『DELTA 2021』大阪、京都、東京の16ギャラリーが大阪港に集結、「ギャラリーとコレクター、アートファンを繋ぐ新しい場」を体現

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『DELTA 2021』2021.11.26(FRI)~28(SUN)シーサイドスタジオCASO


11月26日(金)から28日(日)、大阪港にあるシーサイドスタジオCASOにてアートフェア『DELTA 2021』が行われた。『DELTA』は、2020年に大阪の若手アートディレクターでギャラリストでもある2人、岡田慎平(TEZUKAYAMA GALLERY)と高橋亮(DMOARTS)が立ち上げた新しいアートフェア。既存のアートフェアとは異なる視点を持ち、ギャラリーとコレクター、アートファンを繋ぐ新しい「場」の創造を目的に発足された。

2020年8月、大阪南堀江のTEZUKAYAMA GALLERYで行われた初回の『DELTA Experiment』では、大阪・京都・東京から7ギャラリーが出展。今年は7月にTEZUKAYAMA GALLERY、9月~10月に東京・天王洲のWHAT CAFEにて、初回参加ギャラリーによる展覧会を開催。そして11月、会場・出展ギャラリー数ともに規模を拡大、東阪京の全16ギャラリーが集結して作品を展示販売した。今回は、一般公開に先駆けて11月25日(木)に行われたプレビューの模様をレポートしよう。

シースタジオCASO
シースタジオCASO

シーサイドスタジオCASOは、大阪メトロ中央線の大阪港駅から徒歩約7分の場所にあり、近くには赤レンガ倉庫が立ち並ぶ。こんな場所が大阪にもあったなんて知らなかった。



スタートは16時。ちょうど太陽が沈みかける時間帯で、雲の間から美しい光がドラマティックに差し込んでいた。オープン時には入場待ちの列ができており、『DELTA』に対する注目度の高さを感じた。

「天高で、壁面高」。先日公開した『DELTA』の事前インタビューで、岡田はCASOの内装をそう話していた。CASOは2000年9月、現代美術の展示を中心とした「海岸通ギャラリー・CASO」としてオープンし、現在はコマーシャルフォトの撮影スタジオを中心とした、多目的スペースとして生まれ変わっている。つまり現代美術の展示にピッタリなのだ。ホワイトキューブで開放感があり、大型作品もダイナミックに展示することができる。今回は、全館を使用しての大規模フェアとなった。

天井が高く、開放感がある
天井が高く、開放感がある

会場に足を踏み入れると同時に、作品から発せられるパワーと色彩に思わず圧倒された。

haku kyotoからは小見山峻、Funny Dress-up Lab、松井照太が出展
haku kyotoからは小見山峻、Funny Dress-up Lab、松井照太が出展

公募で出展者を募る既存のアートフェアと『DELTA』の大きな違いは、出展ギャラリーと作家を発起人の岡田と高橋の2人がセレクトしていること。ギャラリーはカルチャーの発信地と言える東京・大阪・京都の3都市から選ばれている。ギャラリーにはそれぞれひとつの壁面が割り当てられていた(一面といってもかなり広い)。

FL田SHとLEESAYAの合同ブース
FL田SHとLEESAYAの合同ブース

岡田は今回のラインナップについて、「昨年は次世代のギャラリーや若手ディレクターを中心にお声掛けし、出展していただきましたが、今年は小山登美夫ギャラリーやMAKI Galleryなど、国内の第一線で業界を牽引するギャラリーにも出展を打診しました。オーナーでは無く、そこで働くディレクターが今回の展示をディレクションしている点は見どころです。また、haku kyotoやVOILLDなど、アートフェア自体に出展するのが初めてというギャラリーが多いのも特徴です。それぞれのギャラリーに色があり、どれも引けを取らない。事前にプランを組んで挑んでいることがわかりました」と語る。

●ホログラムディスプレイが目を引く、EUKARYOTE(東京)●


EUKARYOTEのブース
EUKARYOTEのブース

東京のEUKARYOTE(ユーカリオ)のブースでは、セメント彫刻の制作を担当した美術家の磯村暖と、映像作家の海野林太郎との合作「硬化剤の夢 浮動するサイネージ」のシリーズ作品が目を引く。人物の立体像の一部に接合された機械から、円形のホログラム映像がプロペラのように回りながら映し出されている。台湾で開催中の『アジア・アート・ビエンナーレ2021』にも出展されているシリーズだ。もともと10年来の友人の2人。ずっとイメージしていたものを具現化したそう。

EUKARYOTEからは磯村暖と海野林太郎が出展
EUKARYOTEからは磯村暖と海野林太郎が出展

映像はホログラムのため、光が透けて先にある彫刻が見える。光と身体が同時に存在する中で、身体の一部が別の何かに変化したり、身体が拡張したりしているように見える体験を鑑賞者に委ねる。磯村は「意識的に関連性を感じるものも重要だが、理解の範疇を超えて関連しあう、コントロール不可能なものや偶然性を大事に作っています」と語っていた。

●生と死を感じさせる、FINCH ARTS(京都)●


FINCH ARTSのブース
FINCH ARTSのブース

京都のFINCH ARTSは、たかくらかずき、谷本真理、水谷昌人の作品を展示。モニターに映し出されたカラフルでポップな映像がひときわ異彩を放っていた。たかくらかずきは、死の世界や仏教的なモチーフの作品を制作している。

水谷昌人の作品の表側
水谷昌人の作品の表側

「アプデ輪廻」のシリーズは、映像とオブジェで仏壇を表現。レゴ®ブロックで作られたオブジェは仏花やお墓の形をしており、中におさめられたUSBメモリにはお墓参りの映像データが入っている。これはお墓の中に魂が入っている、ハードとソフトの関係性の近さを表現したもの。床に置かれた三途の川もデジタルでポップに作成している。

水谷昌人の作品の裏側を見せてくれた
水谷昌人の作品の裏側を見せてくれた

また水谷昌人の作品は、一見絵の具が異常に堆積した絵画作品のように見えるが、作品を裏返すと、美術史上の西洋絵画をモチーフが現れる。注射器で後ろから絵の具を絞り出すことで、死んだ絵画の肉体を蘇らせるという特殊な表現。

FINCH ARTSからはたかくらかずき、谷本真理、水谷昌人が出展
FINCH ARTSからはたかくらかずき、谷本真理、水谷昌人が出展

谷本真理も身体が動物や植物とまざりあうような絵画を描いていて、図らずも生と死を感じさせる展示になっているように思えた。ギャラリストの櫻岡聡は「今回はみんな『面白いものを見せるぞ』みたいな意識で参加しているので、アートフェアとしてもエキシビションとしても面白く、来た人を満足させたいという思いが共通してあります。若いギャラリー同士のネットワークができて、みんなで盛り上げていければ一番いいですね」と話していた。

●日常の風景を俯瞰し投げかける、MAKI Gallery(東京)●


MAKI Galleryのブース
MAKI Galleryのブース

東京・表参道と天王洲にスペースを構えるMAKI Galleryは田村琢郎の作品を展示。普段、海外や国内最大級のアートフェアをメインに出展することが多いギャラリーだが、今回初めて『DELTA』に参加した。

遠くから見ても存在感を放つ、カーブミラーが絡まった作品や、おもちゃのような花々とグラフィティがあしらわれた鉢植え、アスファルトの地面をそのまま写し取り、そこにかつてあった風景を想像し重ね合わせた作品。実体験や日常の風景を俯瞰した上で、鑑賞者にメッセージを投げかける。アスファルトを素材に使うことについては「過去にアスファルトをそのまま使用している作家がおらず、先進国はどの国でも当たり前に目にするものだが、当たり前すぎて見ている認識すらない。それが壁にかかっていると違和感があって面白いと考えた」と経緯を説明した。

●ビビッドで発色の良い絵画が来場者を出迎える、DMOARTS(大阪)●


DMOARTSのブース
DMOARTSのブース

高橋亮がギャラリストをつとめる大阪のDMOARTSは、Keeenueと松村咲希の女性作家が出展。Keeenueはストリート感のある絵柄で、壁画、キャンバス、イラストなど幅広い支持体でマルチに活動する作家。NIKEのような有名企業とのコラボレーションなど、ファッションやデザインの分野でも活躍中。具象性があるようでないパーツは鑑賞者によって見え方が変化し、思いもよらぬインスピレーションを与えてくれる。

DMOARTSからはKeeenueと松村咲希が出展
DMOARTSからはKeeenueと松村咲希が出展

松村咲希は京都出身の抽象絵画作家。シルクスクリーン、モデリングペースト、スプレーなど、様々な素材と技術を駆使してレイヤーを重ねることで、キャンバスの最下層の白色が浮き上がり、見る角度や光によって見え方が変化する。今回は「円」をテーマに作品を制作。宇宙のような空間(筆者にはそう見えた)に円があったり、キャンバス自体が円形だったりと、想像力をかきたてられる。両者ともにビビッドで発色の良いカラー、視覚効果を利用した作品で、現代美術の間口を広げてくれるのではと感じた。ギャラリストの高橋は「今の人たちはデジタルネイティブなので、ビビッドな発色が目に焼きつきやすいのかなと思っていて。アートってカウンター要素があるものなので、新しいものや『これ何なん?』がいっぱいあった方が面白い気がしますね」と語った。

●油絵と彫刻の重厚感が際立つ、TEZUKAYAMA GALLERY(大阪)●


TEZUKAYAMA GALLERYのブース
TEZUKAYAMA GALLERYのブース

岡田慎平がギャラリストをつとめるTEZUKAYAMA GALLERYは、井田大介と厚地朋子が出展。

3DプリントやARといったデジタルツールを駆使して彫刻作品を発表してきた井田大介は、ギリシャ彫刻のヘルメス像を参照し、現代の社会システムが抱える歪みやジレンマを神話と重ねながら、鑑賞者に問いかける。伝統的な彫刻のフォーマットを用いて、インターネット登場以降の監視社会の姿を風刺し、現代の情報社会においても本物の情報を見極めることは重要だと訴えている。
TEZUKAYAMA GALLERYからは井田大介と厚地朋子が出展
TEZUKAYAMA GALLERYからは井田大介と厚地朋子が出展

厚地朋子は京都で活動する油絵作家。今回は美術館級の大きな作品を新旧織り交ぜて展示している。基本的には複数の視点や光源が混在し、空間自体を入れ子構造で描いているが、過去作と新作では筆致や構図が徐々にシンプルになっている変化を感じ取れる。映画のワンシーンや、作者の日常の視点で見たものを重厚な油絵でダイナミックに落とし込んでいる。」岡田は「今回はアカデミックな絵画と彫刻という美術の文脈を感じさせる重厚感のあるセレクトを意識した。フェアの中でも良い意味でコントラストを生み出せればと思い、厚地さんと井田さんに出展をお願いしました。作品の背景に思いを巡らせながら、じっくりと鑑賞して欲しい」と話していた。

●オルタナティブスペースやコーヒーショップとのコラボも●


DELTA x graf porch コラボ企画
DELTA x graf porch コラボ企画

大阪中之島のオルタナティブスペース、graf porchとのコラボ企画のブースでは、「DELTA x graf porch」として、grafのプロダクト製品と親和性のあるアート作品を同じ空間に展示。

DELTA x graf porch コラボ企画
DELTA x graf porch コラボ企画

机やソファ、本棚と暮らしの中にアート作品があればどんな感じか、とイメージしやすく、気に入った家具も一緒に購入できる仕組みだ。普段アートフェアに馴染みのない人でも、自宅に作品がある状態をイメージできる良い機会になっていた。

一般公開の日程では、かもめ焙煎所のオリジナルブレンドコーヒーが味わえた
一般公開の日程では、かもめ焙煎所のオリジナルブレンドコーヒーが味わえた

また、一般公開の26日(金)から28日(日)には、大阪港のコーヒーショップ・かもめ焙煎所とコラボしたコーヒーが味わえたり、プラモ家具3x6によるワークショップが行われたりと、来場者を楽しませコミュニケーションが生まれる場所作りも行われた。

かもめ焙煎所のブースを手がけた、プラモ家具3x6のアイテム
かもめ焙煎所のブースを手がけた、プラモ家具3x6のアイテム

招待者と関係者に公開されたプレビューだったが、訪れた人はみんな真剣な眼差しで、かつ楽しげに各ブースを回っており、会場は熱気に包まれていた。アカデミックな絵画作品から3Dプリントや映像作品など最新トレンドのアート作品まで、美術史を包括するような作品が一堂に会する、素晴らしいフェアだった。まさに発起人の2人が掲げる「ギャラリーとコレクター、アートファンを繋ぐ新しい場」が創造されていると感じた。開催に先駆けて行ったインタビューでは、彼らの熱い思いが語られている。ぜひこちらの記事も目を通してほしい。来年の開催も楽しみにしていよう。

取材・文・撮影=ERI KUBOTA

当記事はSPICEの提供記事です。

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