで見てみようよ」って(笑)。「さっきの店のこれよかったよね」って話したりしながら、たくさん回りました。結構はしゃいだよね(笑)。
赤楚:スタイリストさん並に見てくれました。服って、友達と行くのも気を遣っちゃうし、1人で買いに行くことの方が多いじゃないですか。だから、先輩と服を見に行くなんて新鮮でしたし、本当にありがたかったです。
――最終的にはどんなものをプレゼントしてもらったのでしょう?
坂口:デニムコートだよね! 着てる?
赤楚:着てますよ! 長く使えるぐらいかわいい服だなってお気に入りです。
坂口:ちょっと飽きたら寝かしておいても良いんだからね。
――すごい仲が良いんだなというのが伝わってきました。ところで、坂口さんは赤楚さんのことを「ア(↑)カ(→)ソ(→)」と呼ばれているんですね。
赤楚:本当は「ア(↑)カ(→)ソ(→)」が正しいらしいんですけど、「ア(→)カ(→)ソ(→)」の発音で呼ばれることが多くて、自分でも、どちらかわからないんですよね。会社の人はみんな「ア(↑)カ(→)ソ(→)」呼びなんですけど。
坂口:「ア(↑)カ(→)ソ(→)」だと思っていたけど、言われてみればそうだね。珍しい苗字だもんね。
赤楚:それで僕は「坂口くん」か、「グッチさん」って呼んでます。坂口さんだと少し遠い感じがするので、あだ名は付けたいけど、“さん”は付けたいなって。それでグッチさんと呼んでいます。
ーー最後に次回共演するなら、どんなジャンルの作品で共演したいかを教えてください。
坂口:別の取材でも質問されたのですが、それとは違うやつ。毎回この瞬間に思った役を答えよう!
赤楚:はい。そうしましょう。ジャンルは、どうしましょう。誰かを挟んでの恋愛ものなのか、アクションか…家族ものだと顔違いすぎますもんね。
坂口:家族ものなら、血のつながってない家族とかどう?
赤楚:じゃあ、仲は良いけど心の奥底でつながっていないことをコンプレックスに思っているみたいなところが始まりで、結末はそこら辺を乗り越えて、やっぱり家族って血がつながっているだけじゃないよねというようなドラマはどうですか?
坂口;海で終わりたいな、そのドラマ!
赤楚:となると、朝日のシーンから始まって…。朝3時ぐらいからの入りで撮影ですかね。
坂口:ちょっとしんどいけどイイね!
(取材・文:於ありさ 写真:高野広美)
『WOWOWオリジナルドラマ ヒル』はWOWOWにて3月4日23時より放送・配信スタート(全12話)。