中村獅童が20年ぶりに鬼次郎を勤め、陽喜が初お目見得で奴の隈取~獅童親子が歌舞伎座で共演『壽 初春大歌舞伎』会見レポート

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歌舞伎座1月公演『壽 初春大歌舞伎』が、2022年1月2日(日)に開幕する。中村獅童は第一部『一條大蔵譚』と『祝春元禄花見踊(いわうはる げんろくはなみおどり)』に出演。さらに『祝春元禄花見踊』で、息子の小川陽喜(おがわ はるき)が初お目見得する。開幕に向けて11月26日に会見が開かれ、獅童が作品への意気込みや、陽喜への思いを語った。会見の後半の囲み取材には陽喜も参加。自然体の陽喜と、「僕のことも見てほしい」とボヤいては笑いを誘う獅童の会見をレポートする。

「こんにちは。小川陽喜です。3歳です」と立派に挨拶をしていた。
「こんにちは。小川陽喜です。3歳です」と立派に挨拶をしていた。

■『超歌舞伎』から歌舞伎へ


「どうせみんな、陽喜を撮りにきたんでしょう?」

獅童は、はじまるなり拗ねたトーンで笑いを誘いつつ、陽喜の歌舞伎への関心は、獅童が初音ミクと共演する『超歌舞伎』がきっかけとなったことを明かす。

「幕張メッセなど大きな会場での『超歌舞伎』を、観にきてくれました。『超歌舞伎』には、立廻りや隈取など、カッコいい演出がたくさんあります。皆さんが一斉にペンライトを振ってくださるところは見どころのひとつ。陽喜もそれを一緒にやり、その後、映像になったものを、僕が知らないうちに観て好きになったようです。仮面ライダーやウルトラマンを好きなように、僕が隈取をして立廻りする姿に憧れをもってくれた。今では『超歌舞伎』だけでなく、僕以外の方の歌舞伎も観るようになりました」

「ここ(陽喜のいない場面)もちゃんと使ってくれますか?」とカメラに話しかける獅童。
「ここ(陽喜のいない場面)もちゃんと使ってくれますか?」とカメラに話しかける獅童。

「前から歌舞伎をしたいと言っていたので、踊りのお稽古には行かせていました。9月の南座を観て、その気持ちが強くなったようです。『やるとなったら、25日間出るんだよ。万が一お腹が痛くなっても風邪をひいても休めないから、しっかり体調管理しないといけない。毎日お化粧して、毎日元気よく出ないといけないよ』と言ったら、陽喜は『毎日お化粧したい』と答えました」

陽喜くんは、カメラを前にしても落ち着いた様子。
陽喜くんは、カメラを前にしても落ち着いた様子。

初お目見得にあたり、獅童が、かつて使っていた鏡台を陽喜が使うことにしたという。

「僕が8歳の初舞台の時に作った鏡台です。30歳くらいになり、舞台の真ん中に立てるお役がいただけるようになった頃、母親が立派な鏡台を新しく注文してくれました。それまでずっと、子ども用の鏡台を使っていたんです。今回それを引っ張り出し、組み立てました。子どもの頃や母のことを思い出します。こうして今日までやってきたんだなって。親子の感覚が、この時に初めて、少し分かった気がします」

■思い出の演目『一條大蔵譚』


新年の公演の、序幕を飾るのは、義太夫狂言の名作『一條大蔵譚』。獅童は、吉岡鬼次郎を勤める。鬼次郎は、源義朝の忠臣という役どころだ。妻のお京(中村七之助)とともに、大蔵卿(中村勘九郎)のもとにいる常盤御前(中村扇雀)の本心を探る。

「鬼次郎は、2001年の『浅草歌舞伎』の時が初役でした。僕が初めていただいた、25日間興行での大きなお役です」

獅童が、映画『ピンポン』で高く評価される以前のことで、当時は浅草公会堂での歌舞伎公演も、現在ほど浸透していなかった。



「お正月の浅草公会堂を、若手の自分たちに任せていただき、僕らの力で集客をしなくてはいけない。今日は何人のお客様が来てくれるだろうと考えたり、千穐楽には雪が降ってしまい、お客様が来てくれるだろうかと心配をしたり。当時のことは、いまだによく覚えています。一條大蔵卿を勤めたのが、勘九郎くんでした。その後も『コクーン歌舞伎』など大きな山を一つひとつ、一緒に越えてきた仲間との、思い入れのある演目です」
『一條大蔵譚』吉岡鬼次郎_平成13年1月 浅草公会堂 /(C)松竹
『一條大蔵譚』吉岡鬼次郎_平成13年1月 浅草公会堂 /(C)松竹

20年を経て、歌舞伎座の舞台で鬼次郎を勤める。今回も、大蔵卿は勘九郎だ。

「20年の思い、すべてをぶつけたいです。鬼次郎は、実直でまっすぐな人物。初役の時は、(十八世中村)勘三郎さんに教わりました。(実際に石を投げるような)『石投げ』と呼ばれる振りがあり、勘三郎さんは、ぱっとティッシュを丸めて、投げるようおっしゃいました。実際に本気で投げてみなさいと。そして、そうだ、そうだ! その動きを型にはめてごらん! と。懐かしいですね」

■陽喜が隈取で登場! 『祝春元禄花見踊』


「僕は初舞台で、(十七世中村)勘三郎さんに手を​ひかれて出させていただきました。勘三郎さんはいなくなってしまわれましたが、陽喜の初お目見得に、中村屋の勘九郎・七之助兄弟が出てくれます。本当に心強いですし嬉しいです」

勘九郎・七之助が出演した『赤坂大歌舞伎』を、陽喜と観に行ったという。「歌舞伎だと、2時間でも静かに観ていられるんですよね」と感心したように笑っていた。1月の歌舞伎座で、陽喜が出演するのは『祝春元禄花見踊』。元禄の世を舞台にした華やかな舞踊の演目だ。獅童、陽喜の他、勘九郎、七之助たちが出演する。

「お正月らしく、華やかな踊りになるでしょうね。『超歌舞伎』を一緒にやっている澤村國矢くんも出演します。僕は陽喜に、おいしいところを持っていかれないようにしないといけません(笑)」

報道陣を前に見得をしてみせる陽喜くん。「僕は教えていないんです」と獅童。
報道陣を前に見得をしてみせる陽喜くん。「僕は教えていないんです」と獅童。

陽喜は、奴(やっこ)の役となる。

「陽喜は見得と立廻りと隈取が大好きで、そのような美味しい要素を、藤間のご宗家(藤間勘十郎)が作品の中に、ふんだんに入れてくださいました。むきみの隈取で見得も切る。見得なんて、子役の頃は憧れの中の憧れ。なかなかやれるものではありませんでしたから、ちょっと嫉妬します」

化粧の下地となる鬢付け油は、子どもだと嫌がることも多いというが、「陽喜は、化粧をしてヒーローに変身する感じが嬉しいみたいです」とも語る。



初お目見得への不安を問われると、獅童は心中を明かした。

「陽喜への不安はありません。後援会の皆さんや応援してくださる方々の“獅童愛”が、“陽喜愛”に変わっていくことが、いま一番の不安です(一同笑)。妻の意識も子供の方にいってしまうでしょう? それにヘソを曲げる僕も大人げないとは思いますが、もっと僕を見てもらいたいです。僕もかわいいんですよ? (笑)」

「僕、うつってますか?」と中村獅童。
「僕、うつってますか?」と中村獅童。

会見中も、陽喜への注目度の高さに敏感に反応し、たびたび一同を笑わせる獅童。フォトセッションでは、陽喜との身長差から「僕、うつってますか? 腰のあたりで切られていませんか?」と報道陣に確認。獅童はしゃがみ、陽喜と顔を並べて撮影に応じていた。

稽古は厳しく、普段は友達のように


「歌舞伎座のチラシに名前が並ぶのを見て、ライバルとは少し違いますが、同じ板の上に立つのだと実感がわきました。皆さんが本当に優しく、また可愛いと言ってくださり、とても嬉しいです。けれども、一人くらい厳しい人間がいないといけないとも思っています。親バカにならないよう、浮かれないように気をつけたいです」

将来は『超歌舞伎』に出たいと陽喜。初音ミク×獅童×陽喜の共演が待ち遠しい。
将来は『超歌舞伎』に出たいと陽喜。初音ミク×獅童×陽喜の共演が待ち遠しい。

「勘三郎さんに教わる機会が多く、芸事に関して、勘三郎さんは、勘九郎くんと七之助くんに対し、とても厳しかったです。それを目の当たりにしていましたので、陽喜に対しても、舞台に関しては心を鬼にして厳しく教えなくてはいけないと思っています。普段は、親子というよりも、友だちみたいになっていて……妻は大変です(笑)」

そして会見中はしばしば、「本当に変な気分」と、こぼしていた獅童。



「僕の場合、父親が(幼い頃にはすでに)歌舞伎役者ではありませんでした。母親との二人三脚でやってきたので、子どもと紋付を着て金屏風に立つのが、とても変な気分です。このようにお集まりいただき、ありがとうございます。皆さんから、『お子さんが継ぐのは、大変ですね』とよく言われますが、僕は、何がなんでも歌舞伎の道に……と押し付けるようなことは、したくありませんでした。もしロックをやりたいと言えば応援し、歌舞伎をしたいと言えば全面的に協力するつもりで。僕自身は、自分から祖母に舞台に出たいと頼み、歌舞伎俳優になりました。歌舞伎公演は約1か月続き、25日間出るのは大人でも大変なこと。それだけに、陽喜の口から歌舞伎をしたいと言ってくれたことが、本当にうれしかったです。もう、胸いっぱいです」

和やかに会見が終わり、報道陣に挨拶をする獅童と一足先に舞台をあとにする陽喜。
和やかに会見が終わり、報道陣に挨拶をする獅童と一足先に舞台をあとにする陽喜。

歌舞伎座の『壽 初春大歌舞伎』は、2022年1月2日(日)から27日(木)までの公演。1日三部制で、獅童と陽喜の出演は、午前11時開演の第一部となる。

当記事はSPICEの提供記事です。

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