2022年注目の人・黒島結菜 「作品に向き合い、思い切り楽しむ」1年に

 2013年『ひまわり~沖縄は忘れない あの日の空を~』でスクリーンデビューを果たした女優の黒島結菜。その後は、透明感あふれるビジュアルを生かした爽やかなキャラクターを演じることが多く、主演を務めたドラマ『アシガール』(NHK総合)は高い評価を受け、2022年前期連続テレビ小説『ちむどんどん』(NHK総合)ではヒロインの座を射止めた。一方で最新作『明け方の若者たち』では、これまでとは趣の違う女性を演じ、役柄の幅の広がりを印象づけた。映画、“朝ドラ”と注目されるだろう2022年。黒島は「目の前の作品に向き合って、思い切り楽しみたい」と笑顔を見せる。

ラブシーンに「迷いはなかった」



カツセマサヒコの小説を実写映画化した『明け方の若者たち』。本作で黒島は、参加していた学生同士の飲み会を抜け出し、北村匠海ふんする主人公“僕”に「私と飲んだ方が、楽しいかもよ笑?」というショートメッセージを送り、恋をスタートさせる魅惑の“彼女”を演じている。

「台本を読んだとき、この恋愛にはあまりリアリティーは感じなかったんです。だってあんな誘い方あります?(笑)。かなり強気ですよね。私の中にはない言動です。男性目線で見ると『こんな彼女いたら、惹(ひ)かれちゃうかも』と思いますが、それだけ魅力的な女性なので、正直最初は『私で大丈夫なのかな』という思いもありました」。

さらに、ある意味で“彼女”は“彼”を翻ろうする。劇中には大胆なラブシーンもある。黒島の新たな一面に驚く人も多いのではないか。

「“彼”よりも大人に見せるために考えたのが、とにかく“彼”のことをかわいいと思うこと。そうすると自然にお姉さん感が出ると思ったんです。撮影中はあまり表には出しませんでしたが、意識の中ではずっと『かわいい、かわいい』と思いながら演じていました。ラブシーンに関しては、北村くんとは共演も3回目ですし、彼も大人なので思ったよりも迷いはなかったです。松本(花奈)監督が女性で同世代ということで、安心して任せられるというのも大きかったと思います」。

黒島の言葉通り、松本監督をはじめスタッフ、キャストはほぼ同世代。そんな空気感も、作品作りでは大きかったようだ。

「年齢が近い人たちが多く、現場の雰囲気も良かったので、自分からいろいろと提案するなど、お芝居にしてもチャレンジしやすかった。私自身も脚本に書かれたセリフが、とてもナチュラルだったので、“彼女”という役の中に、自分の普段のしぐさだったり、癖だったりをあえて控えるのではなく、そのまま出しています」。

「傷つきたくないから、自分に期待しない」 作品には100%で向き合う



“僕”と“彼女”の恋愛模様が描かれる一方、学生から社会人になったとき、理想と現実の壁にぶち当たる若者たちの葛藤も本作の大きなテーマだ。

「私自身は壁にぶち当たったな…と感じることはなかったんです。だからこそ逆にこの作品に出てくる人たちが、現実に押しつぶされてしまったり、裏切られてしまったりする中、一生懸命に夢に向かって進んでいく姿はすてきだなと感じました」。

壁にぶち当たらなかった=順風満帆な人生…というわけではないようだ。

「私は壁にぶち当たる前に、自分で壁を作ってしまう癖があるんです。簡単に言えば傷つきたくないから、あまり自分に期待をしない。期待し過ぎて、結果が伴わないと落ち込むじゃないですか。小学生や中学生の頃からそういうタイプでした。このお仕事を始めたときも、“役を勝ち取りたい”という欲がなかったから、あまりオーディションに受からなかったんです。そんなとき当時のマネージャーさんから『悔しいとか思わないの?』と怒られるのですが、『あんまり悔しくないです』なんて答えていましたからね(笑)」。

浮き沈みの激しい芸能界を生き抜くための、黒島なりの処世術。心に大きな負担を掛けずに、フラットに臨むことで自分の持っている力を最大限に発揮する。

「『絶対にこうしたい』という欲はないのですが、作品には100%で向き合っています。自分のできるベストを尽くして、その結果をフラットに受け止める。自分にプレッシャーを掛け過ぎずに、どこかで余白を残す方が、良いパフォーマンスを出せるような気がしています」。

しかし、こうした考えもいつかガラリと変わるかもしれない――という思いもある。

「今はこういった心の持ちようで、それを『変えなきゃ』という思いはないんです。でも、今考えていることが、10年後も同じかどうかは分からない。もしかしたら、すぐに『心から達成したい!』というものに出会い、もがき苦しむ状況になるかもしれないです。そればっかりは分からないですよね」。

“朝ドラ”に挑む2022年「作品に向き合って、思い切り楽しみたい」



2022年は本作をはじめ、連続テレビ小説『ちむどんどん』ではヒロインという大役を務める。

「2021年は、時間的にも余裕があり、ゆっくりと自分を見つめ直す時間ができたんです。そこで冷静に自分の心に向き合って、いろいろなことを考えました。一番の気付きは、自分のことを少し認められるようになったこと。もちろん自分のイヤなところ、直したい部分もありますが、全部否定するのではなく、そういう自分の性格を分かった上で、どうしていくかを考えたら、もっと生きやすくなるのかなと思ったんです」。

もともと人前に出ることも得意ではなかったが、気持ちが楽になったことで、抵抗もなくなってきた。

「今すごく仕事に対して前向きになれているので、この映画が公開され、朝ドラが終わったとき、自分自身がどんな気持ちになっているのか…とても楽しみです。目の前の作品に向き合って、思い切り楽しみたい。その姿は、きっと観てくださる方に伝わると思うんです。『あの人楽しそうだね』とか『あの人すごく幸せそうだな』と思われるような人になりたいなと…。2022年のテーマはハッピーで!」。

『明け方の若者たち』で魅惑の“彼女”を、朝ドラ『ちむどんどん』ではハッピーなヒロインを――。2022年は多彩な黒島の姿が多くの人を魅了しそうだ。(取材・文:磯部正和 写真:松林満美)

映画『明け方の若者たち』は全国公開中。

当記事はクランクイン!の提供記事です。

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