ビジネス書に訊け! 第177回 コロナ禍で孤独に苛まれている人へ


悩み多きビジネスパーソン。それぞれの悩みに効くビジネス書を、「書評執筆本数日本一」に認定された、作家・書評家の印南敦史さんに選書していただきます。今回は、コロナ禍で孤独に悩む人へのビジネス書です。

■今回のお悩み
「コロナが長引いて外出もままならないので孤独に苛まれている」(61歳男性IT関連技術職(ソフトウェア・ネットワーク他))

日々のお金の問題から社会そのもののあり方まで、コロナ禍はさまざまな課題を投げかけることになりました。

そんないま、乗り越えなければならないことは決して少なくありませんが、とくに切実なのが“人との距離感”ではないでしょうか?

ご相談にあるように、リモートワーク主体のライフスタイルを余儀なくされた結果、人との交流が著しく制限されることになってしまったからです。

僕のような自由業者はともかく、何十年も組織に属してきた方の場合は深刻だろうなと思います。たとえばオフィスで仕事をしていたころであれば、困ったことがあっても隣の同僚に相談できたはず。しかしコロナ禍の影響で、そんなちょっとしたことでさえ難しくなってしまったのですから。

それどころか"外出もままならない"のであれば、上司や同僚、部下のみならず、他人も含めた人との交流そのものがなくなってしまうことになります。人との接点がなくなるのは、たしかにつらいものですよね。

つまり、孤独に苛まれてしまっても無理はないのです。でも、なんとかしなければと焦るほど、悪循環に陥ってしまうものでもあります。

そこで、ビジネス書や自己啓発書の助けを借りることを考えてみましょう。人と会う機会が減ったということは、本と向き合う機会が増えたということでもあるのですから。
○「考えない」ために

不安や寂しさに効くくすり。そんなものがあるかどうかは分かりません。たとえそんなくすりがあったとしても、その処方箋は人によって違ってくるでしょう。あれこれと、いろんな心のくすりを試しながら生きている、人生とはそういうことだと思います。(「はじめに」より)

こう語るのは、曹洞宗徳雄山建功寺住職である『寂しさや不安を癒す 人生のくすり箱』(枡野俊明 著、KADOKAWA)の著者。本書では僧侶としての立場に基づき、修行から学んだことや、多くの人の悩みを聞いてきた経験から処方した"くすり"を提示しているのです。

たとえば著者はここで、「考える」ということについて持論を述べています。それは人間としてとても大切なことであるけれども、避けなければいけないことがふたつあるのだと。

まずひとつは、「余計なことを考える」こと。
もうひとつは、「考えすぎる」こと。

「余計なこと」とは、考えても仕方がないこと。もちろん、考えることで解決するのであればとことん考えるべきでしょう。しかし考えても結果が変わらないのであれば、また自分の力が及ばないことであれば、それは"無駄な考え"ということになるわけです。

そして「考えすぎる」ことについての問題は、考えれば考えるほど、悪いほうへと気持ちが向いてしまう点。だからこそ、そういうときには楽天的になり、自分から考えることをやめてしまうことも大切だというのです。

「非思量(ひしりょう)」という禅語があります。これは読んで字のごとく、思索をしないことを意味しています。そしてこれは座禅の基本的な心構えを表わしている言葉なのです。座禅を組んでいる時には、何も考えないことが重要です。(56ページより)

「無の境地」になれということなのでしょうが、それは簡単なことではなさそうでもあります。しかし鍛錬を繰り返すうちに、非思量の境地に達することができるのだとか。そしてそれは、寂しさを打ち消す際にも重要な考え方であるようです。

不安や寂しさが入り込む隙をなくしていく。そのためには忙しく身体を動かすことです。そして、ひとつの考えを心に留めておかないことです。(57ページより)

著者によればそれは、少し視点を変えてみるだけで誰にでもできること。だとすれば、寂しさを心の隅に追いやるために、試してみる価値はありそうです。
○寂しさは思い込んでいるだけかも

一方、『誰にも言えない「さみしさ」がすっきり消える本』(石原加受子 著、SBクリエイティブ)の著者は、次のように主張しています。

個と個が独立して存在しているという意味においては、私たちはもともと、孤独な存在だと言えるでしょう。誰も、自分に取って代わることはできません。
孤独というのは人間の存在とセットになっていて、さみしさから逃れることはできない、というふうに感じてしまいます。
そんな孤独感やさみしさに挑み、観念的な思考や哲学的な思考だけで答えを見出そうとすればするほど、迷路にはまり込んで、解明できるどころか、いっそう孤独に陥っていくだけではないでしょうか。(41ページより)

そんな寂しさも、「いま」に焦点を当てれば、必ずしもそうではない、のではなかろうか。著者はそう考えるのです。

私たちは普段から焦りや不安を感じているけれど、だからといって永遠に焦っていたり、不安を抱いているわけではないはず。怒りや悲しみについても同じです。

だからこそ、自分が「焦っている、不安になっている」ことに気づいたときには、その「いま」の瞬間に「なにを見て、なにを思い、なにをして」そんな気分になったのかを振り返ってみることが大切。

そうすることで、焦りや不安の出どころを探り当てることができるわけです。

それができたら、あとは、その焦りや不安の原因や理由に、具体的に対処し、解決すればいい。すると、やがて「いつも焦る、いつも不安」という恒常的な状態が次第に緩和され、焦りや不安は消えていくもの。それは、臨床的にもわかっているのだそうです。

もちろんそれは、寂しさについても同じ。

さみしいという感情がどうして生まれるのか。
どうして、「いつも、さみしい」というふうに、あたかもその気分が永遠につづくかのように、思い込んでしまうのか。どうすれば、そのさみしさを解消することができるのか。(42ページより)

孤独というのは人間の本来の姿なのだから、取り除くことはできないという考えもあるでしょう。でも、不安や焦りのように、"思い込んでいる"だけなのかもしれない。もしそうであるなら、寂しさも、その時々に対処することによって乗り越えることができるのかもしれない。

やや観念的ではありますが、著者はそのように結論づけているのです。いずれにしても、先に触れた「『いま』の瞬間に『なにを見て、なにを思い、なにをして』そんな気分になったのかを振り返ってみる」、この部分が大切なのでしょう。
○心をプログラムしなおしてみる

『うまくいっている人の考え方 完全版』(ジェリー・ミンチントン 著、ディスカヴァー携書)の中心にあるテーマは、「自尊心をどうか貯めるか」ということだそう。

自尊心とは、自分を好きになり、他人と同じように自分も素晴らしい人生を想像するに値する人間だと信じる気持ちのこと。それは、寂しさを克服するためにも大きな意味を持つのではないでしょうか?

ところで、「外出もままならないので孤独に苛まれている」のだとしたら、それは"うまくいっていない"と思える状態かもしれません。生きていれば、そう感じる時期は誰にでもあるものです。

でも、そんなときこそ心の持ち方を調べる必要があると著者は主張しています。なぜなら思考の質は、人生の質に影響を及ぼすものだから。

そして、そのような考え方に基づき、ここでは"心について知っておくべき重要な事実"が紹介されています。

●あなたの心は、特定の方法で考えるようプログラムされている。(中略)その結果、あなたは教え込まれた考え方を吸収したのだ。
●あなたの心は、従来どおりに考える傾向がある。同じように考え続けると、脳の中に一定の思考回路ができ、今後もそれに沿って考えるようになる。その結果、ネガティブな人はずっとネガティブなままで、さらに不平を抱くことになる。いっぽう、ポジティブな人は、状況は悪化しても人生のいい面を見る。
●あなたの心は、プログラムし直すことができる。(中略)心をポジティブにプログラムし直せば、人生の多くの面を改善できる。(170~171ページより)

これは、今回のご相談にもあてはまるはず。

孤独感に押しつぶされそうになっているいまこそ、心をプログラムしなおしてみるべきだということ。

そうやって気持ちをポジティブな方向に向けていけば、(時間はかかるかもしれませんが)よりよい状態にたどりつける可能性があるという考え方なのです。

印南敦史 作家、書評家。1962年東京生まれ。音楽ライター、音楽雑誌編集長を経て独立。現在は書評家として月間50本以上の書評を執筆。ベストセラー『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社、のちPHP研究所より文庫化)を筆頭に、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)、『読書に学んだライフハック――「仕事」「生活」「心」人生の質を高める25の習慣』(サンガ)、『それはきっと必要ない: 年間500本書評を書く人の「捨てる」技術』(誠文堂新光社)、『音楽の記憶 僕をつくったポップ・ミュージックの話』(自由国民社)ほか著書多数。最新刊は『読書する家族のつくりかた 親子で本好きになる25のゲームメソッド』(星海社新書)。 この著者の記事一覧はこちら

当記事はマイナビニュースの提供記事です。

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