「若者の5人に1人は朝の歯磨きをしない」コロナ禍で進行する歯周病の恐怖

日刊SPA!

◆コロナで歯磨きをしない若者が急増!?

昨年4月のコロナ以降、日常の様々なシーンが変化している。特に大きな変化は仕事のリモート化によって、外出の機会が減ったことである。そのなかでも、まだ注目されていないコロナ禍における弊害が、歯磨き頻度が減ったことによる歯周病についてだ。

日本歯周病学会と日本臨床歯周病学会は11月8日の「いい歯の日」に合わせ、「マスク習慣と歯ならびに口腔ケアにおける意識および行動調査」を20代~70代の男女7766名を対象に実施したところ、「20~30代の若者の5人に1人が朝に歯磨きをしない」という結果が出たのである。これは在宅ワークが増えたこと、そして外では常にマスクをつけることで、見た目や口臭を周囲に気にされにくくなったことが要因と思われる。

たかが歯磨きと思うなかれ。歯磨きをしないことで歯周病になって引き起こされる弊害は、数年先に爆発する時限爆弾のようなもの。日本歯周病学会と日本臨床歯周病学会の2学会を代表し、日本歯周病学会の理事長であり、日本大学松戸歯学部の学部長である小方賴昌氏に、歯を磨かないことによる危険性についての話を伺った。

◆朝も大切だが夜の歯磨きはもっと大切

若者の約5人に1人が朝に歯磨きをしないとの結果が出たことも衝撃的であるが、そもそも歯磨きは朝と夜の歯磨きはどちらの方が重要なのだろうか。

「夜ですね。寝ている間は唾液がほとんど出ません。そうなると口の中で菌がどんどん増えていくんです。だから寝る前に菌を少しでも減らしてから寝た方がいいのです。もちろん、朝の歯磨きも重要ですが、夜のほうがより重要になります」

歯を磨かないと歯周病などの病気になりやすいとよく言われるのだが、そもそも歯周病とはどのような病気で、何が原因で患ってしまうのだろうか。

「歯と歯肉の間の『歯肉溝、歯肉ポケット、歯周ポケット』と呼ばれるところで常在細菌が増えて細菌塊(プラーク)になると、プラークに対する生体の免疫応答として、炎症がまず歯肉に、引き続き顎の骨(歯槽骨)や歯の根と歯槽骨を繋ぐ歯根膜にも広がります。

これが歯周病(歯肉炎(炎症が歯肉に限局)と歯周炎(炎症が歯周組織に波及した場合)ですね。ただ個人差があって、その人その人の免疫機能が違うので、必ずしもポケット内で菌が増えると歯周病になるとも限りません。他にも基礎疾患があったり糖尿病を患っていたり、タバコやストレスなんかも歯周病が進行してしまう原因になるので、個人差はかなりあります」

とにもかくにも歯周病の予防はプラークを減らすことが大切だと小方氏は言う。プラークを減らすためには、歯磨きが必要ということなのだ。

◆歯周病の影響は口臭や歯のグラつきだけじゃない

では、歯周病になると炎症以外にもどのような症状があるのだろうか。思いつくのは口臭や歯のグラつきなのだが、小方氏は全身疾患にも関係していくと話す。

「歯周病の原因菌は、歯と歯肉の溝(ポケット)の奥で増えていく空気が嫌いな菌なんですよ。実験室では真空ポンプで引いて培養するんですけど、正直ものすごく臭いですね。今まで嗅いだことないレベルの匂いがします。これが口臭の原因です。それだけでなく、歯周病は糖尿病、心血管疾患、低体重児出生、アルツハイマー病、がんなど、様々な全身疾患のリスクを高めると言われています。

歯周病では、少し難しい言葉ですけど『炎症性サイトカイン』といって、歯肉の中で炎症を引き起こす物質が持続的にでてくるんです。それが血液にも入ってきて、全身を巡って悪さをしたりすることもあります」

たかが歯磨きと思っていると、痛い目どころか臭い目にもあう歯周病。一旦なってしまうとかなり厄介な“付き合い”をすることになるという。

「歯周病治療は歯周基本治療といって、歯間ブラシや歯ブラシの指導、歯石を取ったり……というところから始めます。歯ブラシの毛先を歯肉に当ててマッサージをすることで、歯肉の新陳代謝が活発になります。ただ歯周病の治療成果は患者さん自身の自然治癒力にかかっているので、来院間隔をあけて診ることが多く、毎日歯科医に通って1か月で治癒……なんてことはありません。1か月ほどスパンを開けて診察、治療を続けていくので、悪い人だと3年以上治療期間がかかることもあります」

◆インプラントと歯周病の怖い関係

また、歯周炎で歯がダメになってもインプラントをすれば……と思っている方がいたら、少々考えを改めてもらいたい。インプラントした後の炎症(歯周炎に似た状態)は厄介極まりないものだという。

「最近問題になっているのはインプラント周囲炎という、インプラントの周りのプラークによる炎症です。インプラントはやる前の歯周病ケアが実はものすごく大事なんです。インプラントの隣の歯が歯周炎だったら、そこからまた菌が移ってしまい、ものすごくキツいインプラント周囲炎を引き起こしかねません。最悪、せっかく施術したインプラントを取り除かなければならないケースもあるのです」

歯が悪くなっても「インプラントすれば大丈夫!」といった考え方は、根本的に間違っているわけなのだ。まずは歯磨きで歯周病対策をすることが重要なのだとか。

若いうちから歯のケア、歯周病対策をしておかないと、40代、50代になったときに歯周病で苦しみ、命も削るという悲惨な結末が待っている。たった数分の歯磨きをするだけで、高額な治療を回避することもできるのだ。

コロナ禍で病院から足が遠ざかった方も多いだろう。だが小方氏は「なるべく年に1回以上」は検診に行くことをオススメしたい」という。なくなってからでは取り戻せない歯は、人間にとって欠かすことのできないパートナーである。ならば労りを忘れずに、毎日歯磨きをすることが大切なのである。

取材・文/セールス森田

【セールス森田】

平成生まれのパチンコライター。CS放送のパチンコ番組などに出演する際は、信頼度のパーセンテージを他の事柄に例えるネタを披露している。現在はweb媒体を中心に活動中

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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